鼠丼

神の言葉を鼠が語る

<768> 斉藤和義の「ずっと好きだったんだぜ」を聞きたくなったので

2021-11-29 19:11:56 | 日記

 毎度!ねずみだ。

 斉藤和義の「ずっと好きだったんだぜ」という曲がある。
 地元の同窓会で久しぶりに再開した昔のマドンナに、ずっと言えなかったけど好きだった、と告白する内容。知る人ぞ知る名曲である。

 二つ年上の彼女に会社のカフェスペースで再開した。その女性とは今から20年前になんとなく付き合い始めて、なんとなく「このヒトと結婚するかも。」と考えていた。(結果的には色々あって立ち消えになったが。)
 今考えるとお互いそれほど本気ではなかったのかもしれない。一緒に出掛けて一緒に飯を食べ、同じ時間を過ごした、ただそれだけの仲だったのかも。少なくとも私はそう考えるようにしていた。その後彼女はどこぞの公務員と結婚し、私は今の妻と結婚することに。まあよくある話である。
 同じ会社ではあるがフロアが別々であったこともあり、たまに顔を見かける程度で会話も交わさずにあっという間に時間が経った。これもまたよくある話である。

 今日、たまたま会社の診療所で薬を貰って席に戻る途中、くだんのカフェスペースでばったり彼女に再開した。どちらともなく「久しぶり、元気にしてた?今時間ある?まあ立ち話もなんだから座ろうか。」という事になる。
 当然社内なので知った顔があちこちにいてこちらを窺っているが全く気にしない。通りすがりに振り返ってニヤニヤしている輩もいる。

 話が弾んで一段落したあと、唐突に私の口から「もし、〇〇ちゃんと結婚していたら、って思う事があるよ。結構真面目に好きだったんだよ。」という、自分でもびっくりするセリフが飛び出した。言ってしまった後、本当に自分でもびっくりした。彼女も驚くかと思ったら「そうね、私もボーっとしている時に、△△ちゃんと結婚してたら、人生どうなっていたかってよく考えるよ。なんで結婚しなかったんだろうね。」と返してきた。

 とても会社のカフェスペースで話す内容ではないが、すでに「時効」となった話であり、二人とも若くないので全く恥ずかしくない。お互いに当時撮った写真を今でも持っていることや昔話に花が咲き、あっという間に時間が経ってしまった。色んな所に行った話が次から次へと出てきてとまらない。
 いまでも時々昔の写真を引っ張りだす事があるが、その中の数枚、当時の彼女が浴衣姿で車の横に佇んでいたり、軽井沢の木漏れ日のしたで色あせることなく笑っている。

 それでも。
 これだけは断言できる。彼女は今の夫と、私は今の妻とそれぞれの人生を歩んでいるが、(比較級の問題で)正しかったのだ。少なくとも私にとっては今の妻との生活がベストの選択だった。

 かなりの時間話した後、それぞれ仕事にもどろうという事になる。「多分、今日お互いに告白しておいたほうが良かったって思わない?墓場に持っていったら後悔するよね。なんだかすっきりした。また声かけてよ。」と彼女が言う。「そうだね、今まさに同じことを考えていたよ。」  

 別れ際「今度飲みに行かない?」というセリフが飛び出しそうになったが、そこはぐっとこらえる。調子に乗ってはいけない。
 一人で席に向かう途中、唐突に斉藤和義の「ずっと好きだったんだぜ」が頭の中でエンドレスに流れ始めた。

 じゃ、また。

<767> 秋田の温泉施設でフランス語を聞いたので

2021-11-24 18:55:46 | 日記

 毎度!ねずみだ。

 海外の旅行者が日本の文化に触れようと来日する場合、その人種や目的は大きく分けて二種類に分けられる。東京や京都と言った、いわゆる「有名どころ」を訪れるのが目的の初心者ツアラー。往々にしてツアーで大挙して押しかけてギャーギャー騒ぐ場合が多い。
 そしてもう一方はさびれた田舎の「古き良きマイナーな日本に触れる」ため、ツアーに参加するのではなく一人(あるいは少人数)でローカル線を乗り継ぎ旅するツワモノ達。少数派である。

 さて、先般義理の母親の妹が亡くなった。秋田で一人暮らしだった。コロナの影響で旅行を控えていたが、先般緊急事態宣言が解除されたこともあり墓参りに。
 新幹線で3時間、角館の駅で降りレンタカーを借りる。角館~大曲~田沢湖、というルートである。足の悪い義理の母親のため、先方での移動に車を選んだ。

 一日目の角館では山あいの温泉施設のある宿に泊まった。温泉施設を併設しているだけあって、多くの家族連れで賑わっている。混んでいる時間に長い時間風呂に浸かる事を良しとしないので、すぐに上がる。早朝の人が居ない時間を狙って二度目の風呂に入る事に。やはり妻も「女風呂が混んでいたので、さっさと上がっちゃった。」と言っている。
 妻と二人朝6時に起き、風呂に向かう。男風呂はほぼ貸し切りの状態で私の他には一人しかいない。恰幅の良い角刈りで年は私と同じくらいか。
 
 見回りの時間だったのだろう、そこに宿の男が入ってきた。
 件の角刈りの男が宿の男に話しかける。早口でごにょごにょ言っているが、離れているためこちらでは聞き取れない。角刈りの男は身振り手振りを交え話すが、宿の男は「ああ、わがんねーなー。」と手を振って行ってしまった。言葉が通じなかったのかもしれない。そう言えばなんとなくイントネーションはフランス語のそれに似ていた。

 角刈りの男と私が脱衣所に取り残される。ちらりと見るとモンゴルだか大陸だか、あっちの顔に見えなくもない。日本と違ってフランスは多国籍の人を多く抱えているので、モンゴル系の人が居てもおかしくない。こんな山あいの温泉施設に訪れたは良いが不案内で困っているのだろう。

 以前に何度か書いたが、私は旅行先で困っている外国の方(または困っていない外国の方)に積極的に話しかけるのが好きだ。彼らは日本に行ってしまえばなんとかなるだろうと思って来ているが、なかなか「郷に入りては郷に従」うのが難しいのだ。そんな折に国際交流を心がけるのが私の信条。
 今回もとりあえず話しかけることに。フランス語は喋れないが、日本に来るんだったら英語ぐらいは話すだろう。お互いネイティブじゃない方が英語は伝わりやすいのだ。(これ本当の話。)

 目が合ったタイミングで「失礼ですが、何かお困りのようで。どちらからお越しですか(←これ英語ね。)」と話しかける。角刈りは「?」と言った感じである。そこで「どちらの国からいらっしゃったのですか?(←これも英語ね。)」と重ねてゆっくり問うてみる。

 角刈りの男が「カ、カントリー?ジャ、ジャパン。アキタ。」と答えた。

 何のことは無い、彼は日本人で秋田県人で、フランス語に聞こえたのは秋田弁だったのだ。
 あとで聞いたら、地元の人でたまに朝風呂に来るらしい。

 久しぶりに痛恨の極みだフランス語だと思ったら秋田弁じゃないかよしゃべるんだったら字幕つけろよ秋田弁共通語でしゃべれよ恥かいちゃったじゃねーか。(会社に青森出身の奴がいるんだが、そいつに話したら大爆笑してたよ。)

 じゃ、また。