靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

過去、これから、そして今

2011-01-25 00:45:38 | 私史
初めての海外旅行はインドだった。16歳の時のこと。父親と二人、インド人のガイドさんとともに1週間。

「どうしてもインドへ行きたい。」と頼み込み、裕福な家庭ではなかったのだけれど、父親が連れて行ってくれた。

汚物にまみれた熱気、道端で眠る人々、やせこけた牛やヤギが人力車のような乗り物の横を歩く。市場に並ぶ見たこともない食べ物の匂い。服が引き裂かれそうな程の物乞い。ガンジス川に流される死体、その横で歯を磨く人々。街に溢れるサリーの色彩。

学校と家の往復で毎日が過ぎていた生活。世界には全く違う暮らしが存在するのだ、と全身で感じた。

帰国後、ガンジス川の水にあたり、一ヶ月ほど体調を壊した。多感な思春期、精神面でも、しばらく口を聞けない程のショック状態だった。

あの時、文化人類学を学ぼうと決めたのだった。自身が埋め込まれた仕組みが唯一ではない。世界は様々な仕組み・文化に溢れている!



研究者になろうと、大学院へ進み、「アラスカ先住民の仮面」を3年間追い続け、修士論文を書き終えた次の日に、長男妊娠を知った。

ちょうど12年前の今頃。日本・アラスカでの2年間の別居婚からアラスカ移住。

子育て・家庭と勉学、バリバリ両立!とならなかったのは、もちろん状況もあるのだけれど、私の場合は、ひとえに「自身の未熟さ」ゆえだった。

数年抱えた葛藤から、身体も精神も壊した。7年前のこと。



ここ数年、劇的に自身が変わってきたのを感じている。価値観から何から。根拠のない安心感とやる気。開き直り?(笑)

目の前には、粉々に砕かれた思春期の理想、が横たわっている。そして、今、欠片を集め、これからの道、を築き始めている。

一歩一歩進んでいきたい。「結果」は「今ここ」に踏み出す一歩に、後からついてくるもの。執着を手放しつつ。



10年近く会っていない父母、夫、子供達に感謝。そして、こんな私の近くにいてくれる友人達、ブログを読んでくださる方々に、心よりの感謝を込めて。


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12 コメント

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Unknown (てぃ)
2011-01-25 04:47:54
そうだったね。ガイドさんとお父さんと三人のインド旅行の写真を妙に覚えています。あの頃のほうが近くにいたのに個人的な心情としては今の方が近いかも。

仕事や勉学とと家事の両立は確かにしんどいけども、やりがいはあるよね。でも仕事だけ、家事だけでもやっぱり意味はあるんだと思う。まっすぐに直線距離で行くだけがすべてではないし、いままでやりたいとおもってできなかったこと、その葛藤、そのこと自体にも意味があると思います。お互い、ゆっくり楽しみながらいきましょう。あるいたところが道になるんだよね。高村光太郎さん曰く。
感謝をこめて。
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Unknown (Taiyaki Media)
2011-01-25 05:45:26
マチカさんのこれからに期待しちゃいます。機会があれば。研究のお話聞いてみたいです。興味津々なんですけど。笑
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Unknown (OYABAKA)
2011-01-25 09:42:19
マチカさん、いつも全力で走っているよね。
16歳でインド。。。。そこにマチカさんの力の原点があるのでしょうか。
私達も家族で行ったインドでの経験は、ほかの国よりもインパクトが強かったと思う。

"粉々に砕かれた青春期の理想"。。。。
なんか、通じる事のできる言葉です。

"欠片を集め、これからの道、を築き始めている"
それって、すんなり実現してしまった"理想"より、すご~い価値があると思う。

理想って達成したらそれでおしまいじゃなくて、一生追い求めるものだよね(と言ったら、同意を求めてますよね。これはあくまでも私の考え)。

いつもいろいろ考えさせられるテーマを投げかけてくれるマチカさんに感謝してます。

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Unknown (よっちゃん)
2011-01-25 10:34:18
マチカさんがインドに行った時の事よく覚えています。
あの「桜駅」のホームで
「私インドに住みたい」って言って瞳をキラキラ輝かせていたマチカさんに16歳の私は理解不能で???でした。(笑)
今いる世界が唯一では無いという事を16歳で感じていたのですね

小さな世界で生きてる私には、沢山の世界を見ているマチカさんをうらやましいと思う半面、きっと口には出せない苦労がいっぱいあっただろうなと想像します。
マチカさんが未熟なら、甘えの私はどうなってしまうのか…恥ずかしいです
いつもマチカさんの日々の頑張りを尊敬の眼差しで見ています

「幸せ」とは自分で感じるもので誰かが与えてくれるものではないと思うので、どんな環境にいてもお互い幸せを感じて生きて行きたいものです。

ちなみに私はすご~く幸せよ
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Unknown (tintin)
2011-01-26 00:26:53
マチカさんがもしアラスカ研究ではなくインド研究に進んでいたら、会うこともなかったかもしれないね、マチカさんに出会えたことに感謝しています。
かけらを拾い集めて出来る器は、見かけは不完全かもしれないけれど、外からの光が差込むことが出来る。そして内側の柔らかな光ももれ出でることのできる、かけらの色がいろいろだったら、きっときれいだろうな、そんなことを考えました。
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てぃさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2011-01-26 01:16:20
当時、毎週会ってましたものね。先生と生徒という関係で。先生というより勉強をみてくれて相談にのってくれるお姉さんという感覚だったなあ。色々な話を教えてもらって聞いてもらえて、随分と救われていました。その後も関係が続き、こうして2週間違いの子供を産み、お互い海外の東と西で暮らしている。変化のなかで繋がっていられたこと、しかもより近く感じられるなんて、ありがたいです。

仕事や勉学と家庭子育ての両立、確かにやりがいあるでしょうね。仕事をしていた時期もあったのでよくわかります。「どちらかだけでも意味がある」、確かに。状況が許すのならば今は育児に専念しよう、と最後は自ら選択して仕事をやめました。「自身の未熟さ」と書きましたが、その後「価値観の揺れ」が始まりました。今何をすべきなのか、何を本当にしたいのか。結局「すべき」とみえてきたことが「したい」に変わっていき落ち着いていったのかもしれません。「育児」がしたいことだ、とすっきりと言えてしまう時がしばらく続いていたのです。

そして最近です、またふつふつと湧き出してきたのは。一番下が大きくなるにつれて、本当に少しずつ時間ができてきたことが大きいのでしょうね。昔からの流れと統合を始めているようなイメージです。12年間が生きることをしていこうと思ってます。夫と子供との三角形の葛藤の中で、葛藤を糧に。「ゆっくり楽しみながら」というてぃさんの言葉に大きく励まされます。一歩一歩。「歩いたところが道になる」!

ありがとう~!








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Taiyaki Mediaさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2011-01-26 03:02:42
毎日向き合い進んではいますが、世間的な「結果」は、一生出ない、ということもありえます。それでも突き動かされるように、とりつかれたように日々取り組んでいます。確かに日の目をみるような「結果」が出せたとしたら嬉しいのだけれど、究極的には、ここで踏み出す一歩に満たされいます。続けていきますね、手放しつつ。

研究、は最初の一歩を踏み出す前に退いてしまったようなものなので、Taiyaki Mediaさんが面白いと思うような話は何もできないかもしれません。12年間、遠ざかっているし。Taiyaki Mediaさんの方が詳しそうですよ。

Taiyaki Mediaさん、色々なことに研究熱心ですよね。私こそ色々お話聞かせてほしいです。写真や、料理や、音楽や、ブログも始まりましたね!これからの活躍、楽しみにしてますよ~!ありがと~!

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OYABAKAさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2011-01-26 03:32:41
全力で走るために、体力をつけようと思ってます。身体を整えていくことについて最近よく思います。

家族でよく旅行にいかれるOYABAKAさん、インドにも行きましたね!まだ10歳前後だった息子さん娘ちゃんにとっても大きな体験だったでしょうね。家族で世界をみて回るOYABAKAさん一家、いつも素晴らしいなあ、と思ってます。

「粉々に砕かれた・・・」に通じるところありますか。多くの人に大なり小なりあるのじゃないかと思ってます。ここからどう動いていくかなのでしょうね。

欠片を集めることが、「すんなり実現した理想より価値がある」という言葉、大きな励みになりますね。一歩一歩進んでいきます。

「理想は一生追い求めるもの」、同感です!道は一つではないのだと思います。

こちらこそ、いつもOYABAKAさんの生き様、温かいコメントに力強く励まされてます。ありがと~!

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よっちゃんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2011-01-26 03:58:08
桜駅!ああああ懐かしい!小中と一緒で、高校は違っちゃったけど、あの桜駅で会うことができたんだよね。そうか、そんなこと言ってたんだ、住みたいって・・・自分。何だかよっちゃんに話してるとこ思い出されてきた。

なんでインドなのかよく分らなくてね、当時の自分も今も。あれ以来訪れることはなかったのだけれど、今でも懐かしい切ないような気持ちがするんだよね、インドを思うと。

思春期の頃って色々なこと理由もなく感じるよね。意識が広がってる感じだね、それがますますはっきりしてくる肉体の存在にうまくあわないような。

色々な国を訪れはしたけれど、それが一国で暮らしている人より多くを見ている、ということにはならないと思うよ。苦労もひとつの地域で根を張ってる人より多いかといえば、私の場合、日本で暮らしていたほうが苦労してたかも、と思うことも。(笑)よっちゃんの頑張りにいつも脱帽してます。仕事に家事育児に気配り、そしてその包み込むような明るさ!

「幸せは内に感じるもの」、に同感!どこにいたとしても、何をしていたとしても、内に既にあるものだと思います。

よっちゃんの「私は今すご~く幸せよ」という言葉、読んでから何度も心の中に響いてました。とても嬉しくなったよ。色々なことを乗り越え、そう言えるよっちゃんを尊敬してます。ありがと~!

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tintinさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2011-01-27 01:07:00
私もtintinさんに出会えたこと感謝してます。いつも色々な話を聞いてもらい、様々なキーワードでインスパイアーしてくれて、ありがとう!色々な条件が積み重なってこうして出会えたんですね。

「かけらを拾い集めて出来る器は、見かけは不完全かもしれないけれど、外からの光が差込むことが出来る。そして内側の柔らかな光ももれ出でることのできる、かけらの色がいろいろだったら、きっときれいだろうな、」
きれいな言葉・・・。ありがとう・・・。

一つ一つの欠片、大切に握り締め組み合わせていくね。ゆっくり焦ることなく。
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