ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

鵜澤速雄師逝去

2006-08-30 19:00:02 | 能楽
あまりにも突然でした。聞けば7月に観世流シテ方の会の翌日に恒例で行われるゴルフにいつものように出かけられたそうで。。 ぬえもまさか一週間の間に能楽師が集まった婚礼で『四海波』を謡う場面と、葬儀で『卒都婆小町』を謡う場面の両方に立ち会うとは思わなかった。。

師は ぬえよりはずっと上の世代の方々とのおつき合いが多かったと思いますし、ぬえは師の父君である人間国宝だった故・寿師の温かいお人柄に書生時代から触れていたのと、ご長男で今回喪主を務められた洋太郎くんとは同じ世代で一緒の舞台をいくつも勤めてきたのですが、速雄師はちょうど我々の世代が書生時代に鼓を習う世代の先生にあたり、正直に言って速雄師に鼓を習ったわけではない ぬえにとっても「怖い先生」という印象が強い方でした。

それでも昨日 お通夜に参列させて頂いて、その後のお別れの席では何人もの方が涙ぐまれていました。某・観世流の先生はその席で ぬえに、若い頃に舞台を終えたあとに、師やまた ぬえの師匠らとも一緒に遊んだ思い出話をお話してくださいました。「明日の葬儀では棺にこれを入れてやるんだよ」とおっしゃって ぬえに見せて下さったのは昨年 熱海で遊んだ写真。。そのあとこの先生は飾ってあった遺影にビールを手向けて、あとは無言でずうっとその遺影を見つめ続けておられました。(/_;)

歳が近くて、若い頃からずうっと舞台を共有して来られた先生方には、それはそれは大切な思い出でしょう。これらの先生を残して、速雄師は60歳代で逝去されました。。永眠するにはあまりに早いお歳でした。 ぬえ自身も今年のはじめに楽屋でお目に掛かりましたが、とても痩せられて、そうして、とても柔和で優しくなられていて。。なんだかあの厳しさがないのを寂しく感じました。やはり能楽界にはなくてはならない方でしたし、偉大な足跡も残された方だと思います。

故師のご冥福をお祈り申し上げます。  合掌


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1 コメント

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深懐 (幽玄堂)
2006-08-31 03:36:47
知りませんでした!

ただただ、驚くばかりです。



私が最後に拝見したのは5月の宝生別会・大原御幸でした。とてもすばらしい囃子でした。既にお加減は悪かったのでしょうか?そんな感じはまったく感じなかったのですが…。

大好きな奏者の1人でした。もうあの音が聞けないのは本当に残念です。



こうして誰かが亡くなってしまうたびに、どうしてもっと見ておかなかったのかと悔やまれてなりません。

もっと舞台を見なくては。



心よりご冥福をお祈り致します。
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