ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

NHK FMにて素謡『井筒』の収録

2006-02-22 01:16:18 | 能楽
今日は渋谷のNHKセンターにてFM『能楽鑑賞』の収録に行って参りました。

曲目は『井筒』で、シテは師匠=梅若万三郎、ワキ=梅若紀長。ぬえは地謡としての参加です。割と良い出来だったと思うので、放送をお楽しみにー。。。と言っても放送はなんと9月3日(日)朝7:30だそうです(ちと時刻はうろ覚え。。)。いつもは収録して1ヶ月後あたりに放送になるのですから、今回はどういう事情でこんなに早い収録だったんかいな?

それにしてもラジオの収録で『井筒』はキツイ!
なんせ静寂が旨の曲なので、45分間 息継ぎの音もたてられないほど気を遣います。緊張のあまり生唾を呑み込む、それさえも音がして邪魔になるのでは。。と震え上がる、という。。(^^;)

こういう事は静かな三番目物の曲ならではで、もちろん舞台でも気を遣うけれども、それでも能では囃子方もおられるし、基本的には大きな音で演奏していますからこれほど気を遣う、という事はないです。お客さまも多いから咳払いが聞こえてきたり、少しは雑音の類だってないわけではない。それに能楽堂は広いですからね。おシテが橋掛りにおられればお客さまの注意も主にそちらに向けられるだろうし、間狂言の語リなど、おシテが舞台におられない場面だってある。

。。でもラジオの収録では防音されたスタジオで、出演者各自の目の前にそれぞれマイクがあって、そのマイクが ぬえの音を「ジ~~~~~~~~っ」っと狙ってる。。(>_<)
こんな環境で『井筒』を、しかも素謡で謡うのはつらいっ。

考えてみると、舞台で地謡を謡うときも、能と素謡・仕舞というのはずいぶん違いますね。能では上記のような理由もあって、謡うのは割合と楽なのです。でも囃子が入らない素謡や仕舞では、やはり能と比べればかなり気を遣いますね。少なくとも文句を間違えるととっても目立っちゃう。(^^;)

いやいや、素謡や仕舞の地謡が大変なのは、間違うとすぐに目立ってしまうから気を遣うのではなくて、謡そのものを聞かせなければならない、というところが大変なのだと思います。言うなれば、能や舞囃子の地謡ならばある程度囃子との共同作業として作り上げてゆくものなので、そのコンビネーションとか、息の合い方みたいなものが重要になってくる。囃子方と一緒に盛り上がって行ける、という事もありますね。まあ地拍子の知識がなければ謡えない、という根本的な問題もある事はありますが。

また素謡や仕舞の地謡では能ほどの盛り上がりでは「やり過ぎ」である事が多くて、ちょっと引いて冷静に謡わなければならない、という事もありますね。

いずれにしても、能や舞囃子に対して、素謡や仕舞の地謡というのはそれほど違うものなのです。

。。で、ぬえは能の地謡も素謡の地謡も、どっちも好き。(^^;)

仕舞の地謡の面白さ、というものはちょっとまだ ぬえにはわからないんですけども、能の地謡には能の良さ、素謡の地謡には素謡の良さが凝縮しているように感じます。場面によりシテよりも雄弁な事も多いし、やっぱり能の正否を決定づけるのは地謡、でしょう。

ぬえもはやく地頭やりたいなあ。


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