ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・24

2015-02-27 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

 朝、洗濯をしていると面会の知らせがあった。インド人にビリ1本の約束で後の洗濯を頼んでぼくは面会に行った。面会から戻ってくると洗濯物はちゃんと干してあった。約束のビリをインド人に渡すと洗濯があったらいつでも俺に言ってくれと念を押された。いつもマリーと一緒に来るナンシーだが今日は一人だ。後でフィリップスに聞いたらマリーはオート力車の事故に巻き込まれ怪我をして入院しているらしい。ちょっと心配だが若くて元気の良いマリーだから早く回復してくれるだろう。裁判所出頭は2日後だ。
 毎日スリランカ人が連れ立って来るが誰も相手にしない。Cバラックの囲い塀の中に入って来るが1ヶ所に集まって大人しい。時にはランジャンの8房に入り込み30分くらいすると出てくる。パケを回していたのだろう。ぼくは早く8房を出て良かった、残っていたら奴らに尻の毛まで抜かれただろう。ショッカンが煩く付き纏って来てもぼくが3房に入ってしまえば中までは追って来られない。
 オマールは少し良くなったようだがまだインド食が十分には食べられないようだ。夕食後、もう吐く事はなかったが気持ちが悪そうに胸を擦っていた。フィリップスものんびりしているよ、2ヶ月間ぼくは全くお金を払っていないのに。近々お金が入る予定なのだがまだ何時とも分からない、インドの事だから。
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ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・23

2015-02-24 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

 1月がもうすぐ終る。日一日と暖かくなっていく、冬のピークは過ぎてしまったようだ。ここ数日、良い天気が続いていて日中は着ているものを一枚脱ぎたくなる。インドの2月はとても過ごし易い、だがそれは短い。3月になると日中は30度を超え始める、そして4月から本格的な熱い夏に突入する。8月のモンスーンには気温が30度台に下がるが雨による湿気は耐え難い。熱いインドの夏に入る前、ここを出てカトマンズへ行きたいのだが無理だろう。どう考えてもそんなに早く出られる可能性は見つからない。裁判所はまだ私物と小切手の件をやっている、去年の12月からだ。そんな裁判所で本格的な審理が始まっても簡単には終りそうにない。今までは月に2回以上、出頭していたが収監後3ヶ月を過ぎると審理に入るが出頭は月、1回になると聞いた。ジャマイカ人は3年が経ってもまだ審理が続いている。カマルは5年が過ぎたが高裁での審理は続いている、そして判決も出ていない。こうした古い事犯の審理が遅れ、遅延した審理待ちが溜まり続けている。その結果、刑務所は収監者で溢れた。スタッフでもやっていないと神経がいかれてしまう。

   1月31日(火曜日)
 今日も1日が終ってしまった。そして今日も吸っていた。エマから買った粉は良かった。これは以前ショッカンが中に入れた粉でそれをエマはミックスして流している。ショッカンの粉が強かったのだろう、まだパワーが残っている。日毎、吸うペースが早くなっている。今日も何もしなかったし何もなかった。何もない方が良い。
 ナンシーが面会に来てくれた。差し入れのフルーツ類と弁護士からの手紙だった。弁護士は今回の弁護費用のアドバンスとして3万ルピーを要求してきた。ふざけた野郎だ。まだ裁判が始まったばかりで3度くらい裁判所に来て私物と小切手をやっているだけだ。1万ルピーでも多過ぎる。前回、裁判所で受取った15枚くらいの書類を持ち帰りフィリップスにチェックしてもらったがすべて私物返還の確認書類で裁判審理に関わる書類は1枚もなかった。弁護士の要求金額を払っていたらとんでもない事になる。ぼくが大使館宛に手紙を書かない限り支払いは一切行われない、それで良い。お金が欲しければ結果を出してもらいたい。



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ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・22

