鼠丼

神の言葉を鼠が語る

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2014-12-02 12:26:02 | 日記
 毎度!ねずみだ。

 先日、奥さんと日帰り旅行に出かけた。

 新宿から小田急ロマンスカー(このレトロな響きが良いね。)に乗り、小田原で昼食。海鮮丼と金目鯛の煮付けに舌鼓を打ち、箱根湯元へ。露天風呂に浸かって蕎麦を食い家路に、というささやかなもの。

 その露天風呂での出来事。

 露天風呂に一人の男が入ってきた。肌が浅黒く中南米の顔立ちである。歳のころなら40歳くらいか。すっぽんぽんで露天風呂に入る習慣が無いのか、海水パンツを履いて腰にはバスタオルを巻いている。 
 温泉に浮かぶ葉っぱをすくっていた掃除のオバサンが目ざとく見つけて「ノータオル、ノータオル!」と叫んでいるが、本人にとっては何のことやら理解できないらしいまあそりゃそうだ。ノータオルってなんだよそりゃ。

 私が浸かっていた風呂にそのまま入ろうとしたので、そこは国際人として名高い私がレクチャーしてやろうと思い話しかけた。
「どこから来たんだ?」(ここ勿論英語ね。)
 話しかけると、「ペルー」という答えが。なるほど、ペルーから来たのなら日本の古式ゆかしい伝統の共同浴場作法などというものを知らないのも納得。
「ペルー?そりゃ遠いところから来たんだね。ところでペルーにもこんな感じの屋外浴場はあるのかい?」(くどい様だが勿論英語で。)
 周囲で温泉に浸かっているおっさん連中が興味深げに見ている。どうせおまえらにはわからねえだろうけどね。

「ペルーじゃどうだか知らないが、日本では露天風呂に入る時はバスタオルは脱衣所に置いて、小さいタオルだけ持って入るんだよ。それと、小さいタオルは体を洗うためにあるんだから、温泉の中に入れちゃだめだね。頭の上か脇の岩の上にでも置くのがマナーだ。」
 すると、流暢な英語で丁寧な説明を受けたペルー男は合点がいったようで、温泉の中で体を拭いていたタオルをとなりの岩の上に置いた。ふむふむそれで良い。

 調子に乗った私は「郷に入りては郷に従え、という言葉もあるが、日本に来たなら日本のマナーを守るようにしなければね。」などと教えてやる。

 周囲のおっさん達が関心して私を見ている。ま、たいしたことはないよ諸君。

 で、さらに会話を広げようとして「今回はどの位日本に滞在するんだ?」と聞いたところ、「いや、横浜にすんでいるんだよ。」という答えが。あれれ、なんだこいつ日本に住んでいるのか、ということになった。「なんだ日本に住んでいるのか、どこに住んでいるんだ?(だったら、ペルーとか言うんじゃねえよこのやろう。)」「神奈川の藤沢で店をやっている。」
などというやりとりが。さらに複雑な話をしようとして、だんだん私の英語力が限界を迎え始める。とうとうつっかえつっかえになり始めた時に。

 ペルー人が急に「あ、言わなかったけど日本語大丈夫ですよ。」などと言いやがった。かなりしっかりした日本語だったので周囲のおっさん達は思わず失笑。

 ええっと、そういう事は始めに言いなさい。穴があったら入りたいよこっちは。まあお湯を張った穴にはさっきから入っているんだがね。ちくしょー。さっさと湯船を出て逃げ出してしまいたかったよ。


 じゃ!


<653>

2014-12-01 13:14:20 | 日記
 毎度!ねずみだ。

 奥さんの職場での話。
 仕事が遅い(よく言えば丁寧、悪く言えば非効率的)担当が一人いて、そいつの上長が過去に何度も注意していたのだが、ついに会社を辞めることにしたそうだ。

 これだけの話ならそのあたりに掃いて捨てるほどあるのだが、びっくりしたのが、辞める際に言った言葉。「なんとなく自分には向いてないと思うんで。自分に合う仕事を探します。」とノタマッタらしい。さらにそいつの年齢を聞いてびっくり。46歳だそうだ。

 46歳になるまで、自分に向いていない仕事を続けられていたのなら、それは自分に向いていた仕事だと言うべきではないだろうか?もし本当に向いていなかったのであれば、仕事に就いてすぐ見切りをつけて辞めるべきだったのでは?
 46歳で新規に仕事を見つけようとして、そう簡単に見つかるわけではあるまいて。給料面でもステータスの面でも現状より下がってしまうのは予め分かっている。そもそも、労働の対価として給料を貰っている社会人ならば、与えられた職域で努力して最大限の効果を生み出すのが当たり前である。

 そもそも私を含め、世の中の会社勤めのほとんどが「抜きん出た資格を持って」いないし、「手に職をつけて」もいない。「超一流のアスリート」でもなければ「周囲の目を引く美男美女」でもない。
 早い話が「その他大勢」の一人である。人生の何年かをだらだら過ごしてきた結果として、今の現実がある。そんなことは分かりきっているのに、幾つになっても「もしかしたら他の自分を見つけちゃうかも」と目を輝かせているのだろうか。

 それで生きていけるのなら、よほど日本が温(ぬる)くて平和で生活しやすい国である証拠。

 もっと現実を直視しないとね。自分の思った通りの仕事につけて、思ったとおりの配偶者と結婚して、思ったとおりの人生を歩いている人が何人いるだろうか?
 皆、「子供の頃に夢見たのとは程遠い人生だけど」と思いながらも、歯を食いしばって現実と折り合いをつけてなんとか生きているのだ。そしてある晩ふとんの中でふと思い返して「まあまあの人生だ。」と納得する。そしてまた現実の中に戻っていくのだ。

 私の人生?「まあまあの人生」かって?とんでもない。

「上々の人生」だ。