2型糖尿病と肥満を理解するための新しい脳経路
テキサス大学(UT)南西メディカル・センターの研究者は、脳がどのように体重とエネルギー消費、そして血糖値を調節するかについての理解につながる神経の伝達経路を特定した。
自律神経系を制御するニューロンは、メラノコルチン4受容体(MC4R)を発現することが明らかになった。このことはグルコース代謝とエネルギー消費の調節において重要である、とジョエルElmquist博士は言う。
「多くの先行研究は、MC4Rがエネルギー消費とブドウ糖ホメオスタシスの重要な調節因子であることを証明した。しかし、これらの反応の調整に必要とされる鍵ニューロンは不明だった」
「今回の研究で、我々はニューロンによるこれらの受容体の発現を発見した。このニューロンは交感神経系を制御し、代謝の重要な調節因子であるようだ。
特に、これらの細胞は血糖値を調整し、白色脂肪が『褐色またはベージュの』脂肪細胞になる能力にも関与する。」
研究チームは、マウスモデルで交感神経系を制御するニューロンのMC4Rを削除した。
この操作はエネルギー消費を低下させ、その後マウスは肥満と糖尿病になった。
この発見は、MC4Rがグルコース代謝、エネルギー消費、そして体重の調整に必要であることを示す。この調節には、食事と寒さへの曝露による熱発生反応が含まれる。
2006年、Elmquist博士はハーバード医科大学院のブラッド・ローウェル博士のチームと協力して、脳の他の領域のMC4Rがエネルギー消費でなく食物摂取を制御することを発見した。
Elmquist博士のチームは将来、メラノコルチン受容体がどのように白色脂肪組織の「ベージュ化(beiging)」につながる可能性があるかを研究する予定だ。
ベージュ化は、白色脂肪をエネルギー燃焼する褐色脂肪組織に変換するプロセスである。
学術誌参照:
1.自律神経ニューロンのメラノコルチン4受容体は、熱発生と血糖を調整する。
Nature Neuroscience、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140725163500.htm
<コメント>
Melanocortin 4 receptor(MC4R)のリガンドはPOMCの産物の1つα-MSHですが、そのMC4Rが自律神経を制御するニューロンに発現して血糖値や発熱を調節しているという記事です。
α-MSHの元となるPOMCは、レプチンによって刺激されFoxO1によって抑制されることが知られています。