肝癌の治療につながる遺伝子突然変異の発見
ネイチャー誌7月号で発表される研究によると、肝細胞の2つの遺伝子の突然変異は、肝臓内胆管癌(intrahepatic cholangiocarcinoma; iCCA/IHCC/ICC)において腫瘍形成を促進する可能性がある。
iCCAは肝癌の2番目に多く見られる形態であり、肝臓の胆汁を運ぶ管のような構造(胆管)を攻撃する。
疾患に関してはまだ非常に未知の部分が多く、第一選択の標準治療も、成功した治療法も存在しない。
マウントサイナイ医科大学とハーバードメディカルスクールの研究チームは、2つのタンパク質IDH1とIDH2の変異体と肝癌との関連を発見した。
以前の研究でIDHの突然変異はiCCAの患者に最も広く見られることが発見されたが、それがどのように癌の発達に寄与するかは知られていなかった。
「iCCAは、化学療法と放射線の様な標準治療に抵抗性である」、マウントサイナイ医科大学のJosep Maria Llovet博士は言う。
「疾患の分子メカニズムを理解することは、効果のある治療を見つけるための鍵である。」
Llovet博士と同僚は、遺伝子改変マウスの成体の肝臓における変異体IDHの発現が、肝細胞の発達と肝臓の損傷からの再生を損ない、細胞の数を増加させて腫瘍を形成することを証明した。
さらに、変異体IDHは活性化Krasと一緒に作用し、前悪性病変(premalignant lesion)の発達と転移性iCCAへの進行を引き起こす。
すでに、第一相の臨床試験が特定のIDH1/2突然変異で行われている。
学術誌参照:
1.変異体IDHはHNF-4αを阻害し、肝細胞分化を妨害して胆道癌を促進する。
Nature、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140708131704.htm
<コメント>
イソクエン酸脱水素酵素(isocitrate dehydrogenase; IDH)の特定の変異は酵素の作用を変化させ、α-ケトグルタル酸から2-ヒドロキシグルタル酸(2-hydroxyglutarate; 2HG)への変換を触媒するようになるという記事です。
この変異IDHは2HGを作ってHNF-4αを抑制することで、肝臓の前駆細胞(liver progenitor cell)の分化を阻害し、増殖を促進します。
2-ヒドロキシグルタル酸は神経膠腫と関連するという記事が少し前にありました。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c6474440be4678e23b4bf5db6ace5486
IDHは「逆クレブス回路」にも関与するという記事もありました。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7d0b9b6c3695333da9f2e185acf144c9