大前研一のニュースのポイント

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安倍総裁の右傾化した日本への持論は不必要/橋下氏・石原氏に国政レベルで期待できることはない

2012年11月23日 | ニュースの視点


 衆院は16日の本会議で解散され「12月4日公示・16日投開票」の日程で
 総選挙が行われることが正式に決定した。
 
 野田総理は目標を「比較第1党」とし、現政権を維持できる「単独過半数」の
 確保は厳しいとの認識を示した。
 
 一方、政権奪還を狙う自民・公明両党は「自公で過半数」を目指し、
 日本維新の会など第三極を目指す勢力との三つ巴の構造となっている。
 
 第三極などと呼ばれているが、ほとんど実態がない政党ばかりであるから、
 「三つ巴」ではなく、もっと「自公」「民主」がしっかりしてくれないと困る
 というのが私の率直な感想だ。
 
 その意味で懸念しているのは、自民党の安倍総裁の演説内容である。
 
 持論である「右傾化した日本」についての発言が多く、
 防衛面ではもはや海外と揉めるのが前提になっているような話しぶりだ。

 憲法改正という点では私も賛成だが、
 その改正内容という意味では180度違う見解だ。
 
 これからの日本の将来を考えると、国際的に活躍できるような
 開かれた国家を目指していくべきだと思う。
 
 残念ながら安倍総裁の話を聞けば聞くほど、それとはかけ離れた国家像が
 浮かび上がってくる。
 
 今、安倍総裁はおかしな持論を持ち出すべきではなく、
 「自民党として十分反省した」ということ、
 そして「民主党政権の3年間がいかに無意味だったのか」ということ、
 この2点について国民に話をするべきである。
 
  
 「太陽の党」との合併を表明した「日本維新の会」は、
 12月4日公示・16日投開票の衆院選に向けて3ケタの数の候補者擁立を
 目指す考えを示しているとのことだ。

 松井幹事長の影響なのか、あるいは一時期の圧倒的な人気で政権を取れると
 判断したのか、いずれにせよ橋下大阪市長は国政に乗り出した結果、
 自分自身を見失いつつあると私は感じている。

 今の橋下市長の動きを見ていると、「こういう大阪を作りたい」
 「そして大阪を足がかりとして、日本を変えていきたい」という
 明確なポリシーが感じられない。

 頭の中は「いかにして目の前の選挙に勝つか」ということで
 満たされている。

 石原前都知事と手を組んだのも、選挙に勝つために自分が足りない部分を
 埋めたい一心なのだと思う。
 
 また橋下市長は、核兵器廃絶に関連して
 「政治は現実に即して戦略を考える必要がある。
 スローガンだけ掲げるような政治はもうやめないといけない」
 とも発言した。
 
 これも一種のパフォーマンスなのでしょうが、私に言わせれば
 「今、こんなことに時間を無駄にしている暇があるのですか?」
 と尋ねたい気持ちだ。
 
 このようなことは周知の事実であり、沖縄返還、北方領土問題など
 自民党が隠してきた嘘というのはたくさんある。
 
 橋下市長の政治家人生において、「今ここで言う必要があるのか?」
 ということをもう1度考えてもらいたいと思う。
 
 橋本市長と手を組む石原前都知事について言えば、
 「野球に例えるなら、ワンポイント先発ピッチャー」などと発言したよう
 だが、いい加減無責任なことはやめて欲しいと心から思う。
 
 そもそも中国との関係性が悪化した原因を作った張本人が、
 何ら責任を取らないまま、日本を指導しているがごとく振る舞うのは
 無責任極まりないことである。
 
 せめて中国との関係が悪化したことについて、
 どれほどの責任を感じているのか説明するべきだ。
 
 今後の日本にとっては「経済」「外交」が最重要課題ですが、
 橋下氏、石原氏のいずれもこの点についての提案は全くない。
 
 どのように日本経済を立て直すのか?
 中国、韓国、ロシアとの外交をどう進めていくのか?
 
 石原氏は言うまでもなく、結局のところ橋下氏も地方政治家に過ぎず、
 国政レベルで期待するのは難しいということだろう。
 
 橋下氏は国政に乗り出す前に、もう1度「大阪をピカピカにする」
 という原点に戻るべきだと私は思う。


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