せっかくの土・日なのにあいにくの雨。本屋に行く事もできないし、1歳4ヶ月の子供も外に出られないため、中々昼寝をしない。
さて、「30歳からの成長戦略」に続き、手前勝手な書評をさせてもらう。12月初旬の週末に本屋をブラブラ巡っていた時に買った本だ。
■「ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座~宗教紛争・テロはなぜ終わらないのか~井沢元彦著/徳間書店/¥1,575)」
著者:井沢元彦氏
昭和29(1954)年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒。
TBS入社後、報道局放送記者時代『猿丸幻視行』にて第26回江戸川乱歩賞受賞(26歳)、31 歳にて退社、以後執筆活動に専念。歴史推理・ノンフィクションに独自の世界を開拓。日本推理作家協会理事、BSフジ番組審議会委員
【目次】
はじめに
第1部 ユダヤ・キリスト・イスラム ◎一神教の世界はこうなっている
ユダヤ教はこうして生まれた
キリスト教はこうして生まれた
イスラム教はこうして生まれた
第2部 ユダヤ・キリスト・イスラム ◎一神教それぞれの言い分
キリスト教の言い分 代弁者 パット・ロバートソン(アメリカのテレビ伝道師)
ユダヤ教の言い分 代弁者 ラビ・マービィン・トケイヤー(日本ユダヤ教団のラビ)
イスラム教の言い分 代弁者 ムサ・モハメッド・オマール・サイート
(スーダン共和国駐日特命全権大使)
後書きにかえて~アメリカの友人からの手紙~
(ここまで 297ページ)
一神教の世界を読み解く資料編
(以上 344ページ)
井沢元彦氏は、「逆説の日本史」などで有名だが、不勉強ながら氏の著作を読んだのは、これが初めだった。「はじめに」や「後書きにかえて」で述べている様に、”日本の教育課程で宗教が軽視されているため、極めて多くの人々がその重要性を認識していない”とは、まさにその通りだろう。
特に、ユダヤ、キリスト、イスラム教(キリスト教の方は結構いそうだが・・・)については、一般の日本人が通常の日常生活を送る上で全く知らなくても、殆ど問題ないのが現状だろう。
しかしながら、世界に目を向ければ、それぞれの「一神教のパラダイム」で世界を認識し、国家、企業、社会、個人が動いているのが現実だ。その背景となっている一神教のユダヤ・キリスト・イスラム教の成り立ち、各教徒のメンタリティを日本人は知っていないと世界で戦っていけないといわざるを得ない。ましてや、世界に目を向けなくても、既に日本でも外国人と一緒に働くのが当たり前の企業もあるし、海外旅行などに行く人は沢山いるだろう。
その意味で、彼らのメンタリティ(本音の部分)を知っておくのは最低限の教養として損はないだろう。
井沢氏のこの本は、第1部で各宗教の成り立ちを自分の言葉で解説し、第2部で各宗教の著名人に直接インタビューすることで、それぞれのメンタリティや宗教間の相違を探っている。
一神教の宗教に関心が全くなくても、海外勤務の方、日本で働いていても社内で外国人と共に仕事をする方、世界で起きている事件やニュースの背景を知りたい人には好著だと思う。
キリスト教代弁者(パット・ロバートソン氏)やユダヤ教代弁者(ラビ・M・トケイヤー氏)の項を読めばわかるが、聖書の予言によればメシア(救世主)が再臨するためには①ユダヤ人がイスラエルの地に集まっていて数々の苦難に遭う②イエス・キリストを救世主として受け入れる、との条件がある。そのためにアメリカはイスラエルを援助しているし、本の中に出ているパット・ロバートソン氏はユダヤ人を援助しているという。そうすれば、救世主が再臨し、キリスト教徒は、至福千年王国の恵を享受できることなる。
一般の日本人には馴染みがないが、世界の現実として「聖書」の予言を信じ、もしくは、積極的にその予言を成就させようとして、メシア(救世主)を待望している人達が世界には数億万人もいるということを認識しなくてはならないということだろう。
私は、凡人なので、つくづく、日本人に生まれて幸せだったと実感してしまった。「神様・仏様・稲尾様(ちょっと古すぎか)」の国民だからこそ、これら一神教の宗教を客観的に捉えることができるし、「共存共栄」の精神で寛容に受け入れられる。
【勝手な】関連書籍
1.「ユダヤ五000年の知恵(聖典タルムード発想の秘密)」
ラビ・M・トケイヤー著 講談社+α文庫 昔は¥740
→高3か浪人時代に読んだ本で、世界人口比2%(約1,500万人)
のユダヤ人の強さ(というか頭の良さの理由)がわかる。
小さい頃からこんなテキストを読んで、自分なりの解釈論を
確立し、他者を説得するためのロジックを構築するために
論理思考を鍛え、議論をし合っているという。しかも、
それが「神との契約」の下に数千年も行われているのであるから、
「あいまいな日本人」が太刀打ちできる訳がないと思ってしまった。
2.「日本人とユダヤ人」
イザヤ・ベンダサン (著) 角川文庫ソフィア ¥483
→浪人時代に代ゼミの本屋で何気なく手にして読んだ
もう忘れてしまったが、日本人の国民性を「日本教」にある
と捉え、ユダヤとの対比をしていたと思う。権威(聖)と権
力(俗)の区別ができている日本社会(人)を「政治天才」と
書いていたと記憶している(今、手元にないので曖昧ですが)。
ちなみに、このイザヤ・ベンダサン氏とは何者?と思ったが
訳者の山本七平氏のペンネームというのが定説となっている。
その意味で、山本七平氏(1921~1991)のユダヤ・キリスト教の
知識には驚いたし、日本文化・社会を見る洞察力には舌を巻いた。
~一神教を知る前に自分達、日本人の思考の枠組みを知るために~
3.「武士道」 新渡戸稲造著 奈良本辰也著 三笠書房
(おそらく、今は文庫本だと思うが、私が買った当時=大学時代は
¥1,130 岩波より訳が良くて読みやすい)
言わずと知れた新渡戸稲造(国際連盟事務次長、旧制一高校長、東京
女子大学長ほか)博士の記念碑的著作。今の日本人でこのような本を
英語で書ける人は少ないだろう。新渡戸博士の英語能力の抜きん出た
実力は『英語達人列伝 斎藤兆史著 中公新書 ¥798 2000年初版』
に詳しいので是非、読んで欲しい。博士の18歳当時読んでいた英文と
武士道の原文(英文数行)が載っている。去年か一昨年辺りに「武士
道」は密かにブームになっていたので読んだ方は多いだろう。中学生
・高校生の必読書にして欲しいくらいだ。
4.「武士道の源流 陽明学がわかる本 日本人の人生美学をさぐる」
(長尾 剛著 PHP研究所 ¥1,365)
これは、「ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座」と同時期(去年の
12月)に買って読んだ本。著者が大塩平八郎になって日本の歴史上、
陽明学を矜持として生きた人達を時系列的に紹介していく本。
やはり、日本人は「知行合一」ですよ。中々、面白いです。