大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

日本企業のノウハウを狙う中国企業/中国企業のブランド戦略上の特徴とは?

2009年08月04日 | ニュースの視点
24日、家電量販店のラオックスは都内で臨時株主総会を開き、6月に発表した中国の小売り大手、蘇寧電器集団との業務資本提携について決議し、株主の承認を得た。

ラオックスは8月に蘇寧と、15億円の第三者割当増資を実施する計画で、これにより家電販売に弾みをつけたいとのこと。

また、家電量販店のベスト電器は22日、東京新宿のタカシマヤタイムズスクエアにある新宿高島屋店を8月末で閉店する方針を固めた。

今後、家電業界においては中国勢が日本企業を買収するという大きな動きへと加速していくと思う。今回のラオックス買収は、その第一歩だろう。

日本の家電業界は、現在のところ、完全にヤマダ電機の一人勝ち状態だ。

中国企業はこの状況に好機を見出しているのだと思う。ヤマダ電機以下の経営が劣化した日本の家電量販店を取り込むことで、日本企業が持つ「ノウハウ」を吸収したいと考えているのだと私は見ている。

というのは、日本の家電量販店は中国の家電量販店に比べて規模は小さくとも、長年にわたる厳しい競争を経た結果、中国の家電量販店が持っていないような経営「ノウハウ」をたくさん持っているからだ。

例えば、ヨドバシカメラの持つ「ERP活用スキル」など、業界を問わず日本の中でも最高峰だと思う。

中国企業からすれば、日本の家電量販店を買収することで、買収相手の仕入れルートを活用して日本製の質が高い製品が手に入るだけでなく、同時に経営ノウハウまで付いてくるのだから、まさに「濡れ手に粟」といった気分だろう。

日本の家電量販店を巡る買収の動きは、こうした背景を受けている。

日本企業が互いに叩き合うことで、収益を圧迫してしまったという事実は、非常に残念に思う。

米通信各社がまとめたところによると、上海と深センの証券市場を合わせた時価総額は約3兆2000億ドル(約300兆円)に達したことが分かった。

15日の取引時間中には、一時的に上海と深センの時価総額が東証のそれを上回ったほどだ。

こうした中国市場の盛況を受けて、中国企業が国内・国外においてどのような動きを見せていくのか?という点に注目が集まっている。

中国企業の国外進出については、2009年7月27日号のNewsweek誌にある特集が組まれていた。

要点を簡潔に述べると、「中国企業が大きくなってもそれほど心配は要らない。なぜなら、中国には世界で通用している「ブランド」が殆どないからだ」というものだ。

確かに中国の国民性は極めて「ジェネリック(ブランドに囚われない)」であり、「プラグマティズム(実際主義)」だと私も感じる。

例えばテレビなどの家電であれば、「綺麗に映って性能も良いならブランドは何でも構わない」という風潮が強い。

一方、日本企業は「SONY」「HONDA」「CANON」などを筆頭に企業規模が小さい頃から、ブランドを確立し、世界に通じるものにするべく力を注いできたという歴史がある。

ここが中国や台湾の企業と大きく異なっている点であり、日本企業の強みだ。

また中国の国内に目を向けたとき、巨大な時価総額を持つ中国企業が、中国に進出している台湾企業を飲み込んでいくのではないかという見方もあるようだが、私はまだそのような展開にはならないと思う。

中国は国内においても確立された「ブランド」は殆どないし、「流通」や「マーケティング」についても、中国企業はまだ発展途上の状態であり、ちょうど今年の1月頃からようやく国内市場の整備にも目が向き始めたという段階だからだ。

領域によっては台湾企業も強みを持っているし、今後、中国企業がどのように成長戦略を描くかを注視したい。

ブランドを確立してこなかった中国企業のこれまでの選択が、今後の国外・国内市場に対してどのような影響を及ぼしていくのか、注目していきたいと思う。

1 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-08-08 23:27:50
 中国企業が日本を席巻することなど
100%ありえません。ましてや、小売では…。
 中国で合計1年ほど過ごしましたが
彼らは驚くほど積極的にコンタクトを
とります。
日本人の店員のように売場まで連れて行ってくれる人は滅多にいません。
小売業はドメステックなんです。
LAOXの持ってるNOWHOWは主に
仕入れ販売に関連してることでしょう。
日本で学んだノウハウが中国で生かされることは100%無い。

 バブル期 日本企業はアメリカの株を
買い漁りました。
アメリカの何が変わりました?

 チャンピオン企業でもない
チャレンジャー企業でもない。
ただのFollowerのノウハウが流出
したところで日本のピンチでもないし
中国のチャンスでもない。
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