調査員の「目」

 日常の何気ない雑感とつれづれ日記。

「大国の明日 シュミットが読む勝者と敗者(ヘルムート・シュミット/朝日新聞社)」

2006-01-22 | 書評系
「大国の明日 シュミットが読む勝者と敗者(原題は「未来の大国」 ヘルムート・シュミット 五十嵐智友訳/朝日新聞社)」2,200円
著者 ヘルムート・シュミット氏
 1918年ハンブルク市生まれ。ハンブルク大学在学中に社会民主党入党。1969年からドイツ連邦共和国(旧西ドイツ)国防相、経済相・蔵相、1974年首相就任。3選・8年余の在任中、主要先進国首脳会議(サミット)の創設、欧州通貨統合(ユーロ)の推進に努めた。退任後は世界OBサミット結成や、週刊評論新聞「ディー・ツァイト」発行人としての著述活動を通じて、国際政治問題に発言を続けている。 
 主な著書に「シュミット外交回想録」「ドイツ人と隣人たち-続シュミット外交回想録」「グローバリゼーションの時代-21世紀への最大の課題に挑む」など。
 
 目次
 はじめに
第一章 未来について知りうることと知りえないこと
  1 暗いシナリオ
  2 さまざまな展望
  3 世界が直面する危険
  4 人口爆発とその結果
  5 科学および経済のグローバリゼーションの帰結
  6 国際金融市場の脆弱性
  7 国際武器取引の影響
第二章 アメリカ帝国?
  1 なぜアメリカは嫌われるのか
  2 アメリカ帝国主義の源流
  3 アメリカの強さと弱さ
  4 世界を覆うアメリカ資本主義の優位
  5 アメリカの戦略選択
  6 EU、北大西洋同盟に対するアメリカの選択
  7 イスラムとの対話か、それとも「文明の衝突」か
  8 アメリカの不透明な対ロシア・対中国戦略
  9 先導役としてのアメリカ
第三章 アメリカ以外の大国の進展
  1 歴史と人間
  2 経済発展を続ける中国
  3 日本の対中国・対米関係
  4 中国とアメリカ、東南アジア
  5 インド、世界最大の人口へ
  6 中東、イスラムと石油
  7 ロシア-宙に浮く世界大国
  8 世界の周辺諸国の無力感
  9 ヨーロッパの困難な自己主張
 結びの考察-ドイツのヨーロッパ人の視点から
  1 現実主義で考えるアメリカと中国
  2 多国間主義による国際法と国連拡充
 訳者あとがき-もう一つの世界の見方-
(247ページ)

 元西ドイツ首相にして「現実主義政治家」と呼ばれたヘルムート・シュミット氏の著作(原著は2004年7月に発刊)。「現在の世界の主要な出来事の相互関連をヨーッパの視点から説明、明日の世界の核心となる利害関係とその動向の見取り図を描いた」とされる。
 シュミット氏は現在87歳か?1918年生まれとなっているので、日本で言うと中曽根安弘元首相と同い年となる。恐ろしいな・・・(笑)。上記の通り、ヨーロッパ(エリート)の視点から見た世界が直面する危険とアメリカを中心として世界的な俯瞰を通した氏の大まかな見解が明らかにされている。
 日本についての氏の見解もあり、「日本は(帝国主義の時代)、隣国の全てにひどい仕打ちをし、それを隣国はいまも覚えている」「政治指導者の多数は依然として、かつての戦争の勇者たちと何人かの軍部指導者たちをあからさまに崇拝している」などとの記述に違和感を覚えるが、要はドイツの元政治家(長老)-ヨーロッパ-が世界を(特にアメリカを)どのように見ているか、を示す一つの資料になるだろう。

