ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

コ・パンガン・・・4  L・・の空間

2015-10-30 | コ・パンガン

翌朝イーストビーチへ買物に行く、島の地図はフロントで貰ってある。昨日ボートで寄ったハドリンビーチの方へ向かって歩いていると、小さい島だが迫り出した中央の山に塞がれる。道は山あいに沿って右へ曲る。抜けると小さな湾が広がっていた。山肌までバンガローが立ち並ぶ。湾の端にわらぶきのような建物がある、目的のレストランだ。中は広い、昼食前の時間帯なのだろうか静かだった。カウンターへ行きジミーはいるかと聞くがバンコクへ行って不在だと言う。また出直すか、帰ろうとすると奥から他の奴が出てきた。Lsd-200B、ガンジャ1袋100Bだ、ゴルビーはもうない。どんなLsdか分からない、効き方を知るため2枚としガンジャ1袋計500Bで買う。その場で水を貰い1枚食べた。
イーストビーチへ行く途中ちょっと開けた場所に商店などがあるのに気づいていた。帰りそこで蚊取線香、ろうそく等の日用品を買う。本来ぼくは方向音痴なのだ。小さい島、車などないから交差点はない、複雑な路地もないのに道に迷ってしまった。うろ々しているうちにLが効きはじめた。やっと山あいを抜ける。目の前にビーチが広がり1軒だけ流行りそうにないレストラン、と言うよりコールド・ドリンクショップがあるのは知っていたし、Lを食べた帰りに立ち寄るつもりだった。
浜辺に置かれた丸いテーブルと椅子、そのひとつに座って海を見ていた。高い椰子の木の葉が風に揺れ真っ白い砂浜にライトブルーの薄い波が寄せる。コーラーを飲みながら飛びはじめたぼく自身を感じていた。創られた音は自然の奏でる世界を決して超えることはないと知った。白いヘロイン色の砂を手にとって何故だか微笑んでしまう。そこは間違いなく楽園だった。今まで体験したことのない世界に意識は流れるように空ろだ、嗚呼、このまま死んでもいいと思った。ぼくは自然に同化していく。椰子の木にハンモックを吊って宙に揺られているぼくが見えてきた。ふっと笑う。
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第1話 山のアシュラム  マッサージ師クマル・・・1

2015-10-29 | 第1話 クマルとサソリ


ネパール人のクマル 後ろはアシュラムのメーンホール 毎日ここで瞑想とハタヨガの指導を受けた

 ヨガ・アシュラムに入って2週間が過ぎただろう。アシュラムの日課は日曜日を除いた毎日、夜明け前と午前10時から、それと日没までの3回、各1時間の瞑想である。それともう一つは午後のハタ・ヨガ(エクササイズ)である。この4つは特別な事情がない限り参加するよう一応は義務づけられている。アサナという瞑想をするポーズが何点かあるが同じ姿勢で1時間、瞑想を続けるのは中々に難しい。自分に合ったアサナを選ぶ必要がある。瞑想の姿勢をしたとき頭から背骨が真直ぐに立たなければならない。しかし日常生活では姿勢がどちらかに傾いていたり、体がねじれていたに違いない。1週間ぐらいは真直ぐに坐ることが出来た、がそうする為に背中の筋肉は無理をしていたのではないだろうか。その後、瞑想の姿勢をすると背骨の両側から背筋全体が痛くてとても瞑想どころではない。部屋へ戻るとベッドの上に丸い薬ビン(正露丸)を置いて横になり背中を押し当て転がって一人でマッサージをしていた。そんなぼくを窓の外から不思議そうな顔をして覗いている奴がいる。何をやっているんだ、ジャパニーは?奴の顔にはそう書いてある。クマルである。
 ネパール人クマルはアシュラム内の庭や花壇の手入れを仕事としている。何度か見かけたことはあるが話しをするのは初めてだ。まあ話しをするというよりは殆どボディー・ランゲジーだ。
「ジャパニー、マッサージ、マッサージ~?」と言いながら彼は手で揉む仕草をする。
「おぅそれだ、マッサージ、それだよぅ~」
指で彼を差しながらぼくは起き上がる。
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第5話 両替ババ・・・3  ババの苦難

