にわたずみ

松岡永子
日々のことなど

上布 ~手績み苧麻の布

2014-09-10 23:17:43 | ギャラリー
前の記事の高橋裕博さんの布はすべて手績みの苧麻の布。
糸は中国のもの。

神事に必要だから日本でも麻を栽培してるところはあるらしいですね、といったら、大麻じゃなく(そうですね、神事に使うのはそれですね。栽培を制限されてるのもそれですね)苧麻を栽培しているところはわりとあるよ、と高橋さん。

これは福島・昭和村の麻 
1反の布のためには2束(1束は100匁という)必要。

そして、後藤順子さんが手績みの実演を見せてくれた。



まず根元と先の方向は揃えておく。
いきものには必ず方向があって、裂けかたや毛羽立ちかたが違ってくるからだ。



苧麻に水をつけて裂いていく。乾燥すると繊維が切れてしまう。
質のいいものほど細く長く裂けるそうだ。

ある程度細くなったら… 

つけ爪を付けて、その角にひっかけてさらに細く裂いていく(つけ爪は普通にネイルアートで使うもの)。



で、こんなふうになる。



できあがった繊維を二本取りにして撚っていく。短くなった方の繊維に次の繊維を撚り合わせて(一本になるのが魔法のようだった)継いでゆき、糸を作る。
その糸に1メートル当たり500回の撚りをかけて完成。
経糸・緯糸あわせて40キロメートルの長さが必要で、績むのに3年かけた。
そして2か月かけて織りあげた。



とても薄くて軽い布。
1反の重さは250グラムくらい(普通の上布はだいたい400グラム)。

後藤順子さんは熊本に住んで仕事をしている。
作業場の写真が展示されていた。田んぼの真ん中の古い木の家。天然の加湿装置に囲まれて、さらに家の中は湿度を高めていたので、朝には部屋の中に霧が出ていたこともあるらしい。
湿度を極限まで高くするのは、麻の布を織るため。
麻の繊維は乾燥すると切れてしまう。また、湿気があるため家の中には黴が生えたが、麻糸には生えなかったという。もう黴が食べるような栄養を含んでいない、完全に繊維だけになっているから、と高橋さんが説明した。

 
後藤さんが績んで、高橋さんが染めた布。

どちらも昭和村の苧麻が使われている。
後藤さんは、最も質のいい特Aの苧麻を分けてもらっている(風などで倒れることの少ない、畑の真ん中に植えられているのが良い麻らしい)。良いものを手に入れられるのは、まず高橋さん経由で昭和村の苧麻を手に入れて見本になる布を織り、「こういう布を作っています、続けたいので苧麻を分けてください」と頼んだからだそうだ。

今回織りあがった布は、このあと晒の作業に入る。
草の上に布を広げて灰汁をかけると、日光と水蒸気が作用してオゾンが発生し、布が白くなる、という原理らしい。
晒作業は宇治でするというので、そのようすも見たいです、と高橋さんに頼んできた。

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