2015-02-23 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

 今、刑務所内にはスタッフが溢れている。2~3日前、刑務官のチェックでインド人が捕まった。20gの所持だった。監房の側溝にパッキングされた粉が発見された。一度、放置されたスタッフは回収できない。ぼくは一度パケを落とした事があった。ワード内にリヤカーで食べ物を売りに来るがそこで支払った時クーポンの間からパケが落ちた。ショッカンと探しに行ってパケを見つけ手にしたところでリーダーに捕まった。網を張られていた。大きな問題にならなかったのは幸いだった。ワード内の収監者の数は少し増えているが大した変化はない。月に1人くらいが出所してそれより多い人間が入ってくる。新入りは全員の目でチェックされる、金のあるジャンキーが入ってきたら商売になる。アフリカンにとっての上客はやはりヨーロッパ人と日本人のぼくだろう。この大口の固定客の他に小売のルートがあるがここで上がる収益も馬鹿には出来ない。今、小売の中心は6房のムサカと7房のジュドゥだ。スリランカ人やインド人が度々パケを求めて出入りしている。クーポンで70ルピー、現金だと50ルピーこのパケの値段は変動しない。シンジケートは強い力で価格を維持している。彼らは如何してこんな高いパケを買えるのか不思議だ。ぼくにとっての70ルピーは日本円に換算すると200円くらい煙草1箱分だという感覚しかない。煙草とビール1本の値段でここでは3パケが買える。このすり替えられた論理のマジックに疑いを持ちながらもドラッグの酔いの深みへ落ちていく。
 オマールは毎食後トイレで吐いている。インドの食事が自分には合わないのだと言っている。インド独特の調味料の臭いが吐き気につながっているようだ。ぼくも一度、全くインド食を受け付けない時期があった。塀の外だったからチャイニーズ・メニューを持ったレストランに通った。暫らくするとインド食は又、食べられるようになる。ここは刑務所の中、我慢するしかない。
 

良い天気だがちょっと霞んでいる 例年より早いらしい 黄砂が飛んでいる
それだけならまぁ我慢はできる やっかいなスギ花粉が飛散し始めた 
今日は多い予報 非常にありがたくない
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ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・21

2015-02-19 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

   1月30日(月曜日)

 毎夜、停電が続いている。電気のオーバーワークでヒューズが飛んでいるのだ。かなりの房でヒーターを使っている。ぼくの3房にはない。どこかの房でヒーターを使い出すと直ぐに分かる、電燈の光度が落ち少し暗くなる。1個使用中、2個目を使い出すとまた照明の光度が落ちる。これがたぶん電気使用量の限界だと思う。ここで今、使用中2個のヒーターの内1つが料理を終え電源を切ったら照明の光度が戻る、そこで待っていた房がヒーターを使い始めれば停電はしない筈だ。停電する時間帯は夕方6時の施錠後の早い時間だ。長い時は1~2時間停電する。冬だから温かくして食べたいのだろうが夫々が勝手にやり出せば暗い中で冷や飯を食べることになる。フランス人のフランシスから1本5ルピーで蝋燭を買い溜めしていたから最悪の状態にはならないで済んでいる。ヒーターを持っている房はエマの1房、ピーターの4房、アフリカンの5房、ムサカの6房くらいだろう。ダイクの7房とカマルの8房は既に刑務官によって没収されている。
 毎日スタッフをやっている。朝はスニッフ1回だけ、昼は3時までに2回、夜は2~3回。スタッフを入れた後、必ずチャラスのジョイントだ。こんな事を毎日やっていると1日はあっという間に終ってしまう。裁判の進行も刑務所にいる事さえ気にならなくなる。1日中、粉をやって夢うつつで年月が過ぎていく、ホテル代や食事代、煩わしいビザも必要ない。毎日、考える事はスタッフ、チャラス、ビリの手当てだけだ。ドイツ人のトーマスは相変わらず外へは出てこない、日がな1日、房の中で吸い続けているのだろう。
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ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・20

