ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

逃亡・終章    エピローグ・・・4

2018-12-20 | ドラッグの深い闇・終章

この手紙は1994年9月30日付けでカトマンズの日本大使館に届いていた。ぼくがカトマンズを出発したのは10月15日頃である。最後のスタッフ150gを買う為に。彼女はフレッドとスタッフ150gを持って10月初めカトマンズへ向かう準備をしていた。二ナからの手紙が届いていたことをぼくは知らなかった。
 ぼくはこの手紙の存在を知らす読まなかった1年数ヶ月のドラマを生きてきた。もしデリーへ出発する前にこの手紙をぼくが読んでいたら、異なったドラマがぼくに用意されていたのだろうか。それも知ってみたい気がする。だが94年9月から96年1月は既に過ぎてしまった。

 ジェット機はランディングを始めた。機体がふわりと浮くと上昇しながらカトマンズ盆地の上空を旋回する。カトマンズは闇に覆われその中にキラリと光る小さな星のような灯りが残されていた。目を瞑るとぼくは遠い闇の向こうへ上昇する。ジェット機は深い闇を目指して飛んだ。闇が闇の粒子を吸引し濃密な闇を形成する。めくるめく闇の無数の粒子が舞う。深いドラッグの闇の中でぼくは胎児のように自らを抱き落ちた。今、ぼくはジェット機に乗って闇の終焉に向かって飛び、深いドラッグの闇を突き抜ける。夜明けは闇と光の狭間に生まれる。オレンジ色の太陽は闇を切り裂き輝く光の粒子を放出する。生きとし生けるものはその光に輝く。深い闇を歩き続けたぼくは舞い落ちる光の粒子に包まれる。さようなら、ぼくの深いドラッグの闇よ。

ジャンキーの旅・・・終わり

その後について、精神科で禁断症状、薬物依存症の治療を受け約一年後社会復帰する
当時のノートはある 200枚ぐらいになるだろう が今のぼくには書き続ける
精神力がありそうにはない
今までも、今も読んでくれている人は”書け”と言うだろう 
どうするのか 今は分からない 雨が降っている



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

逃亡・終章    エピローグ・・・3

2018-11-14 | ドラッグの深い闇・終章

  親愛なトミーへ

ハーィ トミー、この手紙を書いているのが誰だか分かる?
わたし、二ナよ、デリー、メインバザールから。
いかがお過ごしですか、カトマンズの生活はどう?たぶん上手くいってると思うけど。
わたしはとても元気よ、でも今度、ホテルを替わったの。前に住んでいたホテル(ピクニックGH)知ってるでしょう、そこの洗濯女にお金を盗まれたのよ、全部よ、それでホテルを替わったの。今、その新しいホテルから手紙を書いている、というのはトミーに新しいアドレスを早く知らせようと思ったから。今、フレッドとカトマンズへ行く準備をしているの、当然、ベスト・スタッフを持っていくつもりだけど。トミー、この手紙を読んだらすぐ新しいアドレスへ手紙をちょうだい。まだカトマンズにいるのでしょう?その事を早く知りたいの。10月初めにスタッフ150gを持ってカトマンズへ行く予定だけど、もしトミーがデリー来る予定があるのだったらそれも知りたいの。とにかく早く手紙をちょうだい待ってるわ。
それでは身体に気をつけてね。
もう一度、言うけどすぐよ、すぐ連絡ちょうだい。           二ナより


暖かい初冬 海水温が下がらない イカ タコはぼちぼち釣れている
ナマコの姿は見えない ワカメの新芽も遅れるかもしれない
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

逃亡・終章    エピローグ・・・2

2018-10-17 | ドラッグの深い闇・終章

「カルロスはどこで死んだんだ。教えてくれマリー」
「知りたいのトミー?じゃ教えてあげるわ。トミーあなたが逮捕されたあの部屋の中よ。彼はベッドからずり落ち喉に嘔吐物を詰まらせて死体で発見された。3階に住んでいたのはカルロス、あなたとキシトーの3人だった。わたしが階段を上っていくとスタッフの煙がいつも廊下に籠っていた。あなたがカトマンズへ帰った後、彼は死にキシトーは逮捕された。トミー、何故あなたは戻ってきたの?カルロスのせいかもしれない。彼はトミーを死なせたくなかったのよ、だからあなたを呼んだんだわ。あなたは逮捕されてよかったのよ。そうでなければあなたもカルロスのように死んでいたわ」
クリスも死んだわ。ナンシーはキシトーと何処かへ消えてしまった。わたしはわたしで生きていくわ。トミー、日本へ帰ったらちゃんと生きるのよ。お別れねトミー・・・。
ありがとうマリー、ぼくは生きていくよ。
ぼくを乗せた車はカトマンズ郊外をトリブヴァン国際空港へ走り続けた。5年間のぼくの旅は終りを告げようとしている。



イカ タコ釣りのシーズンに入った 昨日の釣果は甲イカ1枚 イイダコ10匹
晩酌のつまみはイカ刺とタコの煮つけ すでに用意してある
湾の恵み うまかろぅ~ばいぃ~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

逃亡・終章    エピローグ・・・1

2018-09-14 | ドラッグの深い闇・終章

「トミーお願いドアの鍵を開けて。わたしシックなの少しで良いからスタッフをちょうだい」
「二ナ、知ってるだろう。ぼくはスタッフをやめたんだ」
「フレッドがスタッフを持っているわ、彼から貰ってきて、早く、早くお願いだから」
「シックなんだ俺も、スタッフはない」
「カルロスは死んだわ、スタッフのやり過ぎよ」
「トミー助けて、助けてトミー、スタッフをちょうだい、早く、お願い・・・」
「スタッフはない、今夜だ、今夜手に入る。それまでスタッフはない」
「トミーどうして逃げるの、わたしを見捨てないで、助けてトミー、お願いだから・・・」


本文と釣り 分裂症的文章 それがおやじの精神的心理なのかもしれない




厳しい猛暑と熱帯夜が終わった いよいよ秋のチヌ釣りシーズンだ
ポイントへ行き餌や釣り具を買った 3000円也 ちょっときつい出費
10月後半からイカ タコ釣りに入る それまでのつなぎだからしょうがない
撒き餌の効果が表れるのは1時間後ぐらいから 7時過ぎ浮きが沈んだ
掛けた 強い引きで調整しているロッドから糸が出ていく 奴も逃げ道は知っている
あかん そっちはあかんのや 切られてまうで ロッドをちびっと絞ったらプッツンや
もうあかん 終わりや 片付けようか そう思っていた9時過ぎに掛けた
悪戦苦闘 42㎝のチヌを釣り上げた おまけに20㎝のアジ1匹
晩酌はアジとチヌの塩焼き チヌの刺身 うまかぁ~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

逃亡・終章・・・15    トリブヴァン国際空港へ  

2018-08-17 | ドラッグの深い闇・終章

  帰国の日、中央郵便局と日本大使館へ行きぼく宛の手紙を調べた。大使館に二ナからの手紙が届いていた。フレッドがぼくに言っていた手紙とはこのことだったのか、気にもせずその手紙をウエストバッグに入れてスンダルの店へ最後の別れに行った。後日、ぼくが逃亡していたことがカトマンズにも知らされるだろう、彼は警察や出入国管理事務所で公然とぼくの手助けをしたことは知られている。彼に迷惑がかからなければ良いのだが。ぼくは彼に心からお礼を言った。「またカトマンズへ戻ってきてくれるんでしょう。待っていますから」ぼくの逃亡が過去のものとなり危険がないとスンダルが判断したら手紙を下さい。必ずカトマンズへ戻ってくる、とぼくは最後まで自分の真意を彼に伝えなかった。心苦しくて彼を直視できない、だがそうとしかぼくには言えなかった。
 夜10時にトリブヴァン国際空港へ出発する。3階のベランダから下を見るとマネージャーに頼んでおいたタクシーが既に停まっていた。ベランダに立って右から左へフリーク・ストリートを見た。1970年代から変ってない、これからも変らないだろう、この街は。いつも同じ姿でぼくを迎えてくれた。帰国の準備はすべて終っている。バッグをさげて1階へ下りるとクリシュナと運転手らしいネパール人がテレビを観ていた。マネージャーはもう帰ったのだろう、クリシュナにキーを渡すと、ネパール人は「行きますか」と日本語で言って立ち上がり車へ戻った。外で車のエンジンを掛ける音を聞いてぼくはホテルを出た。後部座席に座りドアを閉めると車は夜のカトマンズを走った。積み木のおもちゃのようなカトマンズ。車はあっという間に街を抜け空港への道路を走っていた。ぼくは振り返り遠ざかるカトマンズの街の小さな灯りを見た。その灯りを覆う闇の遠くにデリーがある。


