ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

マラリア・・・1

2022-09-06 | 心の旅・追想
 ぼくはいつもひとり旅をしていた。ビハール州で日本人のW君と1週間程旅をしたことがある。ビハール州はマラリアの危険地帯である。
仏教の聖地ブッタ・ガヤには仏教国の寺院が点在している。ぼくらはチベット寺に宿泊の許可を求めた。日本寺があるのに、と一言嫌みを言われたが泊めてくれた。
モハンの茶屋で晩飯を食べ終えたころW君がやって来た。メジテーションをしていました。窓が開いていたので蚊が入っていると思います。日本製の蚊取線香があるので使って下さい。
蚊は必要な量だけ吸えば飛んで行きます。小さい斑点が残るだけです。叩こうとすると蚊は自分を守るため痒くなる物質をだして逃げます。
「なるほど、そういう事か」
日本製の蚊取線香は凄まじい。煙を出して十分もしただろうか?広げた新聞紙の上にぽたぽたと蚊が落ちてきた。新聞紙に集めた数匹の蚊を潰すと今吸ったばかりの鮮血だった。その中のひとつの蚊がマラリアを媒介しW君に感染させていた。そのことをぼくらはまだ知らなかった。
(ブッダ・ガヤ)

  Photo by M Sakai
 翌日、早朝の列車でガヤからベナレスへ移動する、その為ガヤ駅近くに宿をとった。W君を夕食に誘ったが、食欲がないと言う。食事を終え駅で急行乗車券2枚を買ってホテルへ戻った。ドアを開けると咽かえるような蚊取線香の煙、その中で毛布に包まって横になっているW君。煙が息苦しくてぼくはチャイを飲みに外へ出た。
 出発の朝。準備をしていたぼくはW君に声を掛けた。 「ぼくも出発します」
もし同行者の足を引っ張るようなら、ひとり残って体力の回復を待って旅を続けなければならない。彼のバックパックはどうみても20kgはあるだろう、弱った体力を苦しめる。ものを所有することから人間の苦悩が始まる(ブッタ)
救いを求める甘さがあるなら旅は続けられない。誰も救いの手を差し延べはしない。旅は心の旅の中から生まれる。
ガヤ~ベナレスは約4時間の列車の移動だ。大混雑で難儀するインドの列車しか知らないぼくにとって初めての体験になった。車中はガラーンとし、W君は風邪でしょうか?と言いながら風邪薬を飲んで横に置いたバックパックに身体を寄せた。

コメント
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