2015-02-16 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

アフリカンは大体、同じホテルに集まりそこで奴らはアフリカンだけの共同体を形成してしまう。キシトーはそこから離れて1人で行動していた。今はスタッフをやめてチャラスのジョイントだけを吸っている。ナンシーは奴のワイフだと聞いた事がある。彼女はマリーと一緒に面会に来てもキシトーに面会している所を見た事はない、何かあるのだろう。
 昨夜、今夜と続けて8時頃になると隣の2房にいるアミーゴから火の催促があった。壁をどん々と叩いて
「トミー、火あるんだろう回してくれ」
新聞紙に火を点け外房の天井から2房へ投げ入れたが難しい。天井の鉄格子は高くて手が届かない。飛び上がればつかまえる事は出来るが片手に火の点いた新聞紙を持っていては無理だ、オマールに手伝ってもらった。火が小さいと風で消えてしまうし燃え上がると火傷をしそうで危ない。やっと投げ入れると火が消えてしまっているからもう一度と言ってくる。ぼくも暇だし遊びながらやっていた。ぼくが悪戦苦闘して火を隣へ投げ入れるのを見てフィリップスも笑っていた。だが今日、奴は黙っている。これが毎日、続くようだと煩わしくなるだろう。自分に必要な火なら自分で用意しろよ、アミーゴ。明日、話すべきだろう。

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ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・19

2015-02-13 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

Cバラックの塀の中をショッカンがうろついていた。顔を見ると目の淵が黒くなっている、シックなんだろう。昨日までぼくがいた8房はひっそりしている、人の出入りが多かったのだが。もしぼくがそこにいたら当然ショッカンは中に入って来てスタッフの無心をしただろう。3房はアフリカン以外は自由に中へ入られない雰囲気がある。房内を覗きながら行ったり来たりしているショッカン、まだ夜に必要なスタッフの手当てが出来ていないのだろう、目だけはギラ々させて何かを探していた。
 キシトーは滅多に外へは出ない。フィリップス以外、他のアフリカンと親しく話しをしている場面を見た記憶はない。ぼくが知っているキシトーはスタッフに溺れていた。同じホテルの隣に住んでいた事が一度だけあった。ぼくは奴の部屋で取引きをし5gを買った。部屋に戻って小パケに分けているとドアーをノックする音、スタッフを隠してドアーを開けると奴が立っていた。右手を出してお前に粉を売ってしまって今晩の粉がない少しくれと言う、ふざけるな、欲しければお前に渡した金で買って来いと言ってドアーを閉めた。どのくらい時間が経ったのか分からないがドアーの外に誰か立っているような感じがしてしょうがない。小さくドアーを開けて見ると何と奴は前と同じ姿勢で立っていた。ちょっと変った奴だ。
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ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・18

2015-02-11 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

   1月28日(土曜日)
 クラス、裁判所出頭もない、朝からのんびりした。1日なんて直ぐ終った。スタッフを入れチャラスのジョイントで引っ張ると昼になってしまう。現実の煩わしさから離れ、ふわ々と緩やかな時の流れに漂う。こうなると刑務所の内も外も意味を持たない、ここはメインバザールのゲストハウス、同じハウスにジャンキー達が集まって吸っている、そんな幻覚に囚われる。
 今日はアフリカ・フードの主食アタを食べた。アフリカンと一緒でなければ食べられない。白い粉を練ったような物で右手で千切って丸めスープと一緒に食べる、食べだすと止まらない。素材は何なのか分からないがこれを常食するとあのアフリカンの強靭な肉体が出来上がるらしい。ソースが要だと思う。トマトとトマトピューレのソースにソヤビンを入れるともう堪らない、食欲が出る。アタそれ自体には味はない。ここは刑務所だから野菜しかないが外だったら当然、肉を入れるだろう。今まであまり感じなかったけど今頃になってやたら日本食が食べたいと思うようになった。カトマンズには日本食レストランが数軒あって良く食べに行った。デリーも外国人用レストランではチャイニーズ風メニューがかなりあった。野菜スープ、フライドライス、ヨーグルト、ブラックティーこれはぼくの定番メニューだ。それに飽きたらインド人の食堂で美味しいマトンカレーやタンドリーチキン、あぁ、腹がぐう々鳴り出した。ここに入って3ヶ月とちょっと、毎日インド食ばかりだ。これからはアフリカ・フードも食べられそうだ。
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ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・17