猛暑が続いた 台風15号が通り過ぎ大陸高気圧から涼しい北風が吹いている
まだ秋の足音は聞こえない

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

逃亡・終章・・・14    最後に相応しいトリップを

2018-07-03 | ドラッグの深い闇・終章
 
 ホテルの通路から中庭を通って階段を上る前に受付けカウンターを見るとマネジャーがいた。このホテルにチェックインして7日が経っていた。宿泊者名簿にはまだ何も書いていない、それでも文句の一つも言わない。今日やっとパスポートとビザ番号を記入して溜まった宿代を払った。久し振りにホットシャワーで身体を洗った。下着は下痢で汚れ緊張の日々でまた痩せたようだ、がもう心配する事はない。ホットシャワーが身体を解していく、心地よさに包まれた。
 ライターの火に焙られてアルミホイールの上をスタッフが転がる。その煙を胸の奥に吸い込んだ。こんなにリラックスした気持ちでチェーシングをするのはデリーを出発してから初めてだ。もうデリーが遠くなってしまったように思われる。マリー、二ナ、フレッド、フィリップス・・・皆、どうしているのだろうか。マリー、ぼくはやったよ、何もかも上手くいった。長い、長い1週間だった。2回、3回とチェーシングを続けた。今日は強く深くスタッフのトリップをしよう、最後に相応しいトリップを。


2~3日前から住宅敷地内に見慣れたバイクがある 
買い物に行こうと1階から出た所でバッタリ釣り仲間のSさんと会った
引っ越してきた と言うのに浮かぬ顔 前の家に置いてある荷物を3日以内に空にせなあかん
高齢のお母さんの入院 その後お亡くなり入院費や葬儀費用で貯えが乏しい 予算は3・5万円
帰国後 精神科で1年薬物治療を受け社会復帰したのは引越し作業の現場責任者 10年勤めた
ぼくの退職後の責任者はU君 お願いするしかない 7月2日 午後3時ならトラックを回せる
短時間で作業を終わらせる為に1日Sさんと準備をした 2日4時過ぎ引越しは終った
Sさんとお姉さんは部屋の掃除を済ませ不動産屋の確認をとり鍵を戻した これで終わりだ
金麦6本を持ってきてくれた やったよぅ~とSさんの安堵の顔 疲れたねぇ~
3日 台風7号が九州北部に接近している
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

逃亡・終章・・・13    21日 00・05

2018-06-06 | ドラッグの深い闇・終章

代理店のマネージャーは日本行きについては採算面での問題があったにしてもキャンセルは絶対にない、と断言した。彼は信頼できる、そうぼくは確信しロイヤル・ネパール航空に決めた。それと支払いの事もあった。ネパール航空だったらぼくの場合特別だがルピーで払うことが出来る。フライト・タイムは21日00・05分だが21日中に帰国すれば問題はない。もしキャンセルという最悪のシナリオになったとしても朝のフライトでバンコクへ飛び乗継便を探せば何とかなる、手持ちのドルで足りるだろう。チャイを飲んで待っている間にバイクで出かけた若いネパール人がエアーチケットを持って戻って来た。エアーチケットを受け取るとぼくはスンダルのバイクで送ってもらいホテルへ戻った。


2勝10敗
おいちゃん この数字はなんね
これかぁ 2勝はやなぁスズキ2本釣った
ほな10敗はなんね
それやがなぁ~ 大きな座布団サイズのエイがやなぁ 喰いやがった
きたどぅ~ 竿先ががっくり曲がっとる 糸を巻いては出ていく
期待を持って見ていた釣り仲間 が釣りのやりとりを見て白けてしまう またエイかぁ~
Dさんが鋏を持ってきて これで糸を切りない
釣り針も仕掛けもエイに持って行かれた
赤字やねぇ~ おいちゃん そんなこともあるたい 釣りやから・・・
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

