調査員の「目」

 日常の何気ない雑感とつれづれ日記。

「焼け跡の青春 佐々淳行~ぼくの昭和20年代~文春文庫」

2006-07-15 | 書評系
 「焼け跡の青春 佐々淳行~ぼくの昭和20年代~(文春文庫/¥590)」
著者:佐々淳行(さっさ あつゆき)
 昭和5年(1930年)東京生まれ。東京大学法学部卒業後、国家地方警察本部(現警察庁)に入庁。目黒警察署勤務を振り出しに、警視庁調査・外事・警備課長を歴任、「東大安田講堂事件」「連合赤軍浅間山荘事件」等では警備幕僚長として危機管理に携わる。その後、三重県警察本部長、防衛庁官房長、防衛施設庁長官等を経て、86年より初代内閣安全保障室長をつとめ、昭和天皇大喪の礼警備を最後に退官。以降文筆、講演、テレビ出演と幅広く活躍。

 2003年8月に単行本として出版されたものの文庫版。

 著者の佐々氏は「連合赤軍浅間山荘事件」の警備幕僚長として身をもって「危機管理」に携わり、「初代内閣安全保障室長」として著名な方。戦国武将の佐々成政一族の子孫としても知られ、現在でも月に1回程、日本テレビ「ズームイン!!SUPER」でコメンテーターとして出演している。

 本書は昭和20年8月15日の終戦の日から佐々氏が東大を卒業して国家地方警察本部(現警察庁)に入る前までの、10代半ば~20代前半までの青春録を昭和20年代の終戦後の日本の世相を下敷きとしながら叙述したもので、今日では考えられない終戦当時の悲惨な食糧事情や衛生環境の劣悪さ(満員電車の中で女性の髪にシラミが動いていた、などのリアルな記述もある)が感じられる上、当時の厳しい環境を「初代内閣安全保障室長」を務める佐々氏がどのような青春を過ごし、人格形成を図ってきたのかがよく分かる内容となっている。
 
 佐々氏の父・佐々弘雄氏が終戦の日の朝日新聞の社説「一億相哭(そうこく)の秋(とき)」を書いた人物であったことや(後に参議院議員となり吉田茂に入閣を要請された)、東大時代の「学生土曜会(反共産主義の各大学横断の自由民主ミニ全学連)」に八城政基氏(新生銀行取締役会長)、中尾栄一(元建設大臣)、藤波孝生氏(元官房長官)や友誼団体の「東大新人会」には今日「ナベツネ」と呼ばれる読売新聞会長・渡邉恒雄氏、日テレ会長・氏家齋一郎氏などの錚々たる人物がいたことが書かれている。

 このほかにも成蹊高校時代の思い出や東大時代の「インテリやくざ」の逸話、警察三級試験に3,600人中二位の成績で合格したことなども書かれていて、佐々氏の青春時代を知りたい人にはもってこいの本だと思う。

 私は本書に続く「目黒警察署物語~佐々警部補パトロール日記」ほかのシリーズを読みたいと思った。
  
 文庫本で安いのでお勧めです。