調査員の「目」

 日常の何気ない雑感とつれづれ日記。

『アメリカは日本経済の復活を知っている(浜田宏一著/講談社)』

2012-12-24 | 書評系
 『アメリカは日本経済の復活を知っている(浜田宏一著/講談社・\1680)』を読んだ。ちょうど自民党の安部総裁が2%の物価上昇を目標に日銀に政策協定を要請したことや拒否した場合には日銀法の改正も視野に入れる、などと報道されている折、ぴったりの良書ではないだろうか?「~まえがき~」に書いてあるが、本書最終校正中に安部氏から国際電話がかかってきて日銀の政策に関する質問を受けたそうだ。まさに一国の総理になろうとする人物から質問を受けるようなレベルの高名な経済学者によるタイムリーな本。
 
 イェール大学名誉教授で世界レベルの経済学者と研究・研鑽を積んでこられた浜田宏一氏が「経済学の200年の常識」の観点(デフレに効くのは金融緩和であるという大学1年生の教科書にも載っている基本原理)から金融緩和による円高・デフレの是正を説き、また一方でアメリカ在住(だけでなく内閣府経済社会総合研究所所長なども歴任)の著者から見える日本のおかしな点にも言及した「社会学」にもなっていて、特に「日銀」と「官報複合体」たるマスゴミに手厳しい。またデフレ下における消費税増税にも5%に増税しながら税収が減収した(財務省はアジア通貨危機のせいにしているが)橋本龍太郎内閣時と同様の運命になると予測しており、増税の前に必要な政策を訴える。

P.271
 序章 教え子、日銀総裁への公開書簡
第一章 経済学200年の常識を無視する国
第二章 日銀と財務省のための経済政策
第三章 天才経済学者たちが語る日本経済
第四章 それでも経済学が日本を救う
第五章 2012年2月14日の衝撃
第六章 増税前に絶対必要な政策
第七章 「官報複合体」の罠
 終章 日本はいますぐ復活する

 なかでも特に興味深い見出しは
 ・閣僚たちは「ヤブ医者」の群れだった
 ・首相の狂気「増税すれば経済成長する」←管直人
 ・「経済書は岩波新書を1冊読んだだけ」←与謝野馨
 ・税収が5兆円も減った橋龍内閣の教訓
 ・消費税2倍で社会的損失は4倍に
 ・いま増税すると財政再建は絶対不可能に
 ・政府が破産しても国民は絶対に破産しない
 ・日銀総裁を「起立・礼」で迎える日銀記者
 ・消費税で癒着する財務省と新聞社
 ・「デフレの問題は社内でも微妙なのでオフレコに」

 管直人氏はそうでもないが、与謝野馨氏、仙石由人氏、藤井裕久氏などマスゴミが東大法学部卒というだけで何か「政策通」かのようにもてはやしていた御仁たちにも「岩波新書を1冊読んだだけ」「無知もしくは誤解」「ヤブ医者だった」と彼らの人柄ではなく政策=結果(罪)に大変手厳しい。

 「和をもって貴し」とする日本で、いろいろなしがらみを抱える(日銀や財務省に飼われてしまった)高名な大学教授などがなかなか言えないようなことが直言でズバっと指摘されており、まさにデフレで苦しむ日本を何とかしたいと願う政治家・官僚・経営者層・ビジネスマンに必読の書と言えるだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