2015-02-04 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

   1月27日(金曜日)
 またチャッキをしてしまった。今日は裁判所出頭日だった。戻って来たのは4時を過ぎ、少しシックになっていたので直ぐスタッフを入れようとぼくの荷物の中を探しているとランジャンとカマルがやってきた。7房に緊急のチェックが入り1人は5gのスタッフをトイレに流した。非常に危ない事態だったのでトミーのスタッフもトイレに流したと説明した。7房にチェックが入るのは予想していた。8房にもチェックが入りぼくが隠していたスタッフが発見されたら非常に不味い。そんな事態だったのならぼくのスタッフをトイレに流されても仕方がないだろうと納得した。ぼくはシックになっていたのでフィリップスの3房に行き1パケを吸った。そこでさっきランジャンから聞いた話を奴にするとかんかんになって怒った。
「クレージー、5gのスタッフをトイレに流す馬鹿がどこにいる、あぁ、奴らがお前のスタッフを吸ったに決まっている、そんな事も分からないのか、おぅ~、クレージー、あぁ~」両手を激しく上下に振り激怒した
「俺は今からここへチャッキするぞ」
「おぅ、すぐ荷物を持って来い」
ぼくはチャッキする前、7房に寄って話を聞いた。5gのスタッフをトイレに流した奴は誰もいなかった。ヒーターを没収されたがスタッフのチェックはなかった。ランジャン、カマル、ムスタハン、奴らは心底、根性が腐ってやがる。もう誰も信用しない。
 3房はキシトー、フィリップス、モロッコ人のオマールそれにぼくの4名になった。リーダーのトビキがやって来て
「お前は何回チャッキすれば気が済むんだ、おぅ、次はどこだ」
と嫌味を言いやがった。しょうがないだろう裁判所に行ってる間にスタッフを盗む奴らと一緒にはやっていけねぇ
「お前は甘いよ」
言葉には出さなかったがトビキの顔はそう語っていた。もう次に替わる房はないだろう、少々の事は我慢してリリースされるまでここにいるしかない。出頭日、チャッキ、そんなこんなで今日は疲れた。

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ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・16

2015-02-02 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

夜、スタッフを2パケ入れた。チャラスを多く混ぜたジョイントを吸ったら効いてしまった。久し振りだこんなキックは、つい横になってしまった。夜中、とうとうムスタハンは病院へ連れて行かれた。暫らく帰って来なければ良いのに。カマルがムスタハンの事をゾンビと言ったが笑わせるね。両手を前にだらりと出し膝を屈めてそろそろと歩くゾンビ・ムスタハン、その姿をランジャンは見事に演じた。ぼくらは手を叩いて笑い転げた。
 ヒーターを刑務官に没収されて火はオイルランプに替えていた。いつの間にかオイル切れで火が消えていた。ビリを吸いたいと思ったらどんな事でもやる、横になっているランジャンから電線をスパークさせて火を作るやり方を教えてもらった。ぼくが何度やっても上手くいかない、そのうち彼が起き出して来て手伝ってくれたが火が点かない、湿気が多くて今日は駄目だと彼。それで終わりかと思ったら彼は外房へ出て行き7房へ向かって大声で火をくれと頼んだ。たったビリ一本を吸うのにそこまでやるのかね。こちらも暇だが隣も暇だ、面白い事なら乗ってくる。新聞紙に火を点けそれを天井の鉄格子の間から投げ込んできた。火は天井の上で赤く燃え上がっていた。刑務官に見つかって大丈夫なのかと思ったがぼくも少々の事では驚かなくなっていた。
「サンキュー」
落ちてきた新聞紙からビリに火を点け3人で吸った。

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