ぬえの能楽通信blog

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NHKテレビ~元旦の放送の収録

2010-12-15 01:22:58 | 能楽
今日は水道橋の宝生能楽堂で『羽衣』の収録が行われました。

毎年恒例の正月三賀日の能・狂言の放送ですが、来年の元旦は ぬえの師匠による『羽衣・和合之舞』が放映されることになり、今日がその収録というわけでした。

おワキもお囃子方も地謡も当代の第一人者揃い…なんとも豪華な『羽衣』でした。ぬえも地謡の末席を汚させて頂きましたが…ん~、なんとも至福のひと時でした。

今日のスケジュールは、まず午後3時から部分マイクテスト。装束は着けずに紋付のままの上演で、言うなれば申合ですね。この時はシテの呼び掛けから物着のところまでを演じて、その間にマイクのボリュームやカメラのリハーサルをなさっておられました(と思います…そちらは専門外ですんでよく知りませんが…)

それから装束を着付けて、午後5時から本番の収録となりました。この日のおシテの装束を見た ぬえはびっくり。普段は展示には出しても(ぬえの師家の月例公演では必ず面装束の展示を行っています)、ついぞ身につけたところは一度も見たことのない、時代を経た良い装束でした。ちなみにそれをご紹介しますと…腰巻に着けた縫箔は紫地で松に藤の文様。まずは紫地の縫箔というのが現在では珍しいですが、そこに刺繍されている松が相当大きなもので、この文様を縫い上げるのは大変な労力だったことでしょう。袖の部分には金銀で蝶が乱舞しています。

長絹は白地…といってもかなり濃い生成の色で、むしろ鬱金地と呼びたいほど。その背中一面に鳳凰が翼を拡げている文様が金糸で表されています。その鳳凰には首がなく、要するにこの長絹を着たシテが鳳凰であるかのように見えるように文様が配置されていて、もっぱら『羽衣』専用に使われます。この長絹は例が多く、金剛宗家のご所蔵になるもの(これは赤地でしたか…?)や梅若六郎家のご所蔵のものが有名ですね。師家にもこの白地のほか赤地に色糸で鳳凰を表した、こちらは相当に古い長絹があります。

下着としての摺箔や天冠は比較的最近に作られたものでした。本来古い装束と新しいそれとを混在させて着ると、どうもちぐはぐになってしまうものですが(その対策でしょう、古い摺箔も楽屋には用意されていました)、今回ははそれらの装束がケンカすることなく、うまくまとまっていました。あ、鬘帯もかなり時代があるもので、胴箔に、こちらも藤が刺繍されたものでしたね。これは胴箔の金がすり減っているところが良い味を出していて、気品がある鬘帯です。

それにしても緊張した『羽衣』でした。テレビの収録のためだけの上演でしたのでお客さまはおられなかったのに、それでも地謡のみなさんもあとで同じことをおっしゃっていましたね。だって~、もし地謡の一人が大声で間違ってしまって、その瞬間「カット~~!!」なんて言われて撮り直しになったら… (O_o)WAO!!!

お正月は早起きして みなさんでご覧くださいまし~

NHKテレビ 新春能狂言 
平成23年1月1日(土)午前6時35分~7時35分(予定)

能 羽衣 和合之舞

       シテ   梅若万三郎
       ワキ   宝生  閑
       ワキツレ 宝生 欣哉
             御厨 誠吾
       笛    一噌 庸二
       小鼓   大倉源次郎
       大鼓   安福 建雄
       太鼓   観世 元伯

       後見   梅若長左衛門(梅若靖記改メ)ほか
       地謡   梅若 玄祥、梅若紀彰(晋矢改メ)ほか

放送はNHKオンデマンドでのインターネット放送、およびNHKワールドプレミアムにて国際放送される予定だそうです。


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