鼠丼

神の言葉を鼠が語る

<667>

2015-10-14 18:10:39 | 日記
 毎度!ねずみだ。

 時々、ふと思い出したようにネットで旧友の名前を検索することがある。

 学生時代に一緒に酒を酌み交わした奴らが皆それぞれの分野でそこそこの役職に就き、ひとかどの人物になっている。中には大出世している奴もいる。
 まあ、大学を卒業してから四半世紀が過ぎているのだから、みな自分のフィールドで活躍しているのがあたりまえと言えば当たり前。

 学生時代から友好関係が広いわけではなかった。数少ない友人達がどうしているのか、名前を入れて検索をかけてみる。同姓同名が多い中ですぐにHITする者もあれば、私のように市井に埋もれてHITしない輩もうるさい放っておいてくれ。

 大学を卒業したあと、いきなりイタリアにバイオリンを作りに行ったヤツがいた。冗談だと思って「むこうで落ち着いたら手紙くれよ。」と伝えたら、「生きていたら連絡するよ。」と言い残して本当に出かけてしまった。
 日本ではいつも「金がない。」と、女にメシを奢ってもらっているようなやつだったので、すぐにへこたれて帰ってくるのだろうと思っていたら、暫くして手紙が来た。クレモナというところで修行を始めたとのことだった。貧乏で「ジャガイモと塩茹でパスタで命を繋ぎとめている。」という内容だった。空港の貨物仕分けの仕事を見つけて食いつなぎながらもその一方でイタリアのご婦人のヒモのような生活を始めたと語っていた。
 日本にいる頃と変わらないのか、こりゃまたたいした男だ、と感心したのを憶えている。

 なんどか手紙をやり取りしていている間に疎遠になり、時々思い出している程度だった。
 
 パソコンで名前を入れて検索してみても、ありふれた名前のせいかHITせず、さては志半ばにしてくたばったかと思っていたが、先日「クレモナ」というキーワードを追加して再検索したところ、ひょんなところで見事に食いついた。なんでこんな簡単なことに気がつかなかったのだろうか、というくらい簡単に。

 ヤツはちゃんと生きていた。そればかりか、ちゃんとバイオリン製作で食っているらしい。 
 日本のとあるバイオリン製作者がたまたまクレモナで彼の隣の部屋を借り、一時期彼とともにバイオリン製作修行をしたそうだ。その方のホームページに彼の名前が埋もれていたのがHITした。
 
 なんとか食っているだけでなく、ちゃんと日本弦楽器製作者協会というのに名を連ねていて、とある大会で彼のバイオリンが最考評価を受けたこともあるそうだ。

 ネットの世界での邂逅。細い糸を手繰り寄せたら、思わぬ情報にぶち当たった。

 なんだかこういうのが嬉しい。
 
 じゃ!