ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

ハルオ、逝く。

2018-10-14 22:29:21 | 日記
ハルオが逝った。

夏は越せないと思われていたのに
低空飛行で命を繋ぎ
先週、眠るように息を引き取ったのだった。

脊椎損傷による下半身拘縮のため
援助はかなり大変だった。
しかし入居生活が5年と長かったこともあり
また穏やかでやさしい人柄もあって
どの職員も親しみを持って接していたし
寄り添おうとする思いが大きかったと思う。

私にとっては、忘れられない思い出がある。
それは5年前の大晦日。
まだこの仕事に就いてわずか3ヶ月のときだ。

夜勤で一人廊下を歩いていたら
ハルオの部屋から「助けてくれ~」と大きな叫び声が。
行ってみると、ハルオがベッドからずり落ちている。

新米の私はどうしていいかわからない。
大きくて重くて下半身拘縮のおじいさんを
どうして一人でベッドに戻せるものか!?

仕方なく、ハルオにはそのまま朝まで
床で寝てもらうことにした。
風邪を引かないよう、布団やらセーターやらバスタオルやら
ありとあらゆるものをかぶせて。

しかし忍びなくて、一人置き去りにすることができない。
他の利用者の排泄介助を終えては
事務所ではなくハルオの部屋に戻り
添い寝のように寝そべって拘縮した足をさする。

「ごめんね、ハルオさん。
こんなところで寝かせて本当にごめんね」

そのつい1週間前に父を亡くしたこともあり
ぽろぽろと涙が出てきたっけ。

ああ、ハルオさん、いろんな思い出があったねえ。
あれから5年。
私も少しは介護職員として成長したと思うけど
アナタの目には、どう映っていましたか?

さて、私たちは感傷に浸ってばかりいられない。

ハルオの妻で、ここに頻繁に登場する認知症のケイコ。
彼女は夫の死を受け入れることができるのか!?
混乱して、とんでもない行動をとることも予想される。

2日後に、その死は娘より知らされた。

その時はさすがに号泣したというが
すぐに忘れていつも通りの生活を送っているケイコ。

ただ、ハルオに何かが起きたことだけは
ぼんやりわかっているのだろう。

葬儀があったきのう
娘夫婦や孫たちが迎えに来た。

ケイコが娘に尋ねる。
「ハルオ君(なぜ“君”づけ)がいなくなっちゃったの。
どこに行っちゃったのかしら」
娘が「天国に行ったのよ」と答えると
「一人で行ったの? 大丈夫?」と心配顔。
娘が「○○や△×がお迎えにきてくれたから大丈夫よ」と
すでに亡くなっている親族の名前をあげて言うと
「ああ、それならよかった。安心だわ」
ケイコはそう答えたのだった。

ハルオさん、今まで本当にありがとう。
そして
ゆっくり休みたいところでしょうけれど
ケイコさんのこと、天国から見守ってあげてくださいね。








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