アルツハイマー病における記憶障害を目標とする新薬
韓国の研究チームは、アルツハイマー病患者で一般に観察される反応性アストロサイトが、異常かつ大量にGABAを産生して放出することを発見した。
放出されたGABAは隣接するニューロンを強く阻害し、シナプス伝達、可塑性、そして記憶で機能不全を引き起こす。
Korea Institute of Science and Technology(KIST)のC. Justin Lee博士とDaesoo Kim博士(KAIST)たちの研究チームは、アルツハイマー病モデルマウスの脳の反応性アストロサイトがモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)によって抑制性の伝達物質であるGABAを産生し、Bestrophin-1チャネルを通してGABAをリリースしてシナプス伝達の間の正常な情報の流れを抑制することを発見した。
研究チームはさらに、MAO-BまたはBestrophin-1を阻害することによってGABAの産生と放出を抑制し、ニューロンの発火とシナプス伝達、そして記憶の欠陥をアルツハイマー病モデルマウスで改善することに成功した。
行動試験では、マウスが暗い所を好む傾向があるという事実を利用した。
マウスが電気ショックを暗い所で経験した場合、マウスはそのイベントを覚えていて、それ以来暗い所を回避するようになる。
しかし、モデル化されたアルツハイマー病をもつマウスは、電気ショックと暗い所の関連を覚えていることができず、暗い所に戻り続ける。
研究チームは、これらのマウスをMAO-B阻害剤で処置すると、マウスの記憶を完全に回復できることを証明した。
現在、パーキンソン病で補助治療として使われているセレギリン(selegiline)が最も有望なMAO-B阻害剤の1つと思われるが、アルツハイマー病では効果がないことが以前示されていた。
研究チームはセレギリンの効果が短く、長期間だとアルツハイマー病モデルマウスで効き目を失うことを証明した。
セレギリンの1週間の投与はニューロンの発火を正常レベルまで向上させたが、2週から4週間投与するとニューロンの発火は未治療のレベルに戻った。
これらの結果から、研究チームは長期間の影響を有する新薬が緊急に必要であると提案した。
学術誌参照:
1.反応性アストロサイトからのGABAは、アルツハイマー病のマウス・モデルで、記憶を損なう。
Nature Medicine、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140709105053.htm
<コメント>
アルツハイマー患者の脳では、反応性アストロサイト(reactive astrocyte / gemistocytic astrocyte)からの過剰なGABAが神経の機能を阻害している可能性があるという記事です。
反応性アストロサイトは神経が損傷した時などにアストロサイトから変化する細胞のようです。
別の研究チームによる反応性アストロサイトに関する記事が、6月13日にも掲載されていました。
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140613084514.htm
>Rescue of Alzheimer's memory deficit achieved by reducing 'excessive inhibition'
>"Our studies of AD mice showed that the high concentration of the GABA neurotransmitter in the reactive astrocytes of the dentate gyrus correlates with the animals' poor performance on tests of learning and memory," Chen said.
>His lab also found that the high concentration of the GABA neurotransmitter in the reactive astrocytes is released through an astrocyte-specific GABA transporter(GAT3/4).