ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

第9話   ぼくはカメラマン・・・1

2015-10-15 | 第9話 ぼくはカメラマン


 朝の瞑想が終りチャイ屋で朝食をすませるとぼくは別館下へ行った。ババ達が1ヵ所に集まって何やら話し合いをしているような雰囲気がある。ここには常時10人ぐらいのババ達が生活をしているがメンバーが固定しているわけではない。いろんな聖地を巡っているババもいる。サドゥ(修行者)といえどもここはインドである、カースト制度は彼らの生活のありようを拘束している。別館下はガンガ河畔にあるが上部の本通りから河辺へ向けて傾斜がついている。その斜面に長い年月をかけてそこに住んだサドゥ達によって寝床が作られていた。両横に通路があり斜面にはできる限り多くの寝床が作られている。旅をしてきたサドゥが寝場所の様子を見にくるが空きがなければ他を探しに行く。だがもし空いた場所があったとしても使わせてもらえるかどうかはカーストにもよる。上部から下部にかけてカーストの序列に従って寝床の位置が決まっている。上部の場所が空いていたとしてもそこに低いカーストの者が入るということはない。時々、ババ達の寝床が替わっている事があったが、場所を繰り上げたり下げたりして新参者の寝床を融通しあっていたのではないだろうか。それでも別館下に入れない若いサドゥがいた。空き寝床があるのにどうして入らないのか聞いたことがある。だが外国人のぼくが彼等のカーストに関わる問題に口を出すことは禁句であることを後で知った。
 最上段に一つの寝床ある。サフラン色の衣服を身に着けたババは長いこうもり傘を持ち毎日ヒンディー語の新聞を読んでいる。彼はインテリでありこのコミュニティの相談役でもある。サフランババがぼくにちょっとここに来てくれないか手招きをする。どうもいつもの別館下の雰囲気と異なっているようにぼくには感じられる。皆で何か相談したような節があるが、しかしそれぞれカーストが異なっているから全員で行動をするという事はないはずだ。ぼくが別館下に入ったときから皆の視線がぼくに向けられている。ババ達の並んだがん首をよく見ると、なんと汚い格好をしていることか髪も髭も伸び放題だ。
コメント
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