「語られなかった皇族たちの真実(竹田恒泰著/小学館)」

2006-01-21 | 書評系
 去年読んだ本。
「語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」(小学館)」
著者:竹田恒泰氏
 昭和50年、東京生まれ。旧皇族・竹田家に生まれる。慶応義塾大学法学部法律学科卒。財団法人ロングステイ財団専務理事。孝明天皇研究家。明治天皇の玄孫にあたる。
[目次]
序 章 竹田家に生まれて
第一章 万世一系の危機
第二章 戦争と皇族
第三章 終戦と皇族
第四章 占領下の皇族
終 章 雲の上、雲の下
あとがき(252ページ)

 小泉総理の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」は昨年11月に「女系天皇の容認、男女を問わず第一子を優先した皇位継承順位の変更」などの答申を発表。2000年に亘って皇位継承権を男系子孫に限ってきた皇室の伝統を、1ヵ月に1、2回のペース(計17回)、わずか三十数時間程度の議論で大転換させる結論を出した事に対して、各界から疑問の声が出ている。
 言わずもがな寛仁親王殿下が福祉団体のエッセイで疑問を呈したことが読売新聞に掲載されて広く知られることになったほか、今月発売された文藝春秋二月号でも「天皇さま その血の重み-なぜ私は女系天皇に反対なのか-」との見出しでジャーナリストの櫻井よしこ氏との対談で女系天皇への違和感を明らかにされている。
 こうした皇室の伝統を軽々しく変えようとする動きに違和感を覚えた旧皇族・竹田宮家出身で明治天皇の玄孫(孫の孫)に当たる竹田恒泰氏が、自身の小さい頃の体験や皇室研究の知見を踏まえて「なぜ女性天皇が誕生したのか」「皇統断絶の危機に際して先人たちはどのように対応したのか」などについて歴史を振り返って丁寧にまとめたのが本書である。
 そもそも「万世一系」とは「天皇家の皇位が代々”男系”の子孫に継承されてきた」ことを意味するが、”男系”の子孫とは「父が天皇」「父の父(祖父)が天皇」「父の父の父(曾祖父)が天皇」というように父方の血の父親を辿った場合にどこかで天皇に行き着く人のことを言う(この意味で著者の竹田氏は旧皇族であることから分かるように、天皇家に繋がる”男系男子”の子孫である)。
 この皇位継承の伝統が初代の神武天皇から125代に亘って連綿と繋がってきているにも関わらず、女系天皇を容認する「皇室典範に関する有識者会議」の答申は国民の多くの人が違和感を持つのではないか。少なくとも「愛子様が天皇になってもいいのでは?」という近視眼的な話ではなく、2665年(少なくとも1500年)に亘って先人が守ってきた「万世一系」の皇位継承の伝統を根底から覆すものなのである。日本の歴史上女性天皇は存在したことがあるが女系天皇は一度も存在したことはない。”女系”天皇とは母方の血を辿らないと天皇に繋がらない系統で、家は男が継ぐものと考える世間一般の感覚からは程遠い。このまま皇室典範が改正され、女系天皇を容認し、男女を問わず第一子に皇位を継承させるとどうなるだろうか?例えばの話であるが、愛子様が将来天皇になり、愛子様が成人されて民間の男性と結婚したとする(例えば私の長男やあなたの息子さんと(笑))。二人の間に生まれた第一子が女の子(内親王・私の孫あるいはあなたの孫)だったとしても皇位を継承することになり、天皇になったその女性(今で言うと女王)がまた別の民間の成人男性と結婚、第一子がまた女の子(内親王)で皇位継承し、その子(私あるいはあなたのひ孫)が別の民間の男性と結婚し、また女の子が・・・・というように、世間一般の家を継ぐ観念と乖離しすぎで違和感を覚えないだろうか?
 権威(聖)と権力(俗)を分離させた日本の社会システムは「日本人とユダヤ人」を書いたイザヤ・ベンダサン(山本七平氏)をして「日本人は政治天才」と言わしめたが、まさにその権威の世界の象徴である「世界最古の皇室」を125代に亘って連綿と男系の血統で繋がせてきた皇位継承の仕組みをそう易々と変えるべきではないし、これは変えてはいけないことなのである。確かに現在皇室に男系男子が存在していないことにより皇位継承の危機があるものの、過去三度の男系による皇位継承の危機も先人は遠戚の男系男子を打ち立てるなどして、何とかして「男系の継承」を守り抜いた。その時の事例も本書では説明されている。
 また見落としがちな視点として、天皇が神道の儀式を執り行う祭祀王としての役割を担っている点も非常に重要と言える。本書にもある通り神道では「穢れ(ケガレ)」の思想がある(例えば相撲の土俵に女性が上がれないように)。女性が天皇になると生理中は神道に則った儀式が行えないことになり、神事を執り行う祭祀王としての役割も担えないことになる。やはり家は男が継ぐのが自然である。こんなところにまで男女平等の思想を持ち込む方が教条的で物事をありのままに見ていないといわざるを得ない。男と女には役割がある。有識者会議の吉川座長は「(この報告書は)歴史観や国家観で案を作ったのではない」と公言しているそうだ。今回の皇室典範の改正案が可決されてしまったら、いよいよ「この国のかたち」が破壊されることが決定的になるだろう。少なくとも「愛子様が将来天皇になってもいいんじゃない」位の浅薄な知識で議論してはいけない。日本の権威(聖)の世界の頂点に立つお方の裏付けを断絶させてしまってよいのかという話である。当然良い訳がない。近い将来訪れる皇位継承(万世一系)の危機の際には、明治天皇の玄孫(男系)である著者・竹田氏のような旧皇族の男性を天皇になって頂いてでも男系継承の伝統を守ってもらいたい。元々、旧皇族とされているが、単に戦争でアメリカに負けたために臣籍降下せざるを得なかっただけである。
 

