大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

先進国へお金が流れ始めたというのは、全くの勘違い

2013年04月26日 | ニュースの視点

新発10年物国債の利回りは15日、一時前営業日よりも0.03%高い0.65%まで上昇した。一方、東京証券取引所が18日発表した売買動向によると、黒田総裁率いる日銀が「量的・質的金融緩和」を発表した翌週の4月第2週に海外勢は日本株を1兆5865億円買い越し、週間で過去最高を更新したことがわかった。

このような事態を受けて、日経新聞は「世界の投資マネーが新興国から先進国へ回帰し始めた」などと報じているが、私は賛同できない。もう少し資金の性格を見抜いてから記事にすべきだと思う。

今、日本に流れてきている資金はサヤ取り業者の短期的なものだ。決して長期滞在型の資金ではない。買い越しのピークから売り越しのピークへの変化など、一瞬で起こってしまうだろう。

今、日本国債の利回りはかなり乱高下しており、危険な状況だと私は見ている。利回りが上がった時に一気に外国のヘッジファンドが仕掛けてくると、今や外国人保有率が10%に達しているから、長期保有していた人も不安心理に煽られて日本国債を売ってしまうだろう。すると利回りはさらに上昇し、暴落へのトリガーを引くことにつながる。

日本の為替と株で昨年の秋から1000億円規模で収益を上げている某ヘッジファンドの担当者と最近会う機会があった。彼らは民主党政権は長く持たないと踏んで、一般的な日本人よりも先に動き始め、円安が進行し、うまく儲けることができたというところでしょう。安倍総理の政策を信用して預けようという、長期滞在型の資金ではない。

米国にお金が戻っているのは、本当だと思う。シェールガス革命の影響を考えれば、頷けるところだ。しかし日本の場合は違う。そもそも全世界に4,000兆円もあるホームレスマネーのうち、7兆円が日本に流れたからと言って、先進国へお金が流れ始めたなどと言うのはおかしな話だ。しっかりとそのお金がどのような性格を持っているのかを見抜く目を持って欲しいと思う。

金相場は12日、米大手金融機関が大量の売りを出したという情報が市場に流れたのがきっかけに週明けの15日も大幅な下落が続き、下げ幅は2日間で200ドルを超えた。

2000年からずっと上昇傾向にあった金の価格が、1,800ドルに迫る勢いから一転、1,500ドルを下回る日も出てくるという、急激な下落傾向を示している。CNNの番組では金のトレーディングに25年間携わっている人が、「あんな動きを自分は見たことがない」と、先日のわずか2日間で200ドル以上の下落をした相場に驚きを隠せない様子だった。

金相場は必ずしも日本の影響ではなく、キプロスの影響も大きいと言われているが、金、日本円、日本国債の相場が少し荒れ始めているのは確かだ。サヤ取り業者は何かしらの信念を持っているわけではない。すなわち、安倍総理と黒田日銀総裁が正しいと信じているわけではないだろう。今は乗っかったほうが儲けやすいと思っているだけだ。タイミングが来れば、あっさりと離れていくことは明白だ。おそらく黒田総裁がきちんとした出口戦略を持っていないと踏んで、自分たち自身で明確な出口戦略まで考えていると思う。

日本円、日本国債、金相場といったものの動きを見るとき、日本の報道機関などを見ても視野が短期的になりすぎる傾向がある。もっと広い視野で見て、なぜそれが起こっているのか?を自分で考えられるようになってほしいと思う。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。