機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2014年7月3日

2014-07-09 18:08:46 | 免疫

宿主の遺伝的性質は、重症の結核で肺の損傷の一因となる可能性がある



全集団の3分の1は、結核(tuberculosis; Tb)の原因となる細菌のミコバクテリウム(mycobacterium)に感染している。

ほとんどのキャリアは感染を制御して無症候性であるが、重症型の結核は毎年100万人以上を殺す。

重症型は小児と免疫的に易感染性の成人に広く見られ、しばしば高毒性(hypervirulent)のミコバクテリウム株によって引き起こされる。

今回PLOS病原体で7月3日に発表された論文は、重症のTBで肺の損傷を悪化させる、宿主によってもたらされる『因子』を特定する。

また今回の研究結果は、その『因子』を不活性化する遺伝子突然変異が、なぜ一般に広く見られるかについても示唆する。



悪性のTBの基礎にあるメカニズムを理解するため、研究者たちはヒトでの重症の肺結核の症状を再現するマウス・モデルをよく観察した。

ヒトの患者と同様に、2つの異なる高毒性ミコバクテリウム株に感染したマウスは肺で壊死病変を生じた(壊死病変は細胞が開放性に破損して内容物を放出する死細胞の領域である)。

壊死性残屑(necrotic debris)には宿主の免疫細胞の流入を促進する分子が含まれる。その結果として生じる局所の炎症は、肺組織の更なる損傷を引き起こす。

壊死性残屑の1つは、エネルギー貯蔵分子のATPである。細胞の外側のATPは、P2X7受容体(P2X7R)に結合して免疫細胞を刺激する。

P2X7Rを欠損するマウスは、2つの高毒性のミコバクテリウム株による通常ならば致命的なはずの感染を乗り切った。



さらに詳細な分析の結果、P2X7RはTBの悪性化において二重の役割があることが示唆された。

まず第1に、P2X7Rは感染した免疫細胞を殺すがその中身(つまり処理を生き残った生存能力のあるミコバクテリウム)を放出することによって、高毒性のミコバクテリウムの伝播を促進する。

第2に、P2X7Rは広範囲にわたる組織破壊を促進することによって、肺炎症と損傷の一因となるようである。

P2X7Rを欠損するマウスにおいて、より良好な結果は、高毒性ミコバクテリウムの感染後にしか見られなかった。

研究者がマウスをより悪性でないTBの病原菌に感染させると、予想に反してP2X7Rは感染を制御するのを助けた。

この場合、感染した免疫細胞のP2X7Rによって媒介される刺激は、細胞死と生存可能なミコバクテリウムの放出という結果にはならず、実際には感染を拡大するよりはむしろ封じ込めた。



高毒性(hypervirulent)および悪性度の高くない(less aggressive)ミコバクテリウム株による肺感染に対するP2X7Rの逆の影響は、それぞれ、疫学的パズルを説明する可能性がある:

P2X7Rの機能喪失対立遺伝子(すなわちP2X7R遺伝子の欠陥のある異型)は、それらが肺結核を発症する危険性の高さにつながるにもかかわらず、ヒトに広く見られる。

今回の研究結果は、そのような機能喪失の異型は軽度のTBのリスクを増すかもしれないが、重症のTBのリスクを低下させるかもしれないことを示唆する。

研究者は「なぜ進化の圧力がヒトの集団でこれらの遺伝子多型性を高率に維持したかについて、説明できる」と言う。

さらに研究者は「P2X7Rを阻害する薬がTbの悪性の様態の結果を改善する新しい治療的なアプローチの開発に展望を提供する」と述べる。

学術誌参照:
1.高毒性ミコバクテリウムによる肺感染は、結核の悪性の形態におけるP2X7受容体の重要な役割を明らかにする。

PLoS病原体、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140703142338.htm



<コメント>
P2X7Rの機能喪失型は結核を発症しやすくなる代わりに、高毒性の結核菌でも重症にはなりにくく、
P2X7Rが機能する人は高毒性の結核菌で悪化しやすいものの、悪性度の高くない結核菌では発症しにくくなるという記事です。

高毒性株の結核菌の急激な増殖によりダメージを受けたマクロファージからはATPが放出され、オートクリンまたはパラクリンにP2X7Rに結合します。
P2X7Rシグナルは結核菌の成分と協力して膜を溶解し、壊死(necrotic death)を引き起こして結核菌を拡散させるようです。


