鼠丼

神の言葉を鼠が語る

<758> 急にカブが欲しくなったので

2021-05-24 19:02:34 | 日記

 毎度 ねずみだ。

 急にカブが欲しくなった。カブと言っても、畑からよっこらしょと引っこ抜いてきて、漬物なんかにするあれではない。はたまた東京証券取引所で扱っていて、10円の上げ下げに一喜一憂するあれでもない。
 ホンダが製造販売している、あの原付バイクである。世界で累計1億台以上も売っている、あれである。朝早くから新聞配達が新聞を配りながらブイーンと音を立てている、あれである。(最近は電動バイクが増えているらしいからブイーンとは言わないかも。)

 今考えても「なんでバイクなんか欲しくなったのか?」と思う。家にはちゃんと車もあるし、近所の駅まで歩いて10分、バス停なら歩いて3分。最寄駅から新宿まで15分で着いてしまう。
 18歳の時に友人のお父さんのカブに乗ってみて3秒で転倒して骨を折って以来、「もう二度とバイクになんか乗るもんか!」と反省したはずなのに。
 
 たまたまネットで電動バイクを見たのがきっかけだった。中国製のそのバイクは普通免許があれば運転できる。いかにも「原チャリ」というのではなく、なんとなくバイクをギューッと小さくしたスタイリッシュなフォルム。うーん、欲しい!と思ってしまった。
 しかし中国製なのでどうなの?と思っていたらたまたま「今、原付を買うならこれ!」みたいなページに辿り着き、そこでカブの兄弟分、クロスカブと目が合ってしまったのだ。
 おおこれじゃこれじゃ、これが欲しい。49ccなら2種免許も不要。今ある普通免許で乗れる。へそくりも一括支払いできるくらいは貯まっている。

 そこで妻に相談する。「ダメ!」と瞬殺された。

 まあ、そう言われる事は先刻承知している。先ほどの「3秒落車骨折事件」も知っている彼女であるから当然と言えば当然。こっそり買って実家に置いておいたらどうだろうか、と考える。まあ遅かれ早かればれるだろうな。いかに現在空き家になっているとは言え、子供が物置におもちゃを隠して置くのとは訳が違う。49ccの原付とは言え全長2m弱の長さである。実家に行けばすぐに「これ何?」とばれるだろう。「やや、こんなところにバイクが!誰かが乗り捨てたのだろうか?」などと言い逃れできるとは思えない。

 私があまりに欲しがるものだから、妻は「乗らないなら買っても良い。」と言い出した。おお、その手があったか!エッチなおじさんが若い女の子に向かって「何もしないからホテルに行こう!」と言うのと同じだ。
 買ってしまえばなんとでもなる。そこであっちこっちのバイク屋に電話してみると、3か月から4か月待ちだそうだ。コロナの影響で昔バイクに乗ってたオッサン連中が「カブならいきなり乗っても大丈夫だろう」と予約しまくっているらしい。
 それを聞いた妻が「ね、だから諦めなよ。神様が買うな、と言ってるのよ。」と満足げに言う。

 すると、近所のバイク屋から電話がかかってきて「今予約している女性がいるんだけどリトルカブとクロスカブ、どちらか決めあぐねているんだけど、もしその女性がリトルカブを選んだら、そっちに回そうか?」と言う。
 すぐに飛びついたが、妻からは「期待するだけ無駄よ。」と言われる始末。そんなこんなで「まあ買えなくてもしょうがないか。」と諦めかける。

 で、数日が経過。

 バイク屋から連絡があった。「お客さんラッキーだね。予約した女性がリトルカブに決めたよ。」だって。

 という訳で妻のいないタイミングを見計らって、へそくりと印鑑をつかむや否や自転車でバイク屋に向かってしまった。

 勢いでクロスカブを買ってしまったよ。買ってしまったからにはもう遅いのだ。

 じゃ!