ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

逃亡・終章・・・15    トリブヴァン国際空港へ  

2018-08-17 | ドラッグの深い闇・終章

  帰国の日、中央郵便局と日本大使館へ行きぼく宛の手紙を調べた。大使館に二ナからの手紙が届いていた。フレッドがぼくに言っていた手紙とはこのことだったのか、気にもせずその手紙をウエストバッグに入れてスンダルの店へ最後の別れに行った。後日、ぼくが逃亡していたことがカトマンズにも知らされるだろう、彼は警察や出入国管理事務所で公然とぼくの手助けをしたことは知られている。彼に迷惑がかからなければ良いのだが。ぼくは彼に心からお礼を言った。「またカトマンズへ戻ってきてくれるんでしょう。待っていますから」ぼくの逃亡が過去のものとなり危険がないとスンダルが判断したら手紙を下さい。必ずカトマンズへ戻ってくる、とぼくは最後まで自分の真意を彼に伝えなかった。心苦しくて彼を直視できない、だがそうとしかぼくには言えなかった。
 夜10時にトリブヴァン国際空港へ出発する。3階のベランダから下を見るとマネージャーに頼んでおいたタクシーが既に停まっていた。ベランダに立って右から左へフリーク・ストリートを見た。1970年代から変ってない、これからも変らないだろう、この街は。いつも同じ姿でぼくを迎えてくれた。帰国の準備はすべて終っている。バッグをさげて1階へ下りるとクリシュナと運転手らしいネパール人がテレビを観ていた。マネージャーはもう帰ったのだろう、クリシュナにキーを渡すと、ネパール人は「行きますか」と日本語で言って立ち上がり車へ戻った。外で車のエンジンを掛ける音を聞いてぼくはホテルを出た。後部座席に座りドアを閉めると車は夜のカトマンズを走った。積み木のおもちゃのようなカトマンズ。車はあっという間に街を抜け空港への道路を走っていた。ぼくは振り返り遠ざかるカトマンズの街の小さな灯りを見た。その灯りを覆う闇の遠くにデリーがある。


猛暑が続いた 台風15号が通り過ぎ大陸高気圧から涼しい北風が吹いている
まだ秋の足音は聞こえない

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