ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

狩野川薪能、大成功で終了しました!(その4)

2008-08-28 03:39:49 | 能楽

仕舞=彩花、ありさ、ひかり、夢知、明日香、悠希

子ども創作能が無事に終わり、おつぎは中学生による仕舞『吉野天人』。

この薪能は小学生の高学年、4年生から6年生を対象に出演者の募集をしているのですが、中には中学生になってからも薪能に参加を続ける希望を持ってくれる子もいて、もう数年間も薪能に携わっている子までいます。今年は受験を控えた中学3年生まで薪能に駆けつけてくれて、さすがに直前にしか稽古に参加できませんでしたが、もうこの創作能も何度も参加していて台本もよくわかっているので、薪能当日には後見を勤めてもらいました。こちらの方が地謡よりも大変だったかも。。

中学3年生は無理としても、まだ受験までには時間の余裕がある中学生には、子ども創作能の地謡を手伝ってもらったほか、仕舞を演じてもらいました。やはり子ども創作能は、みんなが舞台を楽しめるように、チャンバラあり、矢を射る型あり、と、盛りだくさんの派手な演出を取り入れているのですが、その分 能の大切な部分からは遠ざかってしまっているのもまた事実です。だから、小学校を卒業した先輩たちには、後輩たちの舞台を盛り上げてもらうほかに、ぜひ能の古典の曲にも触れて欲しいと考えて、一昨年から仕舞のお役を与えています。で、今年の課題曲は『吉野天人』。稽古や番組構成上の都合もあって、なんと中学生6名の相舞という仕舞でした。

しかし。。中学生はやっぱり忙しいね。中には中学受験をして遠距離通学をしてる子もいるし、部活が厳しくて夏休みはほとんど毎日のように朝から晩まで練習に出なければならない子もいるし。ですから最後には仕舞の稽古が足りずに、また稽古場に借りている会場の予約時間内に稽古に到着できないで、ついに薪能実行委員会がある伊豆の国市観光協会のオフィスでデスクや椅子をどかして稽古したこともありました。それでもやっぱり仕舞の型がよく身に付いた子と、場面によってはもうひとつ微妙な子もいます。今回の仕舞は6名がまとまって舞う形をとったので、それぞれの子どもたちをよく見て、ある子が間違えやすい型をするときには、その型に自信を持って舞っている子が視界に入るように立ち位置を決めたり、じつは微妙な調整を加えながら稽古を進めていったのでした。結果的には誰も間違えずに舞うことができたようですから、ぬえの作戦勝ちだったかも。

さらに続く番組は「連管」。笛の合奏のことですが、前回と同じく笛を除く囃子方も参加しての演奏となったので、素囃子に近い形での演奏となりました。講師は前年と同じく寺井宏明先生で、参加した子どもは圭恵・朱夏・百恵の三姉妹と百夏の4人。ぬえはこのとき能『嵐山』の着付に取りかかるところでしたが、それでも耳は澄ませていて、これはまたよく笛を鳴らすことができるものだと感心しました。なんせ多少対宿バージョンとは言え、緩急のある「中之舞」を吹くのですから。昨年、寺井先生が30分くらいの稽古で初心者だった彼女たちが笛を鳴らせるところまで上達させたのを見て感心したものですが、今回も破綻なくお役を勤められるところまでもっていったのは稽古のやり方が上手だからでしょうね。子どもたちは寺井先生のお稽古場がある東伊豆まで通って稽古を受けたのだそうです。



連管=朱夏、圭恵、百夏、百恵

聞くところによるとそのお稽古場でも思わず増えた小中学生の生徒は大ウケだったそうで、寺井先生のほかのお弟子さんからお菓子をもらったり、薪能に向けての出演の意欲はいやがおうでも盛り上がっていったのだそうな。いやいや、これは ぬえからも御礼を申し上げねばなりませんな~。それに連管に出演した朱夏と百夏は、『江間の小四郎』でも従者役でしたから、思えば薪能で一番暗記することが多い大変な役だったかも。どちらのお役もがんばったし、舞台の成果も努力が実ったかも。

能楽写真家の山口宏子さんから追加の画像も頂き、今回および前回の記事にも画像を追加しました!



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