ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

最期

2014-06-22 23:30:56 | 日記
ターミナルだったTさんが、今朝未明、ご逝去された。

生涯独身で、訪ねてくるのは妹さんだけという孤独な身の上。
早番も出勤する前の時間だったから
職員に見送られることもなく、ひっそり搬送されたという。

糖尿病からくる腎不全で
象のように浮腫んだ足からは浸出液がしたたり
酷くなって行くばかりの褥そうは異臭を発し
あまりの痛みに
おむつ交換時も「お願いします、痛いからやめてください」と
すがるように言っていた。

白内障が悪化して、目も不自由だった。
彼女を慰めてくれるのは、枕元に置かれた古いラジオだけ。
「何を聴いているんですか」と尋ねると
「さあねえ。別に音が流れていればなんでもいいの」
元気なころから、そう言って一日中ラジオを流していたっけ。

「あなたたちにはきっといいことがありますよ」
半年ほど前の入居時
ふと、そう言われたことがある。
「こんな大変な仕事をしているんだもの。
絶対、いいことありますよ」と。

この仕事に就いたばかりの私にとって
その言葉は励みになった。
そんなに大変な仕事をしているとは思わないが
いつかいいことがある-その言葉は本当にありがたかった。

食事制限を受けていたから
彼女に用意された献立は粗末としか言いようがなかったが
同じテーブルでしっかり味付けされた肉や魚料理を食べる人たちを羨むことなく
「食べさせてもらえるだけで幸せです。
本当に皆さんには感謝しています」
そんなことばかりおしゃっていたTさん。
本当に我慢強く、慎み深く、優しい方だった。

おとといからモルヒネ投与。
痛みを訴えることがなくなったことで私たちの心もいくらか落ち着いたが
その分、生きるエネルギーがしぼんでしまった彼女を見て
よけいに辛くもあった。

今朝、訃報を聞かされ、そこに居合わせた職員が口々に言った言葉は
「残念だね」ではなく「よかったね」であった。
治る見込みのない人をこれ以上苦しませたくない。
みんな、思いは同じだった。

半年間お世話させていただいた方の死は、もちろん寂しい。
けれども
これでTさんがやっと安らかになれる
そう思うと、「よかったね」なのである。


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