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入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’19年「秋」 (14)

2019年09月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうは実に穏やかな一日だった。気温は昼でも15度ぐらいで、まさに秋日和だった。いつも目にする北アルプスは三国堺辺りから乗鞍、御嶽までと長い帯状の雲を中腹に広げ、終日その姿を変えることがなかった。アルプスの峰々はその雲の上に浮かぶようにして、眼下に広がる里の秋を無言で見下ろしていた。もうしばらくすれば、山々の山肌の色が変わり、もっと澄んだ秋空と調和するようになるだろう。

 牧場には弱点がある。牛の脱柵を許してしまうような牧柵のことだが、昨日大半の牛を移動させた第5牧区は、特に長いこと牛を出さなかったから、弱い所が幾箇所もある。取り敢えず、小黒川を横切る一番北側の牧柵を半日をかけて補修した。昨日、「好きにしろ」と叫んだが、何頭もの牛が小黒川の林道を好きなだけ下っていかれたら、それも困る。
 まだあの辺りは川幅も狭く、渡渉に困難はない。気持ちの良い草地が川床を埋め、そこを蛇行しながら小黒川が流れている。瀬音も耳に障るほどのことなく、むしろ心地よいくらいだった。切れたバラ線や、曲がった支柱などを打ち直していると、10年も前のことをついこの間のことのように思い出す。この支柱を打つには石だらけの場所で苦労したなとか、複雑に絡まった古いバラ線をほぐしながら誰のしたことかと、その粗雑な仕事をなじったりしたことまで・・・。そして、よくもまぁこんな仕事を、これほど長く続けたものだと呆れたりした。

 一昨日だったか、少し早めに牧を下りたら、山里の田で夫婦二人が稲刈りをしていた。翌朝上っていったら、その田の稲刈りはすっかり済んで、稲のはぞ架けも終わっていた。1反(約100平方メートル)の半分ほどの小さな山田だから、恐らく簡単な稲刈り機でできただろう。昔のころの秋の稲田や稲刈りを思い出す、いい風景だった。

 今週末の3連休、どうも好天を期待できそうにないようです。秋霖に煙る森も味わいがあります。時々キノコの森を訪れるも、今年は驚くほど不作です。ツタウルシの紅葉も少し遅いような気がします。

 営業案内 「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」およびその(2)です。下線部をクリックしてご覧の上、どうぞご利用ください。
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     ’19年「秋」(13)

2019年09月18日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうもまた牛の話になるが、さんざん考えた挙句、怪牛マッキー奴を囲い罠の中に閉じ込めることにした。そうできれば他の牛は、草の豊富な共用林野である国有林の第5牧区へ移すことができる。種牛さえいなければ、他の牛のことはどうにでもなる。
 
 今や牛たちは草不足で、早晩瘦せだすのは間違いない。そうなれば、里へ降りた牛を見て畜主は呆れるばかりか怒るだろう。牧場の評判がまた落ちる。そういうことがこの仕事を始めた最初の年に実際にあり、その後、悪評が瞬く間に広まった。いわく「入笠牧場に牛を上げると瘦せて帰ってくる」と。
 しかしながら、種牛を囲い罠の中に入れることは簡単なことではない。かなりの危険も伴う。以前から呟いているように、マッキー奴はハーレムの王様気取りで、雌牛以外の侵入を極端なほど嫌う。ちゃんとした調教をせずにそれを赦してしまったことが一番の問題だが、それを今言ってみても始まらない。
 案の定、奴は巨体をもって威嚇してきた。自分の方が強いと勝手に思っている。しかし、こちらにはかなり個人差はあるとはいえ、人間には牛よりかは考える力があると信じたい。クマスプレーも持っている。クク。
 