「国家の品格(藤原正彦著/新潮新書)」

2006-01-16 | 書評系
「国家の品格(新潮新書 680円)」
著者:藤原正彦氏
 1943(昭和18)年旧満州生まれ。東京大学理学部数学科卒、同大学院修士課程修了。数学者。コロラド大学助教授等を経てお茶の水女子大学理学部教授。作家新田次郎、藤原ていの次男。『若き数学者のアメリカ』『遥かなるケンブリッジ』『天才の栄光と挫折』など著書多数。共著に『世にも美しい数学入門』がある。
 
 私は数十万部も売れる新書レベルのベストセラー本は、大抵本の内容より日本人的な他の人と一緒の行動を取ることに安心感を感じる大衆的な衝動買いよるものと思っていた。「バカの壁」や「頭がいい人、悪い人の話し方」などのがそれである。この「国家の品格」もその類の本かと思い立ち読みしてみた。

私の考えにピッタリはまる内容ではないか(笑)。

 特にスタンフォード大学の教授が藤原氏の家に遊びに来たときに網戸の向こうから虫の音が聞こえてきたことに対して「あのノイズ(雑音)は何だ?」と聞かれた事に対して

「なんでこんな奴らに戦争で負けたんだろう」

 と思った、と書いてあった文章を見て、立ち読みを止めてレジに向かいました(笑)。昔、藤原氏の「天才の栄光と挫折」を読んだことがあったが、この本は講演記録をもとに加筆したものなので平易な文章であるのも売れている要因と思われるが、祖国愛に溢れた率直な物言いが爽快感を与えてくれるからでもあると思う。

 至極自然な主張である。
 
 
 
 

元旦

2006-01-01 | 日記・雑感系
 昼にお雑煮を食べて、妻と子供と地元の神社に初詣に出掛けた。それにしても寒すぎる・・・。おみくじを引くと【中吉】。中途半端だな・・・。まあ、しかし「凶」よりましか。

 2006年が日本と私と私に関係する人達、偶然このブログを読まれた方にとって素晴らしい年になりますように。