大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

日産はゴーン氏と袂を分かつか逆買収せよ/ヤクルトはTOBの危険性が大

2013年05月03日 | ニュースの視点

日産・ルノー連合のカルロス・ゴーンCEOは、先月13日、「夏までにルノーの工場で日産車を生産する計画を発表できるだろう」との見通しを示した。現在、両社の業績格差は広がっているが、フランス政府も日産がルノーを手助けするのは当然とコメントするなど圧力を強めており、負担を強いられる日産社内からはルノーへの出資比率を引き下げる議論も出始めたということだ。

 これは非常におかしな話だと思う。ルノーの純利益算定の構造を見ると、2012年の利益の大半は日産が生み出したものだ。今では「ルノー=日産」と言っても過言ではない。それなのに、オランド仏大統領は、「フランスで日産の車を作り、ルノーの工場を閉鎖しないように」と言っている。フランス政府はルノーの株式を保有している株主だから、ルノーの得になることを提言しているのだ。

 こうした状況に対して日本政府が黙っている理由はない。「日本の雇用を考えてもそんなことは受け入れられないし、ルノーのことはルノーが考えろ」と主張するべきだと私は思う。

 確かに、日産がV字回復を成し遂げることが出来たのは、カルロス・ゴーンCEOのお陰だが、もうその義理も果たしたのではないだろうか。今、ゴーン氏の給与の大半は日産から支払っている。それにも関わらず、ゴーン氏は日本に不利な動きばかりして、フランス政府にベッタリ近づいている。もうそろそろ、ゴーン氏と袂を分かつか、あるいは日産がルノーを逆買収するということも検討しても良いと私は思う。

ヤクルト本社は26日、同社の筆頭株主の仏食品大手ダノンとの戦略的提携関係を解消することで合意したと発表した。ヤクルト株を20%持つダノンは株式の買い増しや提携関係の強化を求めていたが、条件が折り合わなかったことから、インドやベトナムで手がける合弁事業を取りやめる見通しだ。

 戦略提携を解消することは両社の決別を意味するのではなく、むしろダノン社によるヤクルトのTOBへとつながる可能性がある動きだ。すでに20%の株式を保有しているわけだから、33.3%まで買い増していくことはそれほど難しい話ではない。ヤクルトとしては防ぐのは難しいかも知れない。

 ヤクルトは、乳酸菌の研究などが進んでいるため、世界的に見ても非常に評価が高い企業だから、TOBの可能性は大いにある。これまでにもヤクルトの経営陣は様々なトラブルを起こしてきたが、今回のような事態を招いてしまったのも、ひとえにヤクルト経営陣の怠慢さだと私は思う。

米ボーイングは新型機「787」の運航再開に向けた改修作業を週内にほぼ終える見通しだ。改修が終われば米連邦航空局(FAA)など各国当局が正式に営業運航の許可を出す。1月の相次ぐ発煙事故で起きた安全問題はヤマ場を越え、同社にとっては、運航停止に伴う航空会社との補償交渉と信頼の回復が次の課題となる見通しだ。

 日本でもすでに国交省の承認がおりて、6月から就航開始が決定している。実は面白いのは、ボーイング787の運行が停止していたのに、全日空の決算を見ると全く数字が悪くないということだ。むしろ、ボーイング787の運行が停止していたから良かったと言えるかも知れない。

 全日空は、赤字になりそうな路線に対して、燃料効率が良いという理由でボーイングの新型機「787」を割り当てた。しかし結局、運行することができず、赤字になりそうな路線が飛ばなかったおかげで、驚くべき数字が出てきたのだ。

 全日空の連結営業利益は1100億円で、前期比1割増だ。コスト削減の結果だと発表されているが、私は「787」の運行停止がプラスに働いたのではないかと見ている。結果論だが、燃料効率が良い飛行機が開発されたからと言って、手放しに不採算路線を復活させるのは危険だと言えるだろう。


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