逃亡・終章・・・12    迷い

2018-05-29 | ドラッグの深い闇・終章

有効なビザが記載されたトラベル・ドキュメントを持ってぼく達は旅行代理店へ行った。ぼくは迷った。ロイヤル・ネパール航空の次のフライトは21日しかない。ぼくのトラベル・ドキュメントの有効期限は21日までだ。バンコック経由で1日でも早く出国した方が良いのか。ロイヤル・ネパール航空が予定どうりに飛んでくれるのであれば料金も安いし時間的にも楽になる。心配なのはフライト・キャンセルだ。予定搭乗者が確保できないと中小航空会社がよく使う手口で、それをやられると困る。ビザは24日まで有効だがトラベル・ドキュメントは21日を過ぎると無効になる。無効な渡航書に記載されたビザも当然無効になるだろう。

長い休みだった 週・1回程度なら短い文章ぐらい書けるかもしれない
朝から雨が降っている 昨日 九州北部に梅雨入りの発表があった 早い梅雨入りだ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

逃亡・終章・・・11     ビザ

2018-03-05 | ドラッグの深い闇・終章

 午後3時。カトマンズ出入国管理事務所でぼくはトラベル・ドキュメントを受け取った。ビザの有効期限は今日17日から24日までの1週間だがそれで十分だった。



朝から雨が降っている 昨日は気温が20度まで上がった 日曜日ということもあって 
あっちこっちでワカメ採りをやっていた 豊かな湾だ ぼくはもう冷凍保存している
4月に入るとたけのこ堀 わらびやせり採りが忙しくなる
海面温度は上がっているのだろう クラゲがふわふわと浮いている
スーパーでは甲イカ1枚が900円やでぇ~と言っていた
水温が上がればイカは湾に入ってくる 
今年はまだイカ刺は食べとらん とぼやく吞んべぇ~おやじ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

逃亡・終章・・・10   追記 大使館について

2018-02-28 | ドラッグの深い闇・終章

   デリー在日本大使館
逮捕された翌日、パールガンジ警察署に二人の大使館員の面会があった。
「あなたのケースの場合、インド判例によればミニマムで10年の刑に相当します。良い弁護士を選任すれば少しは刑が短くなるかもしれません」
猛暑のデリー、10年生き延びて釈放される可能性はない、絶望的だった。
薬物中毒者の治療監房で50日、その後外国人収容監房へ移送された。そこで、顔見知りのジャンキーやプッシャーと会う。トミーのケースはノープロブレム、来年の春には釈放される、彼らは楽観的な判断をぼくに言った。記録的な猛暑を乗り越えた初秋、状況は一転し保釈へ進んだ。その時、大使館からの手紙
「どういう事情であろうと大使館、大使館員は個人の身元保証にはなれない」
保釈後、フィリップスからジャケットやネクタイとワイシャツを借りパスポート申請のために写真を撮りマリーと大使館へ行った
「お分かりでしょう、ここであなたにパスポードを発給できないことを・・・」
保釈中で裁判は進行している、そんなぼくにパスポートは発給できない、当然のことだった。デリー精神病院で治療が進みぼくは現実を理解し始めていた。マリーは逃亡に必要な情報を集め二人で計画を練った。Bさんの面会のとき、ぼくは逃亡計画のすべてを話した。退院しデリーに留まれば再び薬物に溺れる、薬物を断ったいまネパールへ逃亡し帰国する。
「それしか方法はないでしょう」Bさんは黙認された。
12月29日 退院手続きが遅くなり大使館に着いたのは暗くなっていた。28日、大使館は閉館されている がBさんは待っていてくれた。事務的処理が終わり、お世話になりました、とぼくがお礼を言うと
「ご無事で・・・」危険を伴なうぼくの逃亡について危惧されての言葉だ。
そして執務室を出ようとするぼくに
「無事帰国したら手紙を下さい」と付け加えられた。

カトマンズ在日本大使館についての推論はいずれ・・・

雨が降っている 南風が強い 暴風警報が発表された
ベランダの飛びそうな物は部屋の中に入れた
また渡船の桟橋が壊れるかもしれない
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする