ぬえの能楽通信blog

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活動報告書(12/30~1/1)

2014-03-23 05:01:41 | 能楽の心と癒しプロジェクト
能楽の心と癒やしプロジェクト
第19次被災地支援活動
(2013年12月30日~2014年01月01日)


 〔活動報告書〕

【趣旨と活動の概要】

 東日本大震災被災地支援を目指す在京能楽師有志「能楽の心と癒やしプロジェクト」の4名(※注1)は、能楽の持つ邪気退散、寿福招来の精神を被災地に伝えるべく、2011年6月よりすでに16度に渡り岩手県釜石市、陸前高田市、宮城県石巻市、気仙沼市、南三陸町、女川町、東松島市、仙台市、大崎市、および福島県双葉町の住民が避難していた旧埼玉県立騎西高校避難所にて能楽を上演することによって被災者を支援する活動を行って参りましたが、このたびプロジェクトメンバーのうち能楽チームの八田、寺井は、去る12月30日~翌2014年1月1日の3日間に渡り宮城県・気仙沼市の仮設住宅および2カ所の神社にて能楽の上演および舞囃子の奉納を行いました(※注2)。

今回の活動で特筆すべきは、プロジェクトとして2年ぶり2回目の被災地での年越しであることと、なんといっても初めて仮設住宅での炊き出しを行ったことでしょう。年越しは2011年末から翌2012年始にかけて、岩手県釜石市から宮城県石巻市にかけて活動をした経験がありますが(このときは9日間のうちに14公演をしました)、今回の活動はそれ以来の活動になります。大晦日の夕方からの仮設での活動ということで、いつもの能楽の上演やワークショップの活動だけでなく、上演終了後に住民さんと一緒に団らんの時間を設けることが必要で、必然的に食事のご用意…炊き出しをすることになります。今回は上演面では太鼓の大川典良氏、フルートの内野浩乃さん、キーボードの高橋日出子さんの参加を得、また活動コーディネートは気仙沼市民の村上緑さんの献身的な協力を頂きましたが、炊き出しではこれらの方々にも食材購入費の負担から当日の食事の用意、さらに深夜におよぶ活動へのお付き合いまで、金銭面、体力面でも大きなご負担を頂くことで活動を進めることができました。改めまして感謝申し上げます。なお食材面では八田が伊豆で指導を続ける「伊豆の国市子ども創作能」の保護者・大川直子さまより巨大な椎茸を大量に送って頂きましたことを申し添えておきます。ご厚情まことにありがとうございました。

また翌元日には、気仙沼市内2カ所の神社で舞囃子を奉納させて頂きました。気仙沼内湾地区を見下ろし、海運・漁業の神様として崇敬を集める五十鈴神社での奉納は初めてでしたが、市内でこれまで活動に協力頂いた多くの方々も参集されて賑やかな奉納になりました。大島神社ではもうこれで3回目の奉納になると思いますが、元日ということで、やはり多くの参拝客で賑わいました。こちらでは当日思いついて内野浩乃さんのフルートも奉納演奏させて頂き、当地の方々に大変お喜び頂くことができました。

プロジェクトの活動として、期日こそ3日間と短いものでしたが、参加人員や費用面において、おそらく過去最大の規模の活動であったと思います。それほど炊き出しとは大変な作業であることを痛感する活動にもなりました。が、年末年始の活動を気仙沼の住民さんにお喜び頂いたことはプロジェクトとしてもありがたいことで、震災から3年目を迎えつつある現在、プロジェクトの新しい年の始まりになったと思います。

※注1 プロジェクトメンバーは八田達弥(シテ方・観世流)、寺井宏明(笛方・森田流)、大蔵千太郎(狂言方・大蔵流)、小梶直人(同)の4名。
※注2 今回の上演場所は気仙沼市内の①旧唐桑小学校跡地住宅②五十鈴神社③大島神社の3箇所。

【出演者】
八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)
大川典良(ゲスト能楽師)
内野浩乃(フルート)、高橋日出子(キーボード)
村上緑(活動コーディネート、活動全般の協力)
【協力者】
 村上充/旧唐桑小学校住宅自治会/五十鈴神社/大島神社
【主催】
 能楽の心と癒やしプロジェクト

【活動記録】(敬称略)
 12月30日(月)
八田・寺井・内野早朝東京出発、昼頃登米市佐沼の高橋宅に内野を下ろし、昼食後陸前高田市へ移動。

 12月31日(火)
午前中より食材等買い出し
八田・寺井・村上は昼食後会場入り、大川・内野・高橋も午後会場到着

◎「大晦日あったか鍋の集い」
17:00 ~ 旧唐桑小学校住宅(集会所)
能「羽衣」 出演(八田・寺井・大川)
ピアノ・フルート コンサート 出演(高橋・内野)
能「石橋」 出演(八田・寺井・大川)
炊き出し支援:村上緑
終了後 鍋を囲んで住民さんと歓談。年越しにならず解散にはなったが、その後も住民ボランティアの村上充さんらと親しく歓談させて頂き、気仙沼の現状等について意見交換を行うなど有意義な時間。
片づけのあとホテル観洋さまのお計らいにより深夜入浴させて頂き、活動終了のミーティングもここにて。陸前高田の宿舎に戻る途中の路上で新年を迎え、車を停めて新年の挨拶をする。

 1月1日(水)
内野・高橋はこれにて解散予定のところ、内野を撮影班として同行して頂く
◎五十鈴神社奉納 10:00
舞囃子「高砂」 出演(八田・寺井・大川)
気仙沼市内でこれまでに活動協力頂いた多くの方々も参集頂き、大変賑やかな奉納となりました。
終了後大島に渡航
白幡まさえさんほか大島のみなさんのご協力により大島神社まで送迎頂き、楽屋入りの前に亀山からの眺望も見せて頂くことができました。

◎大島神社奉納 13:30 お祓いを頂いてから奉納
舞囃子「高砂」 出演(八田・寺井・大川)
フルート奉納演奏(内野)
フルート演奏は急遽当方からのお願いのところ、宮司さまより快諾を頂いての奉納。元日の奉納ということで初詣客も多く参集され、宮司さまよりの指示により拝殿より屋外に向けて奉納することになる。海を見ながらの奉納は複雑な思いもありながら、大変気持ちのよい奉納になった。

終演後、やはり白幡まさえさんらの協力により浦の浜に戻り、「グリーンアイランドおおしま」にてしばし休憩させて頂き、その後フェリーにて気仙沼本土に戻る。

その後一ノ関駅にて内野は新幹線利用にて帰宅、八田・寺井は東北道経由で深夜に帰京。

【収入・支出】

プロジェクトの活動は基本的に募金によって行われております。近来JIN'S PROJECTさまとの共催の形を取り、同団体の斡旋により企業より活動資金の一部を補助頂くことができておりますが、今回はプロジェクトのみの主催にて活動資金の提供は受けておりません。

募金は基本的にプロジェクトのボランティア活動資金(以下「ボラ」)として使わせて頂きますが、とくに被災地への直接支援を目的にプロジェクトに寄せられた義援金(以下「ギエ」)はプロジェクトとして支援するのに然るべき団体。。被災地に拠点を置き、直接被災者の支援活動に従事することを目的とした、非営利で公明正大な活動が長期に渡って期待できる、信頼すべき団体に寄付させて頂きます。
プロジェクトの活動資金としては、前回活動繰越金として 237,367円(内訳:ギエ204,867円ギエ32,500円)があるほか、今回の前に1名の個人(ヤマザキさま)より活動資金として5,000円を頂戴致し、また活動中に大島神社さまの氏子さま(津島さま)より活動資金10,000円を頂戴致しました。また活動終了の後日になりますが炊き出しの食材について割引による払戻金380円がプロジェクトに寄せられました。よって計252,747円(内訳:ボラ 220,247円 ギエ32,500円)が今次活動資金として計上されております。

これに対して今回の活動による支出の内訳は別紙決算報告書にある通りで、今回の活動終了時の残額は 138,998円(内訳:ボラ106,498円 ギエ32,500円)となりました。これらは今回の活動繰越金として計上し次回活動の資金として有効に使わせて頂きます。今回の支出金額が113,749円と膨大になったのは、ひとえに炊き出しに伴う食材・食器・炊事道具の調達のためです。炊き出しは何度か他ボランティア団体のお手伝いはさせて頂きましたが、プロジェクトとしては初めての経験でした。実際にはプロジェクトのような小規模の団体にとって炊き出しは、いろいろな意味で負担が大きい活動だというのが正直な実感です。活動の成果には満足しておりますが、募金もほとんど頂くことがなくなっている現在、経済的な負担は活動の継続そのものを短命にする可能性もありますし、なにより実演家が炊き出しを行う場合、本人が調理や配膳に割く時間がなく、より多くのスタッフや協力者の奉仕を必要とすることが明らかになりました。

炊き出しは震災当初は自衛隊がこれに当たり、震災の年の夏以後から10月頃の避難所閉鎖~仮設住宅への移行までの間は自治体が負担していました。自衛隊の活動では人海戦術と豊富な機材により避難所個別に温かい食事を提供できていましたが、その後自治体が避難所の運営を担うようになってからは総菜パンやパック飲料など、極端に食事の質が低下したのはプロジェクトのメンバーも実見しておるところです。しかし配食の経済負担は相当なもので、ある被災自治体では毎日1万人分の食料配布の必要があり、被災者1人あたり日額1,000円という予算で炊き出しが行われましたが、それでも日額1千万円、月額にして3億円という巨費が必要だったと側聞しております。

