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「脱原発の思想」井野論文を読んで

2016-12-27 10:30:40 | 日記
先頃、友人の井野博満さん(東大名誉教授)から「1960年大科学技術論争の意義と脱原
発の思想」と題する論文(『技術史研究』現代技術史研究会会誌、2016.11、
NO84 所収)が送られてきました。原発の再稼動が取りざたされている最中、小生
にとってもこの半世紀余を振り返る意味で大変意義深い論考でした。聞けば、寒の入り
始めたこの11月、長野県の電力需給は98%に達したそうです。「喉もと過ぎれば」
何とか、福島原発爆発の頃のことが思い出されました。

井野さんはこの論文の序で、執筆のきっかけとなった背景に山本義隆『私の60年代』
があったことを明らかにしています。60年安保、あるいは70年代の大学紛争を経験
した世代にとって、日大の秋田明大委員長とともに、山本義隆が東大全共闘委員長とし
て発した言動の大きさを意識しなかった者は党派性を問わず少なかったと思います。井
野さんは東大でその山本の4年先達でした。

この論文では、当時山本が誰よりも強調した「外在的批判」と「内在的批判」の思想に
共鳴しながら、学者・技術者として、①1960年代の科学技術論争の経緯と意義を紹介し
ながら、自らが歩んできた立ち居地を鮮明にしつつ、②現代科学と技術が生み出した負
の遺産としての究極のモンスター、原発の廃絶への不可避性を論及しています。詳しく
は全文をお読みいただけたらと思いますが、ご参考までに、以下その概要(目次)と連
絡先を紹介しておきます。(連絡先:現代技術史研究会、矢作正 東京都江戸川区松江
4-16-18 E-mail m97yhg@y5.dion.ne.jp)



Ⅰ 1960年代科学技術論争の意義
1. 60年安保闘争
2. 三つの戦後精神と60年代前半の科学論・技術論
3. 同時期の現代技術史研究会の動き―「技術者の権利宣言」をめぐる論争
4. 東大闘争期の科学論・技術論に関する文書
5. 内在的批判・外在的批判
6. 1970年代への思想的影響
7. 技術論争の整理
Ⅱ 脱原発の思想
8. 原子力をめぐる戦後の運動
9. 脱原発の思想
(1) 原発技術を根本から考え直す
(2) 不確実性は実証科学の限界の現れ
(3) 科学技術への批判はその担い手への批判とセット
(4) 内在的批判者たちと原発業界
10.原発の安全性をめぐる争点と課題

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