ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

その後    帰国・・・4

2019-04-24 | その後・帰国

 デリーからカトマンズへ逃亡して2週間が過ぎている。インドかネパール警察が機内の前座席からパスポートのチェックを始めるのではないかという不安が頭の中にあった。だが飛行機は定刻通り滑走路へ向かってゆっくりと走り始めた。此処にぼくの逃亡劇は終った。カトマンズ盆地の上空を右旋回しながら上昇を続けていたジェット機は安定した飛行にはいったのだろシートベルトとノースモーキングのサインが消えた。後部の喫煙シートにぽつりと座ってタバコに火を点けた。身体の中から緊張感が弛んでいくのが分かる。
もう終ったのだ。すべて終ったと自分に言い聞かせた。しかし成功したにもかかわらず晴れやかな気分にはなれない。欲しかった自由をやっと取り返したというのに何故か重い荷物を引きずりながらの帰国のような感じがする。それはまだスタッフと完全に手が切れていないからだ。奴がぼくの身体の隅々に種子を残し燻ぶり続けている。空港の搭乗ロビーのトイレで1パケを鼻に入れた。財布の中に隠して持っている残りのパケは関西空港に着く前に機内でスニッフする。
 もしスタッフを断ち真面目にカトマンズの外国語学校に通っていれば、今頃は2学年の後半に入り勉強したかったサンスクリット語が視野に入っていただろう。カトマンズの旧市街アッサン・トーレ辺りで土産物店でもやりながらネパールでのんびり生きようと思っていた。そんな夢も消えてしまった。日本で生きることは何も考えていなかった。一から出直す計画を練らなければならない。生き続ける価値を見い出すことが出来るのだろうか。
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