 そして今、奴は鹿さえも逃げることができない囲い罠の中にいる。どうやってそうできたかを呟いてみようとしたが、話がややこしくなるだけで恐らくは伝わらない。諦めた。その他の牛の殆どは、これまた予定通り第5牧区に移すことができた。時々妙な咆哮を聞かせてくれるが、草をふんだんに食べているはずだ。
 下牧日は26日、長くても今月一杯、残り約10日と少々である。いや、これでどれほど気持が楽になり肩の荷が下りたことか。これでもう草のことも、牛の体型、体重も気にしないで済む。上出来だ。もう脱柵など気にしない。したかったら、どこへでも探しにいってやるから好きにしろ、と大きな声で叫んでやりたいほどだ。
折角作った弁当を忘れたが、そんなことはもう、どうでもいい。

 今週末の3連休、どうも好天を期待できそうにないようですが、今見えているような秋霖に煙る森も味わいがあります。今年はあれだけ雨が降ったのに、驚くほどキノコは不作です。

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     ’19年「秋」 (12)

2019年09月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 あの長い一日が終わり、それから三晩上に泊まった。必ずしもそれは"はずみ"ではなかったものの、そのあたりの細かいことはもう忘れつつある。
 上に泊まると朝が早く、家でのように寝直しが効かないのでどうしても寝不足になってしまう。まき場の朝をのんびりとコーヒーでも飲みながら、しみじみ過ごすなどということができればよいのだが、牛は明るくなれば活動を始めるし、そうなれば荒くれ者のマッキー奴がいないのを確認してから給塩をしてやりたくなる。キャンプ場のトイレ掃除も、まだ皆が寝ている間にできれば済ませてしまおうとする。牛に気を遣っても、人にはあまり頓着しない管理人らしいが、それでもそのくらいの配慮はしている。
 昨夜家に戻り、眠気と疲労のすべてを絞り出すように11時間も眠った。それでようやくいつもの感覚が戻り、1時間15分の通勤も、標高差1千メートルの気温や、気圧の違いにもいつもと変わらず快適に来ることができた。



 昨夜の帰り、小豆坂トンネルを抜け長藤の集落へ降りてきたら、夜目にも2,3枚の田が刈り取られているのが分かった。笠原の広大な稲田などと比べると、あの山間の田の方が稲刈りは早いのかも知れない。今朝来る時に見たら、自家用にするつもりなのだろうが、刈り取られた稲は乾燥機を使わずに天日で干している田が目に付いた。自給自足の名残りか、せめて自分たちが収穫した米くらい、できるだけ美味しい物を食べたいのだろうと想像した。それも分かる。
 
 稲田から黄金色の稲が消えると、季節はぐっと進む。紅葉がもうすぐ本格化するが、森林限界を超えた山は悪天に遭うと厳しいことになる。ザイテングラード辺りで転倒するような中高年は、中級山岳で深まる秋を満喫されては如何がでせうか。

 かんとさん、通信有難く拝読。そうですか。好天を期待しながら1ヶ月先を楽しみにしてます。今週末TOKU氏も来るつもりでいるようですが、彼も誰かさんに負けない雨男、さて?

 今週末はそういうわけでTOKU氏以外の予約はまだ1件もなく、月齢や紅葉のことを考えれば21日からの3連休の方が"おいしい"と思います。よろしかったら計画を練ってみてください。二日日も呟きを休み、にもかかわらず多くの人に接続して頂きありがとうございました。

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     ’19年「秋」 (11)

2019年09月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 山の朝はいつも早く、今朝は5時半起床。そして現在6時半、ようやく日が昇る。昨日脱柵したホルス5頭は、囲い罠の中ですっかり落ち着いた様子で熱心に草を食べている。見慣れた風景でも、気が落ち着く。
 それにしてもあの牛たち、一体どこから逃げてあんな場所へ行ったのだろう。1頭だけでなかったからそれで行動範囲が広がってしまったのだと思うが、もしかすれば脱柵してから1日以上が経過していたかも知れない。それで途方に暮れた牛たちが、撮影関係者の声を聞いて近付いてきたということは充分に考えられる。
 こんなことを呟くと、牛守として最低限やらなければならない日々の頭数確認を怠っているように思われるが、実はそうだ。あの種牛のせいでなかなか思うようにできず、2群に割れた牛たちの管理は牧草も少なくなってきただけに頭が痛い。一昨日久しぶりに来た畜産課長と打ち合わせ、一応下牧を今月の26日と決めたものの、車の手配などで実際に牛がいなくなるのは10月1日までかかる。

