杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・靖国神社靖国参拝~追悼、慰霊が批判されているのではない

2013-12-27 21:01:55 | 憲法問題
安倍首相の靖国参拝が問題にされています。
海外からも批判を受けているようです。
これまでも何度となく繰り返されてきている問題ですが、
何がポイントなのか。考えてみます。

安倍首相は、今回の参拝について
「日本のために尊い命を犠牲にされたご英霊に対して、尊崇の念を表し、不戦の誓いを新たにした」
とコメントしているようです。
また、参拝支持の市民のかたの声を聞くと、
「戦死者や戦友を追悼してもらえるのはありがたいこと」
といわれています。


問題はそこではない。すり替えてはいけないのです。
追悼、慰霊が批判されているのではないということを
私たち日本人がよく知らなければならないと思います。

世界からなぜ非難されるのかが分からなければ
「外国の不当な圧力に屈しない」
という開き直りさえ支持されてしまいます。



先輩の内田雅敏さんがこんな文章を書かれています。
その問題性がとてもよく分かります。
その中から、抜粋して、その核心を確認したいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

國の虚構をいつまで放置するのか
――追悼・慰霊を隠れ蓑にした國神社の「聖戦」思想――
1 追悼、慰霊が批判されているのではない
 

韓国、中国が何を批判しているかは正確に認識しておかなければな
らない。韓国、中国らは死者への追悼、慰霊を批判している
のであろうか。このことは、同じ八月一五日に日本政府主催
で行われる「全国戦没者追悼式」と比較してみれば、容易に
分かる。韓国、中国らが、この「全国戦没者追悼式」を批判
したことはない。それは、まさに「どこの国」でもやってい
ることだからである。

韓国、中国らが批判しているのは、死者に対する追悼、慰霊でなく
國神社に参拝することであることを理解しなくてはならない。


2 國神社の歴史認識
韓国・中国が、國神社参拝を批判するのは、
同神社が東條英機元首相ら、所謂A級戦犯を合祀してい
ることに端的に見られるように、日本の近・現代における戦
争を全て自衛のための戦争だとし、植民地支配も肯定し、先
のアジア・太平洋戦争もアジア解放のための戦争だという歴
史観を明確、露骨に広言している施設だからである。

★ 靖国神社社務所発行『私達の靖国神社』は
日本の近. 現代史について以下のように述べる。

「日本の独立と日本を取り巻くアジアの平和を守っていくた
めには、悲しいことですが外国との戦いも何度か起ったので
す。
明治時代には『日清戦争』『日露戦争』、大正時代には
『第一時世界大戦』、昭和になっては『満州事変』『支那事変』
そして『大東亜戦争』(第二次世界大戦)』が起りました。……

戦争は本当に悲しい出来事ですが、日本の独立をしっかりと
守り、平和な国として、まわりのアジアの国々と共に栄えて
いくためには、戦わなければならなかったのです。こいう事
変や戦争に尊い命をささげられた、たくさんの方々が靖国神
社の神さまとして祀られています。……又、大東亜戦争が終
わった時、戦争の責任を一身に背負って自ら命をたった方々
もいます。さらに戦後、日本と戦った連合軍(アメリカ、イギ
リス、オランダ、中国など)の、形ばかりの裁判によって一方的
に戦争犯罪人という、ぬれぎぬを着せられ、無残にも生命を
たたれた千六十八人の方々、靖国神社ではこれらの方々を
『昭和受難者』とお呼びしていますが、すべて神様としてお
祀りされています。」 
 
★ もう一つ例を挙げよう。

 靖国神社の歴史認識を具体的に表現しているのが同神社の
遊就館の展示である。展示室一五、(大東亜戦争)の壁に、「第
二次世界大戦後の各国独立」と題したアジア、アフリカの大
きな地図が掲げられ、以下のような説明がなされている。

「日露戦争の勝利は、世界、特にアジアの人々に独立の夢を
与え、多くの先覚者が独立、近代化の模範として日本を訪れ
た。しかし、第一次世界大戦が終わっても、アジア民族に独
立の道は開けなかった。
アジアの独立が現実になったのは
大東亜戦争緒戦の日本軍による植民地権力打倒の後であった。

日本軍の占領下で、一度燃え上がった炎は、日本が敗れても
消えることはなく、独立戦争などを経て民族国家が次々と誕
生した。」

「大東亜戦争」は侵略戦争でなく、植民地解放のための戦い、聖戦だったというのだ。


 このような「聖戦思想」に立つ靖國神社には、A級戦犯こ
そ國神社にはふさわしい。巷間Å級戦犯の分祀がなされれ
ば國問題は解決するかのような言説も見られるが、

★事の本質はA級戦犯の合祀にあるのでなく、
A級戦犯の合祀にふさわしい國神社の歴史認識にあることを理解しなくてはならない。



(★はブログ筆者)

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7 コメント

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そうですよ (宇宙戦士バルディオス)
2013-12-28 20:23:42
>先のアジア・太平洋戦争もアジア解放のための戦争だという歴史観を明確、露骨に広言している施設だからである。

 これのどこが悪いのですか?
返信する
宇宙戦士バルディオスさんへ ()
2013-12-29 00:19:49
そのように公言していることが悪いとはいっていません。
返信する
政教分離の原則の徹底を (ルビイ)
2013-12-30 23:14:43
なぜ首相の靖国神社参拝が各国から批判されているか、靖国神社とはどういった神社かが的確に記載されていますが、さらに首相の靖国神社参拝は民主主義の基本原則である政教分離の原則に違反しています。
政教分離の原則を徹底しないと戦前の国家神道の過ちを再度繰り返すことになります。
我が国は~教を国教とするといった国がありますが、そういった国では信教の自由が侵害されています。
そういったことにならないためにも、民主主義の基本である「政教分離の原則」の徹底が求めれれます。
返信する
Unknown (CD)
2013-12-31 10:12:55
ずいぶん前に違憲判断されましたからね。
その後も、効力が働いているとまでは言いませんが、他の裁判でも参照の対象にはなっています。
ルビィさんに同意します。
返信する
初耳です (宇宙戦士バルディオス)
2014-01-02 21:40:19
 最高裁が、総理の靖国参拝を違憲と判断したとは初耳です。一体、何時の判決ですか?
返信する
あけましておめでとうございます (鉄甲機)
2014-01-03 02:22:34
今年もよろしくお願いいたします。m(_ _)m

>★事の本質はA級戦犯の合祀にあるのでなく、
>A級戦犯の合祀にふさわしい國神社の歴史認識にあることを理解しなくてはならない。

>(★はブログ筆者)

内田センセイやひとみ先生がそう思われるのは勝手ですが、私の認識は違いますね。

事の本質はA級戦犯の合祀や國神社の歴史認識にあるのではなく、この現代で一つの宗教・教えを殺人狂の邪教扱いできる無知と傲慢さにあるんだと思いますよ。

>日本の近・現代における戦争を全て自衛のための戦争だとし、植民地支配も肯定し、先のアジア・太平洋戦争もアジア解放のための戦争だという歴史観を明確、露骨に広言している

あー。神社縁起に何を言ってるの。この人。

靖国神社は御霊神社です。
志半ばで非業の死を遂げた方々が怨霊化するのを防ぐために、あなたは偉かった立派だったと褒め称えてお祀りしているんですが、ぶっちゃけて言えばそれだけのこと。

遊就館の展示を見て「大東亜戦争は侵略戦争ではなく聖戦! 日本は再軍備をしてアメリカの支配から脱し、中韓北に正義の鉄槌を下さなければ!!」なんて考える人は、「日本は九条を守って軍備を全廃して丸腰になろう。侵略されたら黙って殺されよう。」などと言い出すヒトよりは遥かに少ないと思いますよ。

>ルビィさま
>我が国は~教を国教とするといった国がありますが、そういった国では信教の自由が侵害されています。

わが国では20世紀後半「九条教」が国教扱いでした罠。確かに信教の自由が侵害されてましたな。
大学の授業で「自衛隊をきちんと法整備して、有事に耐えられる組織にすべき」と言っただけで、二三時間糾弾されたのは良い思い出。

ああいう偏狭な思想で平和を構築しようなんて厚k(自粛
返信する
違憲判断について ()
2014-01-04 21:22:54
最高裁での違憲判断?という話ではないんでしょ。

ちなみに、下級審では違憲判断されているものがあります。

1985年(昭和60年)の中曽根首相の靖国神社参拝は、国費を使用して行われたため、1992年(平成4年)2月28日、福岡高等裁判所は、九州靖国神社公式参拝違憲訴訟で、公式参拝の継続が靖国神社への援助、助長、促進となり違憲であると判示しました。

 また、1992年(平成4年)7月30日には、大阪高等裁判所が、関西靖国公式参拝訴訟で、公式参拝は一般人に与える効果、影響、社会通念から考えると宗教的活動に該当し、違憲の疑いありと判示しています。

 1991年には岩手県議会が天皇や首相の靖国公式参拝を求める決議を上げた費用の返還を求める住民訴訟である岩手靖国訴訟で、「天皇や首相の公式参拝は違憲」という仙台高裁判決も確定しています。

2001年(平成13年)8月15日の小泉首相の靖国神社参拝も、平成 16年に福岡地裁が政教分離違反で違憲であると述べています。

2005年(平成17年)9月30日の東京高裁判決では、①小泉首相の参拝は、首相就任前 の公約の実行で、②小泉氏自身、参拝を私的なものと明言せず、公的立場での参拝を否定もせず、③その他参拝前後の発言などから参拝の動機、目的は政治的な ものと指摘したうえで
「総理大臣の職務としてなされたもの」
「国が靖国神社を特別に支援し、他の宗教団体と異なるとの印象を与え、特定の宗教に対する助長、促進になると認められる」
と断じ、違憲であるとしています。


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