
きょうは実に穏やかな一日だった。気温は昼でも15度ぐらいで、まさに秋日和だった。いつも目にする北アルプスは三国堺辺りから乗鞍、御嶽までと長い帯状の雲を中腹に広げ、終日その姿を変えることがなかった。アルプスの峰々はその雲の上に浮かぶようにして、眼下に広がる里の秋を無言で見下ろしていた。もうしばらくすれば、山々の山肌の色が変わり、もっと澄んだ秋空と調和するようになるだろう。
牧場には弱点がある。牛の脱柵を許してしまうような牧柵のことだが、昨日大半の牛を移動させた第5牧区は、特に長いこと牛を出さなかったから、弱い所が幾箇所もある。取り敢えず、小黒川を横切る一番北側の牧柵を半日をかけて補修した。昨日、「好きにしろ」と叫んだが、何頭もの牛が小黒川の林道を好きなだけ下っていかれたら、それも困る。
まだあの辺りは川幅も狭く、渡渉に困難はない。気持ちの良い草地が川床を埋め、そこを蛇行しながら小黒川が流れている。瀬音も耳に障るほどのことなく、むしろ心地よいくらいだった。切れたバラ線や、曲がった支柱などを打ち直していると、10年も前のことをついこの間のことのように思い出す。この支柱を打つには石だらけの場所で苦労したなとか、複雑に絡まった古いバラ線をほぐしながら誰のしたことかと、その粗雑な仕事をなじったりしたことまで・・・。そして、よくもまぁこんな仕事を、これほど長く続けたものだと呆れたりした。
一昨日だったか、少し早めに牧を下りたら、山里の田で夫婦二人が稲刈りをしていた。翌朝上っていったら、その田の稲刈りはすっかり済んで、稲のはぞ架けも終わっていた。1反(約100平方メートル)の半分ほどの小さな山田だから、恐らく簡単な稲刈り機でできただろう。昔のころの秋の稲田や稲刈りを思い出す、いい風景だった。
今週末の3連休、どうも好天を期待できそうにないようです。秋霖に煙る森も味わいがあります。時々キノコの森を訪れるも、今年は驚くほど不作です。ツタウルシの紅葉も少し遅いような気がします。
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