杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・2016.4.26安保法制違憲訴訟 東京地裁に提訴しました

2016-05-03 17:28:27 | 憲法問題
昨年2015年9月19日に「成立」(成立の手続の適法性には疑義あり)したとされる安保法制を違憲であるとして
東京地裁に、4月26日に提訴しました。(裁判についての簡単な説明を、末尾に付けました)


差し止め訴訟は52名の原告 621人の代理人弁護士、国家賠償訴訟は457名の原告 621名の代理人弁護士です。

同日福島地裁いわき支部にもいわきの原告・弁護団が提訴をしました。
今後、5月、6月にいくつかの提訴が行われる予定です。
まだ、しばらく裁判の第1回目の予定も入りませんので
ゆっくり、内容はご紹介していきたいと思います。

裁判は、日本中から一度に原告が集まって東京の裁判所に大原告団で一回裁判を起こす、というやり方ではありません。
各地の裁判所に、各地の原告が各地の弁護士を代理人にして裁判を起こす。
全国で多数裁判を起こすというやりかたをします。

つまり、中央で何か裁判をやっているらしい、というものではなく
みな自分たちが主人公になり、近くの裁判所に出廷して、裁判を傍聴しながら、各地の裁判官に問題を訴えていくという形をとります。

それによって、安保法制は成立して終わったものではなく、
自らの手で、理性の府である裁判所に判断してほしいと、裁判所に問題点を提起し
私たちも、もう一度この立憲主義を無視した立法過程、憲法が踏みにじられた過程を検証するのです。


正月を越して、年度をまたいで国民は忘れると思われていたようですが
私たちは忘れていませんでした。


NHKの憲法に関する調査で、憲法改正反対が増えている、9条改正不要違憲が増えているなど
多くの市民も、しっかりこの一連の動きを見つめ、考えてきたことがわかりました。
第2次安倍政権になってから憲法改正は入らないという意見が年々増加していることもわかりました。

7ヶ月後の参議院選も踏まえて、この訴訟と市民の運動とで
憲法を守る政治を取り戻しましょう。


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★あらためて、安保法制って何ですか?

安保法制は、新法+既存の法律の変更が併せて11の法律にかかわる立法です。
この中に、憲法9条に違反するといわれる集団自衛権行使を認める法律や
「武力と一体になる行動」だから憲法9条に反するとされてきたような後方支援活動(政府は法律上、劣化ウラン弾も、核ミサイルも選べると答弁)
を認めた法律などが入っています。


★どう憲法に違反しているんですか?

集団的自衛権は憲法9条に違反しています。集団的自衛権行使は日本人が攻撃されてもいないのに、
他国を攻撃することができるものです。
これは交戦権を持たないという憲法9条2項に違反しますし、
集団的自衛権の行使が憲法に違反することは歴代内閣の一貫した見解でした。
衆議院憲法審査会で3人の憲法学者が「集団的自衛権の行使が許されるとした点は憲法違反」としたとおりです。


★違憲訴訟ってどんな裁判ですか?

裁判所は、憲法81条の違憲立法審査権を使えるのだから、「安保法制は憲法違反だ」と判断してもらえばいいんじゃない、と思いますよね。
でも、日本の従来の裁判ではこのような法律自体の憲法判断はできず、
具体的な権利の侵害が起こること(「事件性」)が必要とされています。

たとえば、安保法制によって自衛隊の出動命令が出されたが、
その命令に従わない自衛隊員が受けた減給の処分を「その処分は違法だ」と争うような場合がわかりやすい例です。

でも、今回も権利の侵害が起きているということが明らかですので、私たちは二つの形の裁判を起こすことにしました。

安保法制にもとづく自衛隊の出動を許さないとする差し止めを求める訴訟(差し止め訴訟といいます)
安保法制によって平和的生存権、人格権及び憲法改正・決定権が侵害され、
精神的に傷ついたのでその損害を賠償してほしいと請求する国家賠償訴訟(「国賠訴訟」と略します)

の二つの裁判を起こしました。

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1 コメント

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異議あり (宇宙戦士バルディオス)
2016-05-04 20:52:13
>集団的自衛権は憲法9条に違反しています。集団的自衛権行使は日本人が攻撃されてもいないのに、
他国を攻撃することができるものです。
これは交戦権を持たないという憲法9条2項に違反しますし、

 「交戦権」の意義について、正確な理解が欠けているようです。これは、戦闘を行う権利ではなく、戦時に交戦者が得られる国際法上の権利を指します。


> 集団的自衛権の行使が憲法に違反することは歴代内閣の一貫した見解でした。

 内閣の見解は、まず吉田茂政権初期の個別的自衛権も集団的自衛権の区別なく、自衛権そのものを認めないというところから始まって、次に個別的自衛権のみに限って認められるという解釈改憲が行われました。つまり、一貫したものではなく、解釈改憲の結果、集団的自衛権に限り認めないというものに至ったのであって、「護憲派」の主張も、解釈改憲を土台にしたものです。自分は解釈改憲の結果に依拠しながら、安倍政権の「解釈改憲」を攻撃するのでは、筋が通りません。最高裁判例・大審院判例ですら、大法廷で変更が可能なんですから、内閣が職権で憲法解釈を変更したところで、明文の規定に反していない限り、何の問題もありません。


> 衆議院憲法審査会で3人の憲法学者が「集団的自衛権の行使が許されるとした点は憲法違反」としたとおりです。

 たかだか憲法学者の意見に過ぎませんよね。最高裁判所が、判決をもって確定した法理ではありません。再度申し上げますが、たかが「学説」です。 

 国民安保法制懇は、
「従来、日本政府は、条文上は実力の行使を全面的に否定しているかに見える憲法9条について、日本を防衛するための必要最小限度の実力の保持とその行使を禁ずるものではないとの立場をとってきた。」とし、次に、
「日本自体が攻撃の対象となっていないにもかかわらず、他国への攻撃に日本が実力で対処する集団的自衛権の行使が、武力の行使を禁止し、戦力の保持を禁止する憲法9条の存在と両立すると考えることは困難である。」
 と主張しますが、過去の戦争においては、「自国が攻撃の対象となっていないにもかかわらず、他国への攻撃に自国が実力で対処する集団的自衛権の行使が」自国を防衛するための必要最小限度の実力の保持とその行使に該当する明らかな実例がありました。
 つまり、集団的自衛権を行使することが、自国を防衛する必要最小限度の実力の行使に該当する場合があり得るのであって、このような場合は集団的自衛権は合憲だと考えざるを得ないのです。
 反平和安全法制陣営の法学者や弁護士、市民運動家は押しなべて歴史や安全保障に無知ですから、この簡単な理屈が分からないのでしょう。

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