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ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

第10話  トイレと豚・・・3

2016-03-17 | 第10話 トイレと豚



 ぼくが初めてカトマンズに来た頃、カトマンズ盆地は糞つぼだと悪口を言われていた。カトマンズ市内でさえホテルを除いて多くの民家にはトイレ等なかった。狭い路地がトイレ代わりで早朝には皆が座ってそこで用を足していた。後片付けをするのは豚と野良犬である。そんなこと等つゆ知らずぼくはポーク焼飯や焼そばを美味しいと言って食べていた。その頃やけに豚や野良犬が多かったのはそういう背景があったからだろう。野良犬はそこそこ今でもいるが市街地で豚を見ることは少なくなっている。民家のトイレが完備され餌の人糞がなくなったからだ。旅をしていると度々下痢になるがその原因の一つは野糞だと、ある先生から教えてもらった。空気が乾燥しているので埃と一緒に大腸菌が舞い、それが体内に入ると下痢になるらしい。土地のインド人やネパール人は免疫を持っているから平気だが。
 カトマンズから近郊の村へ行く途中、バクマティ河に架かる吊り橋がある。この河は下流でガンジス河と合流する聖なる河である。
吊り橋のすぐ上流には寺院があり時々死者を焼いて灰を河に流していた。橋の上から下流を見ると左岸の市内側にはゴミが山積みされている。ゴミの山に上って座っている子供を見た。どうも大便をしているようだが落ち着きがない。きゅろきゅろ見回しては用を足している、が何に驚いたのか子供はいきなり立ち上がり慌てて左手でズボンを右手には尻を洗う水の入った瓶を持って逃げ出した。汚い子供だ尻ぐらい洗えよ、と思っているとそこへ豚が突進してくる。うんこを狙ってくる豚を恐がっていたのか、まあ子供だからビビッタのだろう。小学生くらいの男の子だが犬は狂犬病があるからやばいが、豚は恐くはない。座っていると尻の下にあるうんこを食べようとする豚から、鼻で押しのけられたかもしれないが咬みつかれることはない。

ある先生とは・・・1970年代 カトマンズ近郊のパタン市に奥様と滞在されていた医者でもある
岩村昇先生のことである 帰国して先生がお書きになった「ネパールの青い空」を読んだ
このページ書くため検索をして先生がお亡くなりになっていることを知った    合掌
コメント (2)
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第10話  トイレと豚・・・2

2016-02-15 | 第10話 トイレと豚



 インドの地方の村や町ではホテルを除いて一般民家でトイレの設備があるところは少ない。村や町の何処かに不浄の場所がありそこで用を足す。長距離バスの中継地である小さな町で1泊したことがある。表通りに面して食堂やホテルが並んび、その建物の裏側にはガンジス河が流れている。標高1500mぐらいの町で、ここまでくればさぞかしガンジス河の水も綺麗だろうと、建物の間を抜けて河へ出た。河畔には上流から押し流された大小の石がごろごろとしている。石に乗って河岸へ行こうとしたとき、目についたのはあちらこちらの石の上や石の間に干からびて貼りついている人糞であった。ガンジス河の本流は聖なる河であるが河畔の一部は不浄であっても良いということか。ガンジス河に思い入れしていたぼくはちょっと傷ついた。
 別館下で生活をしているババ達の数は10人を超える。別館の少し上流に草むらがあり、そこが不浄の場所になっている。黒豚の親子が下流からこの辺りまでやって来る。猪ぐらいの大きさで黒い母豚とその後ろに可愛い子豚がついてくる。ぼくが泊まったことがある地方の町では必ず黒豚を見た。この豚もバザールにいる牛もぼくは野良だと思っていた。がそうではない、ちゃんと持ち主がいるのだ。デリーのバザールにいる雌牛は持ち主から乳を搾ってもらっていた。黒豚の雄は成長すると投げ網で絡められて、ギーギー泣きながら大八車に縛り付けられていた。たぶん場へ運ばれていったのだろう。バザールの牛は飼い主が餌をやっているわけではないが、何を食べているか大体のところは分かる。豚は何を食べているのか?インド人の生活をみていても豚に与える餌は出てこない。出てくるのは人糞・うんこだけであり、それが豚の餌である。
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10話 トイレと豚・・・1

2016-02-10 | 第10話 トイレと豚

 アシュラムの手続きを終え宿舎にはいった。その時、初めてトイレでの紙の使用が禁止されていることに気づいた。トイレが紙で詰まり使えなくなったことがあったらしい。それ以来ぼくはトイレで紙を使ったことはない。左手のひらに水を溜めその水でお尻を洗う。確かに水で洗うとお尻はウォーシュレットで洗ったように綺麗さっぱりとする。問題は水に濡れた尻と黄色いものが付いた左手の指だ。お尻はふぅふぅと2~3回上下運動をすると尻のもじゃもじゃした毛が含んだ水滴は落ちるだろうが乾くわけではない。トイレの中には便器を跨いで座ると伸ばした手が届く低いところに蛇口がある。そこで汚れた手を洗って下着と薄い綿のパンツをはく。ちょっと下着が濡れた感じはするがそれほど気にはならない。
 ガンジス河源流へ行ったとき、お世話になったアシュラムは標高約3000mのガンゴトリという聖地にあった。そこのトイレは変っているが、なるほどと思った。アシュラム内に巾40㎝ぐらいの小川が運河のように引きこまれている。この小川は何処まで流れているのかぼくは知らないが、アシュラムの下にも家があるとこをみると、同じように使われているのではないだろうか。アシュラムの人間にトイレはどこだと聞くと小川の上に建っている小屋を指差した。小屋の入口はちょうど小川なのだが、その上には板が渡してある。ドアを開けると小屋の真中の小川には綺麗な水が流れていた。それを跨いで用を足せということらしい。ズボンと下着を脱いで座ると小屋と水面の間から水の流れに乗った冷たい風が吹いてくる。尻や何やらが縮こまってしまう。水の流れはかなり早く落し物はその水に流され跡形もない。小川の水は高度1000mぐらい登ったところにあるガンジス河源流の氷河の溶け水である。尻を洗う水はその小川の水だ、手ですくい取って使うが冷たかった。
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トイレと豚・・・13    止まった出物

2005-09-30 | 第10話 トイレと豚
 ドアの前をパタパタとサンダルの音がして通り側のトイレのドアがバターンと閉められた。
ちょっと頑張ってそろそろ出るかな思った時
「ギェ~~~~ヒィ、ギェ~~~~」
バタバタバターンと音がして、ヒェ~~という悲鳴とパタパタ駆ける足音がぼくのトイレの前を通り過ぎた。
1階にはヨーロッパの可愛い女性が2人いるがどちらがやられたのだろうか。
それにしてもあの可愛い顔からあんな凄まじい悲鳴が出るものかね、余程恐かったのだろう可哀相に。
ぼくも初めての時はそんな物が出るとは想像もしていなかったから心底度肝を抜かれた。
心の準備ができていればそれ程のことはないのだが。
あの悲鳴に豚も驚いたのかここまでやって来ない、ぼくの出物も止まってしまった。
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トイレと豚・・・12   豚との攻防

2005-09-28 | 第10話 トイレと豚
 そんなことを考えたわけではないが、トイレで襲ってくる黒豚との攻防について対策を立てた。
トイレには500㏄ぐらいで計量カップのように取っ手がついたトイレ専用の水入れが置いてある。
それに井戸水を入れてトイレへ行く、忘れると後の始末ができなくなり泣きたくなる。
あれ以来ぼくはそのカップと700㏄のペットボトルを持ってトイレに入るようにした。黒豚に急襲された時はカップの水をぶっかける、たぶんこれで敵は逃げていくだろう。その後ゆっくり用を足し尻を洗うときはペットボトルの水を使う。対策は十分だ、さあ来い豚と思っていると敵は中々やってこない。
そろそろ今日あたり、ご無沙汰しましたと来るのではないだろうか、そう思ってぼくは1番手前のトイレに入っている。ちらちらと下に注意をしながらの用足しだから気持ちが集中できない。
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トイレと豚・・・11   城砦

2005-09-26 | 第10話 トイレと豚
 何度見てもこのホテルの建て方は小さな城砦のように見えてしょうがない。
2階には2部屋しかないのに逆凹に建てられた1階の部屋の上には下と同じ凹形で高さ1mぐらいの壁が築かれている。
それと2階へ上がる階段だ。
中庭手前にあるのだが左右とも階段は狭く、上り口には厚い木のドアがあり内側から鍵が掛けられるようになっている。
もし頑丈な門扉が破られたら左右の階段から2階へ上がり最後に内鍵を掛けると誰も上ることは出来ない。
中庭に面した2階の壁は守りと同時に梯子で上って来る敵をやっつける。
何だか理論的に建てられているように思えて想像の世界が広がる。
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トイレと豚・・・10

2005-05-12 | 第10話 トイレと豚
 トイレに入る度にあの黒豚に襲われたのではとても安心して用など足せるものではない。気になってトイレの裏側を見に行った。隣の塀とトイレの間にコンクリートの溝がある。通りに面して塀などはなく全く自由に出入りが出来る。豚さんどうぞ宜しくお願いしますという事か。豚がトイレの中へ入れないように何とかしろと、マネージャーに文句を言ってやろうと思ったが、インド人のことだ豚が嫌なら自分の物は自分で始末しろと言い出しかねない。裏の出入り口に豚が入られないように塀を建てたら、トイレ内には汚物が溢れることになる。ホテルだというのにトイレの処分は豚頼みか。ここは今までどおり豚に頼るしか方法はなさそうだ。ぼくは豚と再び遭遇しない為の対策を考えてみた。まずトイレに入るときドアを静かに閉めて豚に気づかれないようにする。次にホテルを替わることも考えてみたがこれは無意味だろう。町のどこでも井戸を使っている、砂漠が近いから水道はないのかもしれない。だとしたらホテルを替わってもトイレはここと同じ設備だろう。これからも度々、豚の急襲をうけるようであればこの町から逃げ出そう。折角遠くまで来たのに1週間足らずで豚に追い出される事になるのだろうか?
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トイレと豚・・・9

2005-05-10 | 第10話 トイレと豚
 何なんだこれは、どうしたというんだ。本当にここに豚がいたのか、幻覚じゃないのか?茫然と立ち尽くしていたぼくはやっと我にかえった。あの野郎我慢ならねぇ、それっとぼくは豚を追い駆けようとして躓いた。下着とズボンは足元に落ちサンダルで踏みつけられ、ぼくの下半身は無残にもむき出しになっていた。ぼくはブリーフとズボンをずり上げると玄関へ飛び出す。通りを捜すと黒豚はもうあんな遠くをのんびりと走っている。ちきしょう今度会ったらただじゃすまないぞ、と思ったが豚の顔なんか見分けがつかない。えらい目に遭ったがもう済んだことだ。まあ豚には豚の事情があるだろう、担当区域が広くて豚も忙しいのかもしれない。
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トイレと豚・・・8

2005-05-09 | 第10話 トイレと豚
 下着とズボンを下げて膝で止めのんびりと座っていた。前のドアを見るでもなくぼんやりと眺めていると、薄い影が動いたように見えた。トイレの裏に何かいるのだろうか?やはり影は動いている。何も音はしないのに影だけが少し濃くなったような気がする。気のせいかと思った瞬間、はっきりとした黒い影がドアに映った。何だろうと股ぐらから下を覗くと黒い2つの目とぼくの目が合った。尻をちょっと浮かしてもう1度下を見ると
「どひぇ~~~~~」
ぼくは飛び上がって便器の横に逃げた。顔面は黒い毛に覆われピンクの鼻をぴくぴくさせながら黒豚は便器の縁まで顔を出しぼくを見ている。
ブゥブ(まだ出ないの?)
うん、まだ出ない、とぼくは首を左右に振った。
ブゥブブ(尻は一杯見たけど痔が悪いんじゃないの)
うん、痔が悪い。
ブブゥ(気をつけな)
心配してくれてありがとう。
ブ~ブ(じゃあな)
そう言うと黒豚は後ずさりして出て行った。
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トイレと豚・・・7

2005-04-26 | 第10話 トイレと豚
ホテルの門を入ると左側は壁で、その壁を回り込むと狭い通路がある。通路に沿って3つのトイレがあり踏み台に上がってドアを押しトイレの中へ入る。ドアを内開きにしているのは通路が狭いからだろう。何処にでもあるトイレと同じで中へ入り入口を向いて便器を跨ぎ座る。何も変ったところはない。ただ他と違うといえば、ちらっと下を見ただけだが、尻の下が落とし穴になっているのが普通だと思うのだここのトイレは前の金隠しの下から45度ぐらいの傾斜をつけて後ろに下がっている。斜面にはコンクリートが打ってある。普通だったらそこに便が付着して、蝿がぶんぶん飛び回り汚い、だが此処のコンクリートの面は綺麗だ。毎日、水を流して掃除をしているのだろう。斜面の後ろは素通しになっているようで明るくて清潔なトイレだ。
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