ヘパリン誘導体は、神経芽細胞腫の成長を抑制する
デュークMedicineの研究者は、ヘパリン(凝血塊が形をなすのを防止するために血液を希釈化する注射薬)の派生型を使用して神経芽細胞腫を治療するための新しい戦略を確かめた。
ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーションで発表される研究は、ヘパリンの血液低粘稠化の特性を取り除くと、重症の出血を引き起こすことなく神経芽細胞腫を抑制して縮小することができることを発見した。
神経芽細胞腫と他の固形腫瘍の間の差の1つは、ストロマの機能または腫瘍周囲の結合組織である。
「ほとんどの場合、我々は固形腫瘍では、癌が侵襲性になるのを助ける悪いものとしてストロマを考える。神経芽細胞腫において、それは正反対である。つまり、腫瘍周辺に多くの結合組織があることは患者にとって好都合である」、デューク大学のC. Blobe医学博士は言った。
結合組織は、硫酸ヘパリン・プロテオグリカン(heparan sulfate proteoglycans; HSPG)と呼ばれる神経系シグナル伝達に関係する受容体を産生してリリースすることを研究者は確かめた。
硫酸ヘパリン・プロテオグリカンは癌細胞に分化の影響を及ぼして、未発達の癌細胞をより成熟したニューロンのように振る舞わせ、それらが増殖しないようにした。
硫酸ヘパリン・プロテオグリカンは抗凝固性のヘパリンと構造的に類似している。そしてそれは研究者に、ヘパリンが自然にストロマで生じている機能を再現するかもしれないと仮定させた。
彼らは、培養したヒトの神経芽細胞腫の細胞ならびに神経芽細胞腫のマウスにヘパリンを投与した。それは癌細胞を分化させ、マウスの腫瘍を消失させた。
しかしながら、ヘパリンは重症の出血を引き起こした。
研究者はヘパリンの構造を研究して、血液凝固の阻止のために必要な特性とは関係なく、いくつかの特性だけが分化を促進するシグナル伝達にとって重要だと確定した。
この発見により、分化を誘導できるが血液凝固の阻止は生じないというヘパリンの派生物を彼らは同定した。
学術誌参照:
1.ストロマの硫酸ヘパリンは、神経芽細胞を分化させて、神経芽細胞腫の成長を抑制する。
ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140617130758.htm
<コメント>
ヘパリン、硫酸ヘパリンプロテオグリカン(heparan sulfate proteoglycans; HSPG)、2-Oまたは3-O-脱硫酸化ヘパリン(2-O, 3-O-desulfated heparin; ODSH)は、ERK1/2リン酸化を介して転写因子のID1(inhibitor DNA binding 1)を発現させて、神経芽細胞腫の分化を誘導するという内容です。
同様に、硫酸ヘパリン修飾(heparan sulfate modification)された可溶性の受容体(soluble receptor)、例えばTβRIII、GPC1、GPC3、SDC3、SDC4(論文中ではsTβRIII、sGPC1、sGPC3のように表される)も分化を誘導することが可能だったと論文にはあります。
硫酸ヘパリン修飾ができないようにアミノ酸を置換するとそれが不可能になりました(TβRIIIの534番目のセリン残基からアラニンへの置換; S534A)。
レチノイン酸と急性前骨髄球性白血病の場合とは異なり、FGF2による神経芽細胞腫の分化を促進して効果を発揮するようです。
![](http://dm5migu4zj3pb.cloudfront.net/manuscripts/74000/74270/medium/JCI74270.f5.jpg)