大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

弱さを露呈したアメリカ経済。上海市場の急落は、単なるトリガーに過ぎない

2007年03月13日 | ニュースの視点
27日、IMFのラト専務理事が、「円借り取引」の拡大について、市場が動揺し、ドルの急落を招きかねないとして、強い警告を発した。

私は、日本の低金利政策に賛成ではないが、このラト専務理事の発言にも賛成しかねる。

そもそも、低金利のうちに借りるだけ借りておいて、今になって円借り取引の影響を批判するのは筋が違うのではないかと思う。

また、円借り取引とその解消の動きがドルの急落につながるかどうかという点については、私に言わせれば、ドルに限らず、構造的にすべての通貨に急落する恐れがあるという認識をするべきだ。

確かに、ドルについて考えてみると、今回の円借り解消のために、米国から資金が流れ出てしまうことになるので、結果として、米国の国内経済がしっかりしていなければ、ドル急落へと転じる可能性は高い。

また、ニューヨーク株式市場では、ダウ工業株30種平均がこの1週間で合計533ドルの下げを記録した。

この動きを中国・上海市場の急落に起因すると指摘する人がいるが、それは全く見当違いだと思う。

なぜなら、すでに米国経済は実力以上に伸びきっていて、バブル状態にあり、いつ崩壊してもおかしくない状況だったからだ。

・米国の国内投資の割合のうち、75%は外国人による投融資で占められている。

・06年の米国の長期証券への純流入額は、月平均で約700億ドルでしたが、どういうわけか12月時点では150億ドルにまで下がってきていた。

・これは、米経済のバブル崩壊への潜在的な不安の表れだろう。市場にそのような不安心理が渦巻いている矢先に、今回の中国・上海市場の急落が起こったため、たまたま、それがトリガーを引いた形になっただけだと私は思う。

「中国・上海市場が急落→米国市場の急落」という図式で、単に時間的な概念から判断してしまうのは、短絡的だと言わざるを得ない。

特に、市場には常に人間の心理が働いている点を見落としてはならないだろう。

1つ1つの事象を全体の中で位置づけながら、ロジカルに考える習慣をつければ、このような短絡的な判断にはならない。

ぜひ、ビジネス・パーソンには、日頃から習慣化するように意識してもらいたいところだ。

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