2015-10-28 | 第5話 両替ババ

つかつかと兄ちゃんの店へ行くとババは下流の方を指差して何か言っている。
「もうちょっと離れた下の方で店をやれ、こう近くでやられたら俺は商売にならない」
とでも言ったのだろう。兄ちゃんはババに逆らわず店を下流へ10mぐらい移動させた。だが今回ババがとった作戦は全くの誤りではないのか、頭に血が上ってババは状況を理解していないように思える。
  家族そろって聖地巡礼
 貧しい村から聖地巡礼に行くことなど一生にそう何度もあることではない。巡礼へは村の親族一同が揃ってお祭り騒ぎで出発する。
がその前に村の爺ちゃんから巡礼地の話や旅先には悪い奴がいるから気をつけろ、と注意などを聞いてくる。爺ちゃんの話はリシケシ駅に着いた時の細かい注意から寺院には10パイサの賽銭をあげろと続き、そしてラムジュラの上から見た大きな魚の話になると爺ちゃんの興奮も最高潮だ。
「ラムジュラから下を見てみろ、こげな大きな魚が泳いどる」
口を尖らせ両手を広げて爺ちゃんの熱弁が続く。
「そげなのが本当におるのか、爺ちゃん?」
「あぁおる、こげん大きい」
寺院のお賽銭とお魚に供物をやることを忘れるな、と爺ちゃんの話しを聞いてリシケシへやって来た。ガンガ河畔の小道をぞろぞろと歩いていると、
「父ちゃん、爺ちゃんが言うとった魚の餌が売っとる」
と言うことで兄ちゃんの店で魚の餌を買い、ぶらぶらと餌をぶら提げたお祭り騒ぎの一行が両替ババの気持ちなど知らないで目の前を通って行ったのではないだろうか。リシケシ駅から歩いて来ると兄ちゃんの露店が先に目につく、どうせ兄ちゃんを移動させるのだったら、ババより上流にしておけば良かったのかもしれない。

童謡 木枯らしのメロディーがスピーカーから流れてくる 
小型のタンクローリーが灯油の配達を始めた もう冬が近いのか?
先週は最高気温23~25度 毎日湾へ釣りに行き顔は漁師焼けだ
北西の強い風が吹いた 明日 風が治まるだろうか イカ釣りはどうなる・・・

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第1話 山のアシュラム  サソリ・・・2

2015-10-27 | 第1話 クマルとサソリ

 サソリはアフリカに生息するものだとぼくは固く信じていた。突然こんなところに現れてもらっては困る。ぼくは度肝を抜かれサソリがベッドに上がってくるのではないか、とキョロキョロ周りを見回す。何とかしなければ、これではトイレには行けないし、ベッドで安心して眠ることも出来ない。ぼくはベッドの上でサソリの発音を和英辞典で調べた。長屋の奥にインド人が住んでいる。彼はハタ・ヨガのインストラクターだ。彼なら安全に処理してくれるのではないだろうか。ぼくは彼の部屋へ行き状況を説明し助けを求めた。ノープロブレム、彼はおっちょこちょいの一面はあるが人柄は悪くない。ぼくについて部屋に入った彼に懐中電燈を渡すとぼくは逃げ腰でベッドに上がった。ぼくが指し示す場所へ、パタパタとサンダルの音をさせながら無神経に彼は近づく。彼はしゃがみ込んで木の窪みに懐中電灯の光を当て、その先をじい~と見ているかと思ったら、いきなり奴はびびって2~3歩後ずさりをした。
「やばい、こいつに刺され3日間も高熱にうなされた」
「どうする、サソリがここにいたらぼくは困る」
うぅんと唸っていたが、奴は掃除用の藁ほうきを持って来ると
「エイー」
と、ばかりに窪みからサソリを追い出した。サソリは驚いてかトイレとシャワールームがある方へ、尾っぽを跳ね上げ逃げて行ってしまった。
「どうだ」と奴。
それ以後トイレが恐くて安心して使えなくなりぼくは便秘に苦しむ事になる。

半月か やっと雨 毎朝 湾へ釣りに行っていた 最高気温25度 潮焼けしたおっさんの顔になった
イイダコと甲イカのシーズン イカを捌いて刺身 ゲソはバター焼き 呑んべぇ~Tさんと呑む
うまかぁ~ねぇ~ うん うまかぁ~ みんな湾の有り難い恵みに感謝・・・
寒冷前線が南下 気温は下がる これから甲イカが美味しくなる 

