エツ子の壊れ方は、まるでホラーだ。
おとといのこと。
夜勤のS子が定時の排泄介助に行ったら
エツ子はベッドに座っていた。
ただ座っていたのではない。
頭と片方の腕を
ラップでぐるぐる巻きにしていたのだという。
いったい何が起こったのか!?
S子が尋ねると、エツ子はこう答えたそうだ。
「おにぎりをサランラップで巻いておこうと思ったんです」。
それも、どんよりと暗く、抑揚のない声で…。
闇の底にずるずると引きずられそうな
くぐもった声で…。
プロとして言い方は正しくないが
認知症にもかわいいタイプと怖いタイプがある。
「ありがとさ~ん」を繰り返すトヨは
かわいいタイプの筆頭であり
毎日毎日同じ言動を繰り返すカヨもミネも十分に許容範囲。
“ケイコ日記”でお馴染みのケイコだって
手は焼けるが愛おしい。
食堂でズボンを脱いで排便してしまっても
食べる、歩くという簡単な動作がわからなくなってしまっても
それでもかわいいし
死ぬまでお世話したいとさえ思っている。
しかしエツ子はかわいくない。
かわいくないどころか、怖い。
死ぬまでお世話?とんでもないわ!
この違いはなんだろう?
職員の何人かで話をしたことがあった。
陰気だからじゃないですか?
誰かが言った言葉に、一同、そうだ~!
キツイ介護の仕事だからこそ
私たちは微笑ましいエピソードに摩り替える。
こんなことがあってさぁと
ことごとく笑いに変えて乗り越える。
じゃなきゃ、やっていられない。
しかしエツ子の場合は、それができない。
暗すぎて、こっちまで引きずられてしまうのだ。
ああ、明日はわが身。
もし認知症になったとしても
せめて笑いに変えられるタイプでありたいものだが…。
おとといのこと。
夜勤のS子が定時の排泄介助に行ったら
エツ子はベッドに座っていた。
ただ座っていたのではない。
頭と片方の腕を
ラップでぐるぐる巻きにしていたのだという。
いったい何が起こったのか!?
S子が尋ねると、エツ子はこう答えたそうだ。
「おにぎりをサランラップで巻いておこうと思ったんです」。
それも、どんよりと暗く、抑揚のない声で…。
闇の底にずるずると引きずられそうな
くぐもった声で…。
プロとして言い方は正しくないが
認知症にもかわいいタイプと怖いタイプがある。
「ありがとさ~ん」を繰り返すトヨは
かわいいタイプの筆頭であり
毎日毎日同じ言動を繰り返すカヨもミネも十分に許容範囲。
“ケイコ日記”でお馴染みのケイコだって
手は焼けるが愛おしい。
食堂でズボンを脱いで排便してしまっても
食べる、歩くという簡単な動作がわからなくなってしまっても
それでもかわいいし
死ぬまでお世話したいとさえ思っている。
しかしエツ子はかわいくない。
かわいくないどころか、怖い。
死ぬまでお世話?とんでもないわ!
この違いはなんだろう?
職員の何人かで話をしたことがあった。
陰気だからじゃないですか?
誰かが言った言葉に、一同、そうだ~!
キツイ介護の仕事だからこそ
私たちは微笑ましいエピソードに摩り替える。
こんなことがあってさぁと
ことごとく笑いに変えて乗り越える。
じゃなきゃ、やっていられない。
しかしエツ子の場合は、それができない。
暗すぎて、こっちまで引きずられてしまうのだ。
ああ、明日はわが身。
もし認知症になったとしても
せめて笑いに変えられるタイプでありたいものだが…。
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