2014年7月3日

2014-07-09 16:16:37 | 生命

甘い遺伝子:
代謝がDNAの調節にリンクされる新しい方法が見つかる




Alberta大学の研究チームは、代謝がDNAの調節とリンクするための新しい方法を発見した。

DNAは細胞核のヒストンという特殊なタンパク質の周囲に巻きつく。

通常、ヒストンはDNAをきつく凝縮するように保つことで遺伝子の発現とDNAの複製を妨げる。

しかし、DNAの複製は細胞成長と分裂のために必要であり、その重要な機能が実行されるためにヒストンはアセチル基の結合で修飾される必要がある。

アセチル基はアセチルCoAという重要な分子によって供与され、アセチル基の結合はDNAをゆるめる。それはDNAの複製と遺伝子発現を許す。

この「DNAのエピジェネティック調節」というメカニズムは、正常な機能ならびに心不全または癌の様な疾患に共通して重要である。

これまで、核がどのようにしてヒストンのアセチル化のためにアセチルCoAを生成するかは確認されないままだった。



ポストドクターGopinath Sutendraと教授Evangelos Michelakisによって指揮される研究チームは、ミトコンドリアの中にだけ存在すると考えられてきたピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)酵素が、実際には核に入ってアセチルCoAを生成できる可能性を発見した。

ミトコンドリアでのPDCは、我々の食事から炭水化物を使用して、エネルギー産生のためにアセチルCoAを生成する。

核に入ったPDCは、ヒストンのアセチル化のためにアセチルCoAを生成する。

研究チームはさらに、PDCの核へのトランスロケーションが癌をより急速に発達させることを発見した。

学術誌参照:
1.核ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体は、アセチルCoAとヒストン・アセチル化の生成にとって重要である。

Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140703151821.htm

<コメント>
ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)はEGFなどのシグナルによってミトコンドリアから細胞核に移行して、ヒストンのアセチル化に必要なアセチルCoAを供給するという記事です。

ヒストンのアセチル化という言葉で分かった気になっていましたが、確かに、アセチル基の供給がないとアセチル化はできませんよね。




2014年7月3日

2014-07-09 14:50:42 | 

腫瘍は成長するために環境を改造する



サンフォード・バーナム医学研究所の科学者は、腫瘍を囲んでいる細胞のp62というタンパク質の喪失が、腫瘍の成長と進行を増強する可能性があることを発見した。

腫瘍の微細環境を目標とする治療法は、腫瘍そのものを目標とするのと同程度に重要かもしれない。

「我々の研究は、ストロマ細胞が上皮癌細胞の腫瘍形成を促進するために使う正確な機序を明らかにする」、サンフォード・バーナムのJorge Moscat博士は言う。

「p62はストロマにおいて抗炎症腫瘍サプレッサとしての機能を果たし、癌を促進する炎症性の環境とシグナルを制御する。p62がないと腫瘍はより大きくなり、転移しやすい傾向がある。」



Moscatと同僚は以前、前立腺癌および肺癌の上皮細胞におけるp62活性化が腫瘍を促進することを証明した。

今回の研究で、腫瘍に隣接した組織のp62は反対の影響を持つことがわかった。

「これらはきわめて重要な観察である。p62はmTORという別のタンパク質を活性化するからだ」、共著者のMaria Diaz-Meco博士は言う。

「腫瘍の周囲の細胞でp62を抑制してmTORを阻害する治療は、実際には腫瘍が恩恵をうけるかもしれない。またそれは、mTORを阻害する治療法の臨床的有効度がなぜ限られるかについて説明する可能性がある」、Maria Diaz-Mecoは付け加えた。



p62をノックアウト(KO)したマウスは正常なマウスと比較して前立腺の腫瘍が大きくなり、IL-6のレベルが増大した。

IL-6は腫瘍細胞増殖を増強して、細胞死を阻害する炎症誘発性サイトカインである。

学術誌参照:
1.p62-mTORC1シグナル伝達によりストロマ線維芽細胞を代謝的に再プログラムすることは炎症と腫瘍形成を促進する。

Cancer Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140703125212.htm



<コメント>
腫瘍ではp62の活性化が成長を促進し、ストロマではp62の抑制が腫瘍の成長を促進するという記事です。

p62(Sequestosome 1)は、アミノ酸依存的にmTORC1のRaptorと相互作用することがJorge Moscat博士の研究グループによって明らかになっています。


http://www.cell.com/molecular-cell/abstract/S1097-2765(11)00713-1

>p62 Is a Key Regulator of Nutrient Sensing in the mTORC1 Pathway




Jorge Moscat博士は以前、癌細胞はブドウ糖を枯渇させても死なない可能性があることを示した研究者です。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/886e4bba2af90bbc4bda6ab12d6caae1