 
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保釈・・・3   大使館からの返信

2015-10-26 | 5章 デリー中央刑務所  保釈


   大使館からの返信(22・Aug・1995)
22日、あなたの手紙を持参したミス・マリーに会いました。あなたの要求について伺いたいので、至急ご返事を下さい。
一、要求の五万ルピーの使途は。
二、本邦からの送金、五千ドルの使途は。
三、裁判の進行状況と保釈の件。
お返事をお待ちしております。
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第1話 山のアシュラム  サソリ・・・1

2015-10-25 | 第1話 クマルとサソリ

アシュラムに入ったばかりの頃、ぼくは古くて狭い5軒長屋の宿舎に入れられていた。ある夜、ベッドに坐り机の上に開いたヨガの本を読んでいた。3月中は寝る前に扇風機を止めることもあったが4月に入ると扇風機は回り続けている。アシュラムが出版している英文のヨガの本を英和辞典を片手にぼくは悪戦苦闘をしていた。その時、机に向っているぼくの右目の端が何か動く物を捕らえた。前にある机の左端から右斜め後ろへ床の上をすぅ~と動く。扇風機の風が糸くずを動かしたのだろうか。動いた物はどこへ行ったのか、ちらっと見るとトイレとシャワー室へのドア辺りへ行ったようだ。ドアを囲む木材もドアの下部も朽ちかけその窪みは暗い。何となく気になったぼくは懐中電灯を手にしてベッドから降りた。宿舎は4・5畳ぐらいの広さで入口の左側に壁に沿ってベッドと机が置いてある。トイレとシャワーは右側のドアから入るが隣の部屋との共用になっている。暗い窪みに懐中電灯の光を当てながら近づいていく。窪みに何か黒いものがいるようだ、が朽ちた木の隙間と一体化して何だかはっきりとは見えない。なおも近づきながらライトを当て左手を出そうとした瞬間、黒いものがビクと動いた。ぼくは手を引きじぃっと見ていると黒い形をしたそれの全体像がはっきりと見え始めた。両手を床に着け尾を跳ね上げ逆立ちをしている濃褐色の生き物だ。その生き物もぼくを見ているのではないだろうか。図鑑や映像による予備知識はある、がそれと当面している現実の出会いとの認識の照合確認に数秒の時間が必要だった。これはゴキブリでもムカデでもない。これがサソリという生き物なのか?
「どひぇ~~~~~」
ぼくはベッドに飛び乗った。
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ノープロブレムと不条理・・・9

2015-10-24 | 第3話 出店のババ

 ババは吸い込んだ煙を男の頭の上へ向けてはき出す。男は「ど~れ」と言ってババからチラムを受け取ると、がぼっとチラムを吸いやがる。ぼくはじろじろと男を見ていたが、どう見てもこの男が来ている服はポリの制服だ。しかしチラムの扱い方、吸い方は素人ではない。ぶおっと口から煙をはき出すと
男はぼくの方を向いて「ほれ」とぼくにチラムを渡そうとする。ぼくは手を引っ込めた。これは罠ではないのか?奴からチラムを受け取ったらまずい、まずいに決まっている。ぼくが奴からチラムを受け取り吸ったところで御用だと捕まるかもしれない。ポリは自分で吸ってぼくを安心させ逮捕へ誘導しているのではないのか。ぼくはボスと言ってパスした。可笑しなジャパニーだな吸わないのかという顔をして奴はババにチラムを渡した。お前、何で吸わないのかとババも不信そうにぼくの顔を見る。ポリは2服すると「さて」と言って立ち上がりババと二言、三言話すと町の方へ歩きだした。
 しかし何なんだあの野郎は、本当にポリなのか?ぼくはほげっと奴の後姿を見送る。早くチラムを回せ火が消えるとババの催促を聞いてぼくは我に返った。奴がいなくなってやっと吸う気になったぼくはババから回されたチラムを持っていた。あのポリの気合が入った吸い方に気後れしたぼくは少し落ち込んでいる。
「あの男は本当のポリかババ?」
と聞くとそうだと言う。インドとはおかしな国だ。ポリが制服を着て堂々とチラムを吸う。その制服を着た全国組織の中央であるデリー警察のポリの手によって、ぼくは2年後デリーで逮捕されることになるのだが、こんな不条理があって良いのだろうか。ノープロブレムのインドというのはこういう事なのか。ぼくは夕方の瞑想をするためアシュラムへ向かった。
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第14話   旅人とマラリア・・・4

