脳ガン手術を助けるツール
Purdue大学は、脳外科医が癌の組織をテストして正確に取り除くのを助けるためのツールを開発した。
このツールは荷電された溶媒の微視的な流れを組織面上に吹き付け、分子の構造に関する情報を集める。
そして色分けされた像を作り出し、腫瘍細胞の位置、性質、そして濃度を明らかにする。
「この技術はほんの数秒で分子の情報を提供する。それにより、普通なら残存するはずの腫瘍を感知することができる」、Purdue教授のR. Grahamコックは言う。
「測定器は比較的小さく、そして安価で、脳神経外科医を援助するために手術室に容易に取り付けることができる。」
現在の外科手術は、外科医の訓練された眼に依存している。彼らは事前に実施されるスキャン画像と、手術用の顕微鏡、そして画像診断の助けを借りて手術を行う。
「腫瘍の終わりと正常な組織の始まりを区別することは難しい。脳腫瘍は通常の組織ときわめて類似して見える。」
質量分析法ベースのツールは手術中に切除される組織中の脂質を評価することにより、癌のタイプとグレード、そして標本の腫瘍の縁を正確に決定できることが以前に示されていた。
今回の研究では脳ガンのバイオマーカーと考えられる分子(2-ヒドロキシグルタル酸; 2-hydroxyglutarate)を評価することによって1歩深い分析を実施した。
「質量分析法により、このバイオマーカーの情報の全てがほんの数分で、手術を中断することなく生検から得ることが可能である。」
このバイオマーカーは神経膠腫の70パーセント以上と関連していて、腫瘍を分類するのに用いることができるとコック教授は言う。
質量分析法では分子は帯電してイオンに変えられ、その質量によって物質を特定することができる。
コックと彼の同僚によって開発された新しいツールは、脱着エレクトロスプレーイオン化(desorption electrospray ionization; DESI)というアンビエント質量分析法(ambient mass spectrometry analysis technique)を利用する。
DESIはイオン化を質量分析計の外側で表面に直接生じさせ、サンプルの化学的操作の必要性と、イオン化のための真空チャンバーにおける封じ込めを排除する。
プロセスは非常に単純で高速であり、外科的装置に応用しやすい。
癌の異なるタイプに対するさらなる分類方法と代謝産物バイオマーカーがツールに加えられる可能性がある、とコックは述べた。
学術誌参照:
1.脳腫瘍手術を導くonco-代謝産物の手術時の質量分析法マッピング。
Proceedings of the National Academy of Sciences、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140703102959.htm
<コメント>
手術室でリアルタイムに質量分析を実施して、バイオマーカーとなる代謝産物により癌と正常な組織を区別することが可能になるという記事です。