2014年7月3日

2014-07-09 12:10:37 | 

CHD8突然変異と自閉症の関連



CHD8突然変異は、発達の初期で自閉症のサブタイプを定義する。

「我々は、自閉症特異的な遺伝子が明確なケースをついに発見した」、筆頭著者のRaphael Bernier准教授は言う。

CHD8遺伝子の突然変異がある人々は、自閉症と胃腸障害、そしてより大きな頭部と広い眼が特徴である可能性が高い、とBernierは説明する。

自閉症スペクトラム障害の6,176人の小児の研究では15人にCHD8の突然変異があり、これらの症例すべてに同様の外見と、そして睡眠障害と胃腸問題の問題があった。



発見を確認するため、Duke大学の研究者はゼブラフィッシュの遺伝子を組み換えてCHD8遺伝子を阻害した。

魚は大きな頭部と広い眼を発達させ、便秘を発症した。



科学者が自閉症の明確な原因として遺伝子の突然変異を示したのは今回が初めてである。

以前から知られている自閉症症例の多くを占める脆弱X染色体の様な遺伝子的イベントは、自閉症以上にむしろ知的障害のような他の欠陥と関連していた。

CHD8遺伝子突然変異は、自閉症のある種のサブタイプと関連付けられる、きわめて強い浸透度を示す最初の遺伝子突然変異である。

学術誌参照:
1.阻害的CHD8突然変異は、発達の初期に、自閉症のサブタイプを定義する。

Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140703125851.htm



<コメント>
自閉症スペクトラム障害の約0.25パーセントはCHD8(Chromodomain Helicase DNA Binding Protein 8)の変異によることが判明したという記事です。

自閉症にはサブタイプが400種類以上あるようなので、ちょうどその1つ分の割合(1/400)の原因が明らかになったことになります。

CHD8はヒストンH1と共にクロマチン構造を変化させてアポトーシスを抑制することが明らかになっていて、いかにも影響がありそうな感じです。


2014年7月3日

2014-07-09 09:47:57 | 

アルツハイマー病と脳卒中患者の頭脳にある『スイッチ』は、ニューロンの生成と生存を妨げる



サンフォード・バーナム医学研究所は、神経幹細胞からの新しいニューロンの生成ならびに既存の神経細胞の生存を制御する「化学的スイッチ」を特定した。

Cell Reportsで7月3日に発表される研究は、化学的スイッチのMEF2が種々の神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、自閉症で、ニューロンの損失から保護する潜在的な治療目標である可能性を示唆する。



「きわめて反応性の遊離基である一酸化窒素(NO)がMEF2と反応すると、MEF2は神経発生とニューロン生存を誘導する遺伝子にもはや結合することができず、活性化することができなくなる」、Stuart Lipton教授は言う。

「今回のユニークな点は、MEF2に対する1つの変更が、2つの異なったイベント ― 新しいニューロンの生成と既存のニューロンの生存 ― を制御するということである。」



転写因子MEF2ファミリーのメンバーは、神経発生とニューロン生存、ならびに学習と記憶のプロセスで重要な役割を演ずることが示されてきた。

そしてMEF2遺伝子の突然変異は、アルツハイマー病から自閉症まで様々な神経変性疾患と関連していた。



NOタンパク質の修飾、つまりS-ニトロシル化は、約20年前にLiptonたちによって最初に記述された。

S-ニトロシル化は、体の全体を通じて正常な生理的条件の下で重要な制御機能を有する。しかし、老化、環境毒素、またはストレス関連の損傷により、異常なS-ニトロシル化反応が生じて疾病病因に関与する。

「我々の研究所は、MEF2のS-ニトロシル化がパーキンソン病でニューロンの生存を制御したことを以前に示した」、Liptonは言う。

「今回我々が示したのは、これと同じ反応がいたる所で起きていて、脳卒中とアルツハイマー病など他の神経障害でも生じるということである。」



「MEF2に対する一般的なS-ニトロシル化修飾を抑制することでこれらの神経障害を治療することが可能になるかもしれない。」、Liptonは付け加える。

「小さい治療的な分子の開発、例えば血液脳関門を越えてMEF2のS-ニトロシル化をブロックするか、何らかの方法でMEF2転写活性を増加させることができる分子は、新しい脳細胞成長を促進し、いくつかの神経変性疾患で既存の細胞を保護する可能性がある。」

「我々は高処理スクリーニング系と創薬努力において、そのような分子でいくつかをすでに発見した」、Liptonは言う。

学術誌参照:
1.S-ニトロシル化によって媒介される酸化還元の転写スイッチは、神経発生とニューロン細胞死を調整する。

Cell Reports、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140703125214.htm



※nitrosyl: ニトロシル。1価の基-N=O。ニトロソ化合物を生成する。S-ニトロシル化はシステイン残基のNOによる修飾。

<コメント>
MEF2の修飾がTLXBcl-xLの転写を抑制することで神経の発生と生存に影響して、様々な疾患につながるという研究です。

ニューロンでのS-ニトロシル化は虚血によって起きる場合があり、運動不足や心血管の状態がアルツハイマー病や痴呆のリスクに影響することの説明にもなりそうです。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6354a4f35f3722cd11fe82a8306d3f46

>10代の低IQとより劣った心血管健康は、早い発症痴呆のリスクを増す

>18歳時に心血管の健康が劣っているかIQが低い男性は、60歳以前に痴呆を患う。

2014年7月3日

2014-07-09 06:28:51 | 代謝

褐色脂肪はどのようにエネルギーを燃焼させるか



褐色の脂肪細胞は、脂肪を燃焼させて熱に変える。

今回発表されたベスイスラエル・ディーコネスメディカルセンター(BIDMC)による研究は、転写因子のIRF4(interferon regulatory factor 4; インターフェロン制御因子4)が、褐色脂肪の熱発生プロセス、エネルギー消費、そして寒冷耐性の調節において重要な役割を果たすことを証明する。



褐色脂肪は寒冷やエピネフリンなどのホルモンによってスイッチがオンになり、熱発生遺伝子(thermogenic gene)という遺伝子グループの作用により熱を発生させる。

中でも最も有名なのは脱共役タンパク質1(UCP1)をコードする遺伝子である。

UCP1は褐色の脂肪細胞のミトコンドリアでエネルギーを浪費し、副産物として熱を生成する。

「UCP1遺伝子が調節される方法に対する強い関心があった。そして同時に、PGC1-αという分子に最も注目した。」

研究のシニア著者、BIDMCのEvan Rosen医学博士は説明する。

「PGC1-αは転写コファクターであり、UCP1のような遺伝子の転写を引き起こすのは間接的である。なぜなら、それ自体はDNAと結合する能力が欠如しているからだ。

このことは真の転写因子またはDNA結合蛋白質が存在することを示唆した。何年もの研究の結果、IRF4がそのパートナーであることが判明した。」



インターフェロン制御因子(IRF)は免疫系の調節において重要な役割を果たす。

Rosenのグループは以前、IRF4を脂肪細胞の発達と脂質の処理における重要な要素として特定し、脂肪細胞でのIRF4の発現は絶食によって誘発されることを発見した。

脂肪組織でIRF4がない動物は肥満になり、インスリン抵抗性と寒さへの不耐性を生じた。



今回の新しい研究では、IRF4が脂肪分解の重要な調節因子であることに加えて、褐色脂肪において熱発生に直接関与すると仮定した。

彼らはマウスモデルの実験で、脂肪細胞においてIRF4が寒さとcAMPによって誘発されることを証明した。それは熱発生遺伝子の発現の増加、エネルギー消費と寒冷耐性を促進するのに十分であった。

反対に、褐色脂肪のIRF4の欠損は、熱発生遺伝子の発現の低下とエネルギー消費の減少、そして肥満と寒さへの不耐性に結びついた。

最後に研究者は、IRF4はPGC-1αと物理的に相互作用し、UCP1発現と熱発生を促進することを示した。

記事供給源:
上記の記事は、ベスイスラエル・ディーコネスメディカルセンターにより提供される材料に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140703125207.htm



<コメント>
寒さやエピネフリン(アドレナリン)によりIRF4が誘導されて熱が発生しやすくなるという研究です。

以前の研究では、インスリンがFoxO1に影響を与えてIRF4を抑制することが示されています。


http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(11)00049-0

>Feeding represses IRF4 in adipocytes via insulin's effect on FoxO1


当時Evan D. Rosen氏の研究室に在籍していた江口潤氏による解説です。

http://first.lifesciencedb.jp/archives/2444

>インスリンは転写因子FoxO1を介してIRF4の発現を抑制する

>高脂肪食をあたえた脂肪組織においてIRF4の発現低下が認められた


褐色脂肪細胞は寒冷や運動によって誘導され、UCP1が機能するためにはビタミンAの誘導体が必要という研究もありました。
ただしPGC-1αはプロモーターがメチル化することもあって、単純ではないようです。