地割れに飲み込まれ、地底深く落ちていくキース。その落ちた先にいたものは。
「私はコンピューター テラ」
コンピューター テラは答えます。ヒトがマザー以上を求めた時に目覚めるためにいると。
S.D体制とミュウの秘密について、コンピューター テラは語り続けます。
それによれば、ミュウの誕生はS.D体制発足の10年前から始まっていたのです。
人類の未来を託すべきは旧人類かミュウか。コンピューター テラを作った化学者たちは二つの選択肢で悩みました。
コンピューター側はほぼミュウという答でしたが、政治家は全員それはノーとの結論だった。
そこで、旧人類の性質に合わせてS.D体制が構築された。
しかし、自然発生的に生まれるミュウの因子を、人類の遺伝子から完全に抹消してしまうのは、神への冒涜に等しい。そこで、ミュウのの因子を残しながらミュウを弾圧し続けるという矛盾したプログラムを、マザーは施されることになったわけです。
そうして旧人類とミュウとの「決着」が付き、マザー以上のコンピューターが必要となったとき、コンピューター テラが目覚める。
地球今新たな胎動を始めようとしている。マグマが活発に動きはじめ、大規模な地殻変動が起きようとしている。しかしコンピューター テラなら、それを制御することも出来る。
さあどうする?コンピューター テラはキースに訊ねます。選択肢は君にある。
キースは思います。ミュウは、彼らは、
誰の助けもなく
生きた……。
キースはコンピューターに手を掛け、起動スイッチをオフにします。完全に機能停止するコンピューター テラ。
ふと虚空を見上げ、キースが呟きます。
「そこにいるんだろう?ジョミー・マーキス・シン。さあ今度こそ俺を殺せ」
見えない手が伸びキースをサッと撫でる。ゆっくりと斃れるキース。
大地殻変動が起こり、ミュウと旧人類との区別なく災厄が襲います。建物はすべて倒壊し、大自然の中に投げ出される人々。朝日が昇る中、1人の女性の下に人々が集まってきます。その手を握ると、不思議と心が安らぐ、恐さがなくなる。
人々はこぞってその女性、フィシスの手をとり、「女神」と崇めました。
ジョミーの死を嘆き、うずくまりながら宇宙空間を漂うトオニィ。そんなトオニィをナスカ・チルドレンが連れて行きます。
遥か宇宙の彼方へ。
人々は大自然の中に投げ出され、もう一度「初め」からやり直す。
今度こそ「失敗」は許されない。
今度こそ。
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壮大な物語でした。
これは遥か未来の物語とされていますが、あるいは人類は遥かなる太古の昔より、「同じ事」を何度も繰り返してきたのかも知れません。
そして、今も。
今度こそ失敗は許されない。
今度こそ。
END