ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

第1話 山のアシュラム  サソリ・・・1

2015-10-25 | 第1話 クマルとサソリ

アシュラムに入ったばかりの頃、ぼくは古くて狭い5軒長屋の宿舎に入れられていた。ある夜、ベッドに坐り机の上に開いたヨガの本を読んでいた。3月中は寝る前に扇風機を止めることもあったが4月に入ると扇風機は回り続けている。アシュラムが出版している英文のヨガの本を英和辞典を片手にぼくは悪戦苦闘をしていた。その時、机に向っているぼくの右目の端が何か動く物を捕らえた。前にある机の左端から右斜め後ろへ床の上をすぅ~と動く。扇風機の風が糸くずを動かしたのだろうか。動いた物はどこへ行ったのか、ちらっと見るとトイレとシャワー室へのドア辺りへ行ったようだ。ドアを囲む木材もドアの下部も朽ちかけその窪みは暗い。何となく気になったぼくは懐中電灯を手にしてベッドから降りた。宿舎は4・5畳ぐらいの広さで入口の左側に壁に沿ってベッドと机が置いてある。トイレとシャワーは右側のドアから入るが隣の部屋との共用になっている。暗い窪みに懐中電灯の光を当てながら近づいていく。窪みに何か黒いものがいるようだ、が朽ちた木の隙間と一体化して何だかはっきりとは見えない。なおも近づきながらライトを当て左手を出そうとした瞬間、黒いものがビクと動いた。ぼくは手を引きじぃっと見ていると黒い形をしたそれの全体像がはっきりと見え始めた。両手を床に着け尾を跳ね上げ逆立ちをしている濃褐色の生き物だ。その生き物もぼくを見ているのではないだろうか。図鑑や映像による予備知識はある、がそれと当面している現実の出会いとの認識の照合確認に数秒の時間が必要だった。これはゴキブリでもムカデでもない。これがサソリという生き物なのか?
「どひぇ~~~~~」
ぼくはベッドに飛び乗った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする