キヨハル(96歳)は私のことを“ママさん”と呼ぶ。
大好きだった母親とどこかしら似ているんだそうだ。
ま、好きに呼べばいい。
きのうの夜勤は、そのキヨハルと大喧嘩した。
移動は車椅子に頼らざるを得ない彼のために
夜間、オムツ交換に行ったときだ。
尿量の多い彼は、夜間
テープ式のオムツにパッド、そして男巻き(チン巻き)で寝る。
ぐっすり寝ていても
イチモツに巻いてあるパッドだけを交換すればいいわけだ。
しかし、たまに夜中に目覚めて車椅子でトイレに行き
自分でオムツからリハビリパンツに交換してしまうことがある。
「起きる時間だから」
「自分でできるから」
それが、理由らしい。
きのうもそれをやってくれた。
部屋に行ってみるとすでにトイレの便座に座り
ヨイショ、ヨイショと小さな掛け声を発しながら
一生懸命リハビリパンツに脱ぎ替えている。
それを見た私は、もちろん、ストップをかける。
あのね、まだ朝じゃないの。
まだ寝るでしょ?
リハビリパンツだけで寝たら、オシッコ漏れちゃうから。
オシッコ漏れちゃったら、冷たくてイヤでしょう?
しかしキヨハルはウチで一番の頑固ジジイ。
赤ちゃん言葉で駄々をこねる、困ったジジイである。
なんと言っても聞かず
聞かないどころかヒステリックに怒り出すのだ。
「イヤだよ、イヤだよ。
僕はオシッコなんか漏らさないもの。
だから僕の好きにするんだあ!」
好きにしてあげたいところだが
このまま放置したらパジャマもシーツもビチャビチャになること必至。
よ~し、そこまで駄々こねるなら受けて立とう!
私はキレた。
介護職に就いてからはじめてキレた。
あ、そう? じゃあ好きにすればいいわ。
だなあんて言わないよ。
今回は絶対譲らない。
アナタと喧嘩しても、アナタから嫌われても
私はアナタの好きにはさせない。
だって、オシッコでビチョビチョになって
冷たいまま寝かせるわけにはいかないからね。
はぁ? 私が頑固者だって?
そうだよ、今夜の私はアナタ以上の頑固者だ。
なんて言われてもいい。
とにかく、つべこべ言わずにベッドに戻れ!
彼が履こうとしていたリハビリパンツを奪い取り
私は啖呵を切った。
(実際のところ、ここまで怒るとエネルギーの消費は激しく
そのあとどっと疲れたのであったが)
日ごろママさんと慕う私がここまでキレたので
圧倒されたのだろう。
勢いを失ったキヨハルはしおしおと車椅子でベッドに戻った。
まな板の鯉のごとく
元通りのオムツ姿にさせらている最中
彼は私に言った。
「ごめんね、ママさん。わがまま言って、ごめんね。
ママさんは僕のことを本当に思ってくれているから怒ったんだね」
そして突然、号泣。
「ありがとう、ママさん。(グスグス)ありがとう、ママさん」
私も言いすぎたね。
じゃ、これで仲直り。
そう言って彼の手を握ると、またしても号泣。
「鼻紙ちょうだい。ママさん、鼻紙~!」
やれやれ。
仕方ない。アナタを看取るまでこの仕事続けるわ。
大好きだった母親とどこかしら似ているんだそうだ。
ま、好きに呼べばいい。
きのうの夜勤は、そのキヨハルと大喧嘩した。
移動は車椅子に頼らざるを得ない彼のために
夜間、オムツ交換に行ったときだ。
尿量の多い彼は、夜間
テープ式のオムツにパッド、そして男巻き(チン巻き)で寝る。
ぐっすり寝ていても
イチモツに巻いてあるパッドだけを交換すればいいわけだ。
しかし、たまに夜中に目覚めて車椅子でトイレに行き
自分でオムツからリハビリパンツに交換してしまうことがある。
「起きる時間だから」
「自分でできるから」
それが、理由らしい。
きのうもそれをやってくれた。
部屋に行ってみるとすでにトイレの便座に座り
ヨイショ、ヨイショと小さな掛け声を発しながら
一生懸命リハビリパンツに脱ぎ替えている。
それを見た私は、もちろん、ストップをかける。
あのね、まだ朝じゃないの。
まだ寝るでしょ?
リハビリパンツだけで寝たら、オシッコ漏れちゃうから。
オシッコ漏れちゃったら、冷たくてイヤでしょう?
しかしキヨハルはウチで一番の頑固ジジイ。
赤ちゃん言葉で駄々をこねる、困ったジジイである。
なんと言っても聞かず
聞かないどころかヒステリックに怒り出すのだ。
「イヤだよ、イヤだよ。
僕はオシッコなんか漏らさないもの。
だから僕の好きにするんだあ!」
好きにしてあげたいところだが
このまま放置したらパジャマもシーツもビチャビチャになること必至。
よ~し、そこまで駄々こねるなら受けて立とう!
私はキレた。
介護職に就いてからはじめてキレた。
あ、そう? じゃあ好きにすればいいわ。
だなあんて言わないよ。
今回は絶対譲らない。
アナタと喧嘩しても、アナタから嫌われても
私はアナタの好きにはさせない。
だって、オシッコでビチョビチョになって
冷たいまま寝かせるわけにはいかないからね。
はぁ? 私が頑固者だって?
そうだよ、今夜の私はアナタ以上の頑固者だ。
なんて言われてもいい。
とにかく、つべこべ言わずにベッドに戻れ!
彼が履こうとしていたリハビリパンツを奪い取り
私は啖呵を切った。
(実際のところ、ここまで怒るとエネルギーの消費は激しく
そのあとどっと疲れたのであったが)
日ごろママさんと慕う私がここまでキレたので
圧倒されたのだろう。
勢いを失ったキヨハルはしおしおと車椅子でベッドに戻った。
まな板の鯉のごとく
元通りのオムツ姿にさせらている最中
彼は私に言った。
「ごめんね、ママさん。わがまま言って、ごめんね。
ママさんは僕のことを本当に思ってくれているから怒ったんだね」
そして突然、号泣。
「ありがとう、ママさん。(グスグス)ありがとう、ママさん」
私も言いすぎたね。
じゃ、これで仲直り。
そう言って彼の手を握ると、またしても号泣。
「鼻紙ちょうだい。ママさん、鼻紙~!」
やれやれ。
仕方ない。アナタを看取るまでこの仕事続けるわ。
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