2015-10-23 | 第14話 旅人とマラリア

朝、W君の高熱は37,5度まで下がっていた。もう心配することはない、峠を越えた。昨夜の記憶はおぼろにあるのだろうか、彼の表情はちょっと空気が抜けた風船みたいだ。オーナーの親父が薬の飲み方や食事についてあれこれ教えている。ぼくはガンガ河畔を散歩しながらチャイ屋へ朝食に行く。死体焼き場には火がちょろ々と燃え煙が辺りに漂う、その横をすり抜ける。
通りには沐浴に向かう多くの巡礼者とガンガの聖水を持ち帰るインド人の流れがある。死は日常生活と平行しその空気は淀み重い。ぼくがベナレスを好きになれないのはそのせいかもしれない。
しかし今回はベナレスの神々に感謝する。一人の日本人の命を救ってくれた。オーナー、息子、ドクターそれと大学病院の医局、すべて幸運に恵まれた。
元気になったW君と別れる。ぼくは2週間のトランジット・ビザしか持っていない、2週間以内に第3国へ出国しなければならない。朝、8時ベナレス発のバスに乗ればゴラクプールには昼頃に着く、バスを乗り換え約1時間で印・ネ国境の町スノウリだ。

ボーダーで1ヶ月のビザを収得しポカラへ 10月下旬 マジックマッシュルームはあきらめていた が幸運にも2回フレッシュなものが手に入り飛んだ ついでにジャンキーからコ・パンガンの情報も得た
年内 インド ネパールのビザは使い切って滞在不可 バンコクしかない


1970年代のポカラ レークサイド のどかだった
 
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第5話  両替ババ・・・2  ババと乞食と兄ちゃん

2015-10-22 | 第5話 両替ババ


(photo by M Sakai) 


 インドの乞食は気楽そうにみえるが乞食なりに苦労があるようだ。それはどこにでも勝手に坐って商売をして良いわけではない。バクシシとして実入りの多い場所がある、そこを中心にしてそれぞれの乞食が坐る場所と間隔が決められている。稼ぎが多い場所に10人の乞食が集まってしまえば稼ぎが分散する。それ以上に、その場所を持っている乞食の権利は守られない。そうならないのは乞食の協同意識があるからだろう。新参の乞食が来て乞食と乞食の間が広いから坐ろうとしても追い出される。その距離は乞食達が生きていく為に必要なバクシシを得られる間合いなのだ。新参の乞食には列の最後尾が与えられる。その場所で我慢して順位が上がるのを待つか流れの乞食を続けるか、乞食の世界も厳しい。
リシケシのガンガは緑にも青にも見える。緑はヒマラヤの山を写しているのか。
 両替ババに強力なライバルが現れた。別館下の露天はババと出店のババの2人だけだった。お互いの取り扱い商品が異なっているので問題はなかった。それに異業種であれば露店は増えた方が集客という観点からみても望ましい。今度、新しく露店を始めたのは20代の兄ちゃんだ。ババの右側つまり下流へ10mぐらい先の場所に開店した。兄ちゃんが売っているのは1種類だけで魚の餌だ。これにはぼくも驚かされた。がそれ以上にババは苦難のどん底に突き落とされた。魚の餌はババの主力商品だからだ。1ルピー両替しても10パイサの利益しかない、10人両替してもやっと1ルピーだ。ババは餌袋を持って「これが1日に10個でも売れたらな~」と何度呟いたことだろうか。ババのその主力商品と競合する露店が鼻の先に出されたのではたまったものではない。兄ちゃんの店に数人の客が立ち寄るとババはもう自分の商売など目に入らない。じっと兄ちゃんの方を見て、両替と言う客の声も聞えない。これはやばい事になりそうでぼくは心配になってきた。兄ちゃんの店で買ったビニールの餌袋をぶらぶら提げてババの目の前を通る。それをじっと睨みつけていたババは我慢の限界か頭に血が上ってがばっと立ち上がった。
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保釈・・・2     大使館への手紙

2015-10-21 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

 8月21日(月曜日)
   大使館宛の手紙
今回お願いしたいのは次の2点です。
一、金額五万ルピーをこの手紙を持参した下記の者にお渡し下さい。
  ミス・マリー
二、大変申し訳ありませんが日本からの送金5000㌦お願いします。
裁判の方は私が考えていた程には進んでいません。まだハイコートにも入っていない様です。ですが、ここ1ヶ月以内には何とか此処から出られる様にしたいと考え、その為の方策を進めています。


「俺が出たら1ヶ月以内にお前をリリースさせる」フィリップスとの付き合いは長い。
奴はぼくへの信頼を裏切ったことは一度もない、奴を信じる。
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