ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

クマルとサソリ・・・2

2023-02-09 | 心の旅・追想
 夕方の瞑想と食事が終わるとぼくはいつものようにガンガ河畔のババ達のところへ向かった。ババ達はぼくが来るのを待っている。懐中電灯の灯りが闇の中でチラチラと光り、別館下を照らすと暗闇の中に座っているババ達の顔が浮ぶ。シャンボー、とババの声がする。

シャンボーと言ってぼくは座りチャラスをババに渡す。1本目のチラムが回り始める。
「オーム・ナム・シバー」
「ボーン・サンカール」
ババ達はそれぞれの神を讃えてチラムを吸う。突然、雨季でもないのに雨が降り出した。しかし、ここは別館下だから雨に濡れる心配はない。雨は激しくなる。2本目のチラムが終る頃には小雨に変った。ちょっとふらつく足どりでぼくはアシュラムへ戻る小道を歩いた。 やっと部屋にたどり着きベッドに腰を掛けようとした時、ベッドの敷物の上に茶褐色をした何かがいる。何だろうというふうに近寄って見たぼくは2~3歩後ずさりをした。
「どひぇ~~~~」
「サ、サ、サソリじゃないの君は?」
2度目の出会いである。姿は細長い海老のようだがはさみと上半身のサイズに比べると尾っぽは細く尖っている。その尖った尾っぽの先に毒を出す針があるらしい。
 クマルの馬鹿、藪から棒ではなくサソリとは。季節外れの雨に軒を刈られちゃサソリだって避難するしかないだろう。藪に生息する生き物へ藪の一部を残すとか、そのような配慮や愛があればこのような事態にはならなかった。歓迎されざる生き物の侵入を招いた責任はクマルにある、馬鹿。

「殺す」
 入口のドアからある一定の間隔でそれはいた。屈み込んで見ると紛れもなくサソリだ。乳白色をした子供だろう、うずくまって動かない。びびっているわりには一瞬、ぼくは写真に撮ろうかと思っ た。しかしフラッシュで親サソリが目を覚まし走って物陰へ隠れたらやばい状況になる、やめた。殺すしかない、まず親からだ。腕の長さと手に持ったサンダルで叩き潰せる距離までぼくは忍び寄った。親サソリは疲れているのか尾っぽを跳ね上げる攻撃的な姿勢をとらない。力一杯サンダルを打ち下ろすと、そのサンダルを履いてぼくは子供サソリを次々と踏み潰した。潰れたそれらは箒で外に掃きだした。
生あるものを慈しむインド人はぼくに言うだろう
「何も殺すことはない」


この土台の上には ぼくが学んでいるアシュラムの約20畳程の別館が建てられている   

   


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする