ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

第8話       カラス・・・2

2015-09-24 | 第8話 カラス

どこから集まってきたのかカラスの大群で埋めつくされていた。この村から上はヒマラヤの山間部へ続いているのでカラスはいるだろう、がこれほどのカラスが1ヵ所に集まるだろうか。原因は電線にぶら下がった1羽のカラスのためである。群れの中から2羽のカラスが飛び立ちぶら下がったカラスの近くを旋回した。カーカーと鳴きながら旋回するカラスに励まされたのか力なく逆さまにぶら下がっているカラスは足を外そうと懸命に羽ばたいた。変圧器がバチバチと火花を散らす。本通りにもいる多くの見物人が事の成り行きを見守っている。力が尽きたのかカラスは動かない、風に吹かれ揺れるカラス。もう駄目だカラスは死んでしまったに違いないと誰もがそう思った。その時、沈黙を破るかのようにカラスは死力を振り絞り大きく羽を広げ激しく羽ばたいた。2本の電線がショートする。変圧器から青い閃光が奔るとカラスは電線から外れた。しかしカラスは空へ飛ぶこともなく草むらへばさっと落ちた。じっと見ているカラス達、死を確かめたのだろうか、大群のカラスはそれぞれの方向へ飛び山へ戻り始めた。2~3羽は死んだカラスの上空を旋回している、家族なのかもしれない。ガンガの上にも多くのカラスが飛んでいる。対岸の遠い山から1羽のカラスのためにガンガを渡ってきたのか、カラスとは不思議な鳥だ。



聖地リシケシ ガンガ河畔 野草をつむ不思議な女性
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第8話       カラス・・・1

2015-09-02 | 第8話 カラス

 いつものようにババ達とチラムを吸っていると何だか周囲が騒がしい。河辺に立ち止まって本通りへ出る階段の方を見て巡礼者達は何か話し合っている。巡礼者の行き倒れだったらぼくも何人か見ているしインド人にとっては別に珍しい出来事ではない。ぼくはそれとなく巡礼者のところへ行き彼等の視線の先を追った。階段の横に1本の電信柱が立っている。そこから延びた2本の電線の1本にカラスがぶら下がっている。カラスが電線に止まって感電したのだろうが何故そうなったのか分からない。人間の行き倒れでは話のねたにはならないが、カラスの死闘のドラマは話題になるということか。電信柱には高さ1mぐらいの変圧器が取り付けられているのだが、そこに繋がっている2本の電線は弛み接近している。ぶら下がったカラスは時折、苦しみもがく。カラスが電線から逃れようと羽ばたくと2本の電線が接触し変圧器からバチバチと火花が飛ぶ。電線に触るときは手の甲を当てろ、手のひらで触ると電気が流れていると電線を握り締め焼け付いて手が放せなくなると聞いたことがある。電気の流れた電線を握ったカラスの足はもう開くことはないだろう。ぶら下がったカラスの向こうは本通りに面して山の斜面になっているがそこを見てぼくは驚いた。斜面はぼくが学んでいるアシュラムがある山である。いつもは大きな緑の木で覆われている斜面だが、今は不気味さを感じさせるような黒に変っている。どこから集まってきたのかカラスの大群で埋めつくされていた。

カテゴリーが不足し一旦削除した カラスは再掲示です

九州北部 明日も雨の予報 
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