映画を理屈で観る人は、この映画にはハマれないかもしれません。
突然歌いだしたり、夢ともつかぬ幻想的な世界に入り込んだり、これらすべては、言ってみれば登場人物たちの「心象風景」。言葉では伝わり難いことも、歌や音楽、映像ならばダイレクトに心に届く、ということもあるだろう。
映画とは言ってみれば「総合芸術」、こういう表現も有りだと思う。
なんてえのも「理屈」だね(笑)。
要は、「こういう」映画なんだなと受け入れてしまえばいいだけの話。素直に入り込んでしまえば、結構楽しめます。劇中歌はよくできた曲ばかりで感心するし、カラフルでありながらも派手すぎない、絶妙に抑制された色彩感覚といい、現実にありそうでなさそうなセット、ありそうでなさそうな車といい、
この不思議な世界に入り込んでしまえば
結構楽しい。
金魚すくいに人生の極意を見る。物語そのものは小ぶりなもので、さほどに大きな展開があるわけではない。主人公とヒロインがそれぞれに抱える問題点も、他人から見ればさほどに大きなことには思えなかったりするわけですが、本人にとっては大問題だったりするわけです。
そこから「すくわれる」、壁を乗り越えるには、他人からの助けが必要な部分もあるけれども、最終的には自分で気付いて、自分で乗り越えていくしかないんだということが、理屈ではなく、まるで金魚すくいで「すくわれた」金魚のようにポンと心に飛び込んでくる心地よさ。
だからホント、理屈抜きでこの映画世界にハマりこんでしまえば、
楽しい映画です。
百田夏菜子さんのピアノ演奏、完璧でした!
吹き替え一切なし。全編夏菜子さん本人がピアノを弾いており、まるで子供の頃からピアノに慣れ親しんでいるかのような、実に堂に入ったものでした。
実際はこの映画のために猛特訓したのですけれど、とてもそうは思えない見事な演奏でした。
凄いね、この女優根性。
この4月からはテレ朝系のドラマに、なんと弁護士(!)役で出演するとか。女優・百田夏菜子の快進撃
始まったね。
それにしても、笑福亭鶴光師匠、出てたの!?
どこに!?
『すくってごらん』
原作 大谷紀子
脚本 土城温美
撮影 柴崎幸三
照明 谷本幸治
美術 AKI
音楽 鈴木大輔
監督 真壁幸紀
出演
尾上松也
百田夏菜子
柿澤勇人
石田ニコル
矢崎広
大窪人衛
辻本みず希
北山雅康
鴨鈴女
笑福亭鶴光
令和3年 東宝配給
自分の心を好きなようにふわふわさせてあげる。
心が究極に疲れた時、人間の言葉を聞きたくない時期がありました。
アニマルプラネットを見るためスカパーに入ったのがその時期です。
英語のナレーションと動植物の映像、
心の病の薬になるのは優しい映像だな。
自分の心を自分からも解放して遊べせて上げるのって、ほんと、必要ですね。
うん、理屈じゃないですね。
昨日燕が飛んでいました、今年は夏が早く来るのでしょうか。
ちょっと話は違うかもしれないけど、この『すくってごらん』、私の町では上映していなくて、盛岡まで観に行ったんです、新幹線に乗って。
新花巻駅を出たあたり、車窓からすごく奇麗な山々が連なっているのが見えて、感嘆してずっと見ていたら、その山々の向こう側に、さらに標高の高い、真っ白な雪を頂いた山脈が見えてきた。
何かね、言葉とか理屈とかじゃないところで「神」を見たというか、見せていただいたというか、そんな思いに駆られました。言葉では上手く伝えられない感覚。「神」というとなにかイメージが限定されてしまう感じがして、もっと何というか、広くて深いものなんだけど、言葉にすると「神」としか言いようのないもの。
言葉って、時にもどかしい。
言葉ではないところで、心が癒されるというか、救われるというか、そういうことってあるんですよね。そう、
理屈じゃない。
今年は桜が咲くのが早いとか。夏が来るのも早いかも。