にわたずみ

松岡永子
日々のことなど

『夏の残骸』 追加

2012-11-07 22:43:55 | 舞台
お芝居の感想というよりも、感想を書いているうちに思考が飛んだこと。
とりとめなくてすみません。


摩莉菜も知子も、部屋をゴミ袋でいっぱいにしている。
摩莉菜に、強盗をするのになぜこの部屋を選んだのか、と訊かれた男は「だってゴミ屋敷って歳取った女の人が住んでるイメージじゃないですか(だから、たいした抵抗されずにすむだろうと予想した)」と答える。
強盗男は知子の部屋に入りこんだときも同じことを言う。

ゴミ屋敷=老女、というのは、強盗男の勝手なイメージだ。
でも。そのイメージはわかる気がする。
他人が見ると役に立たない汚いものを、大切なもののように取って置き、溜めこんで、自分の場所を満たす。モノで外部から自分を守るための壁を作っているようでもある。
(それがなぜ老女のイメージなのかは、またゆっくり考えてみたい)

イメージを作るのは、イメージされる者の側ではなく、概念を作りあげる世間のものだ。
摩莉菜も知子も、世間的には老女の位置づけなのかもしれない。社会的には女として利用できない者。
そんなことを思っていて、なんとなく小野小町を連想した。
美貌でならした小町は、若い時には言い寄る男を寄せつけず、独り年老いて老残の姿を曝したという伝説がある。
能の曲に出てくる小町は、ほとんどが老いた小町だ。醜悪で孤独で無力で、でも馬鹿にする若者をやりこめる一瞬に知性の片鱗を見せる。
世間から距離を置き(あるいは置かれ)、孤独で無力で、でもどこか世間を俗っぽいものと見て蔑むような自負心がある、そんな姿が似通うのだろうか。子供が産めないという、生産的な正しさから切り離されたところかもしれない。
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