 確かに、牛のことなどよりかきょうも行われている撮影が気になる人はいるいると思う。もっと呟けと、あのうるさい先輩さまも仰っている。別にもったいぶっているわけではないが、この手の仕事には守秘義務の縛りがあるから、この段階であまり話題にできるようなことはないというのが実情である。とにかくあまり派手さのない、やたら時間のかかる、肉体労働の多い仕事だと、たまに近くで見ていて感ずる。演じさせる方も、演じる方も、根気がなければできない大変な共同作業だ。
 
 きょうは3連休の初日でもあり、キャンプの予約がかなり入っている。本来の仕事である牛のこと、そして早朝からの撮影、長い1日になりそうだ。有難いのはきょうの好天。
 今また予約の電話が入った。受けるのも、さりとて断るのも、簡単ではない。テントは大型化し、快適さを求めるキャンプのやり方は大分変ったと痛感している。

 今週末は予約が幾つも入っているのに次の週末はまだ1件もなく、月齢や紅葉のことを考えれば、21日からの3連休も"おいしい"と思います。よろしかったら計画を練ってみてください。

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     ’19年「秋」(10)

2019年09月13日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 台風15号の被害がそれほどではなかった伊那谷は、まさに実りの時を迎えている。黄金色に輝く稲田が続き、その脇にはコスモスの花がこぼれるように咲いている。この花の清楚な姿もだが、あくまでも脇役であろうとする風情がまたいい。
 コスモスは杖突街道沿いにも、また山室川に沿った芝平の集落にもたくさん目にするが、それでもこの花を見るのに一番の場所は松倉の集落だと、勝手に決めて何年にもなる。この集落は高遠からだと杖突街道を北へ約10㌔、藤沢の集落を過ぎた辺りで街道を離れ、諏訪神社の横を東(右手)へ1キロも行かないうちにある。
 松倉は江戸のころには高遠藩が参勤交代に際し近道するためこの集落を通り、千代田湖の先から諏訪側に抜けたそうで、それで金沢峠とか金沢街道の名が今に残るが、現在の青柳に抜ける金沢林道とは違う。
 この松倉も松倉川の谷の中にあって、住民が100人といそうにない小さな集落だが、ただ芝平などよりも空は広くて明るい。数えてみたことはないが幾軒かの家が火の見櫓を中心に集まり、その他にも棚田の中に何軒か散らばっている。そして、お定まりの過疎化と闘っているらしい。
 大きな曲がりを2回も繰り返し、集落を見下ろせる辺りまで来れば、道路脇に咲くこの一叢の花が目に留まる。来る時に朝日の中で見るのもいいし、帰る時の夕暮れの中で眺めるのもいい。普段はあまり通らないが、今週はもう2度も足を運んだ。
 特に気に入っている理由を述べなければいけないが、ウーン、谷間にこぢんまりと残る古い集落と、そこに咲くコスモスの花とがきっとよく合っているからだろう。

 昼少し前、撮影の関係者から牛が脱柵していると連絡があった。丁度、小入笠の頭から下り始めたところで、取る物も取り敢えず現場へ急行すると、なんと、「本番」という声がする撮影隊のすぐそばのコナシの林の中に、5頭のホルスがまるで撮影見物でもしているようにして突っ立っていた。

 今週末は予約が幾つも入っているのに次の週末はまだ1件もなく、月齢や紅葉のことを考えれば、21日からの3連休も"おいしい"と思います。よろしかったら計画を練ってみてください。

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