当プロジェクトの炊き出しはそのような大規模なものではなく、仮設の住民さん数十人を対象としたものでしたが、炊き出しは小規模な人数では相当な負担があります。すでに仮設住宅に自治体による食料援助はなく、その必要も差し迫ったものではないと思いますが、ボランティア団体の活動内容により食事提供も必要な場合もあり、そのような場合、弱小のボランティア団体がどのような方法で携わって行けるのか、課題のひとつだと思います。

プロジェクトの訪問公演の支出につきましては節約を旨としております。交通費節約のため、できるだけ深夜割引の制度を利用して終夜運転をして早朝に現地に到着するなど工夫はしておりますが、体力や公演スケジュールによって、必ずしも深夜走行ができない場合もあります。宿泊につきましては、従来は住民ボランティアさま等のご厚意により無料、または安価での宿泊ができましたが、街が落ち着きを取り戻しつつある昨今では旅館などに宿泊する機会も増えてきました。この場合にも宿泊費はおおよそ5,000円まで、素泊まりを旨としており、食費については酒食の区別がつきにくいため、すべて自己負担としております。


【成果と感想・今後の展望】
今回は年末年始を超えた年越しの活動というのがまず第一義に意味ある活動だったと思います。仮設住宅での初の炊き出しは前述のように費用、人材の面で当プロジェクトのような弱小ボランティア団体としては少々無理もあったかという反省もありますが、なにより、未だに仮設住宅で孤独に大晦日を迎える住民さんがおられ、多少なりともその支援が出来たというのがプロジェクトの活動として意味がありました。メンバーや出演者、協力者にとっても、年末年始の活動に参加するということは、取りも直さずそれぞれの家庭に負担をかけ、犠牲を強いての参加だったと思います。しかし、それほど被災地に向ける思いがまだ強く残っている人々があることに安心したのまた事実です。

元朝の五十鈴神社さまでの奉納は、もう丸2年も活動している気仙沼市では初めて本土の神様への奉納でありました。宮司さまのご都合でお祓いは受けられませんでしたが、宮司さまも震災により被害を受けておられる由。。しかしながら気仙沼でこれまでプロジェクトの活動に協力して頂いた方々。。ネットワークオレンジや うを座の関係者さまが多数が参集くださり、とても賑やかな奉納になりました。気仙沼という街に以前から感じている、街全体に広がる人々の絆の厚さを改めて実感した瞬間でもあります。

大島神社さまではこれまでにもう2度も奉納させて頂いている気安さからお邪魔しましたが、宮司さまからは我々が去年は一度も大島に渡っていない事を知らされて愕然としました。大島では復興祈願の花火大会での印象的な上演もあり、それもつい昨日のように思っていたのですが、あまりの不義理に言葉もありません。まずは大島神社さまで装束能の奉納をお約束させて頂きましたが、思えば上演後に感謝を頂いて「また来ますね!」と言ったきり、二度とお伺いしていない仮設住宅や仮設商店街がいくつもあることには心痛めておりました。費用の問題、東京でのスケジュールの問題など難問はたくさんありますし、また一方、被災地区のかさ上げも始まり、災害復興住宅の建設もようやく姿が見えるようになり、今年あるいは来年には仮設住宅や仮設商店街も廃止が始まると思われます。今後の活動場所について、協力ボランティア団体のJINS' PROJECTさんからもいろいろな情報とアドバイスを頂いておりますが、活動の転機の時期が近づいていることを実感しております。

これから震災3年目を迎え、仮設住宅や仮設商店街もいずれは解消されて、いずれは次の段階へと進んでいくことになりますが、我々の活動もその時々の状況に応じて形を変えていくなりの工夫が迫られる日も来るとは思っています。石巻や気仙沼では友人や協力してくれる方も多いので、目先を仮設住宅や仮設商店街以外にも広げていろいろと活動の幅を広げてゆきたいと考えております。


平成26年3月23日







                             「能楽の心と癒やしプロジェクト」

                               代表   八田 達弥

                             (住所)
                             (電話)
                             E-mail: QYJ13065@nifty.com


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1 コメント

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お疲れさんどした (緑さん)
2014-03-23 08:49:10
改めて、この活動はやって大正解だと思いました。


何より住民さん達に喜んで頂けた事、
活動の大変さより
この活動に関わった皆さんの今後の励みになったなったのでは…。


年末年始と
色々ありましたが結果オーライ
って思いませんか?

私にとっては
良い経験でした。
良い活動でした。


改めて
ありがとうございました…です。
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