脳のブドウ糖感知により肥満を治療する
アルバート・アインシュタイン医科大学のDongsheng Cai博士と彼の研究チームは、体のブドウ糖ダイナミクスを脳に感知させる経路を発見した。
このブドウ糖検知プロセスの障害は肥満と関連する疾患発症の一因となる。
さらに重要なことに、この障害を修正することで全身エネルギーバランスを正常化して、肥満を治療することができると判明した。
脳の視床下部はエネルギーと体重バランスの制御において重要な役割を果たす。
エネルギーの摂取と消費のバランスを維持するために、視床下部は常に全身のエネルギーレベルを測定している。
その方法は、循環血中のホルモン(例えばインスリンとレプチン)ならびに栄養分(例えばブドウ糖)をサンプリングすることによる。
しかし、視床下部の栄養感知のメカニズムはそれほど明らかではない。
Cai博士の研究チームは、マウスの視床下部のブドウ糖感知と全身エネルギーバランスにおける、低酸素誘導因子(HIF)の新しい役割を発見した。
HIFは低酸素への反応を誘発する核転写因子である。
驚くべきことに、視床下部におけるHIFはブドウ糖によって活性化され、その調節はマウスにおいて食欲のコントロールと関連することが判明した。
HIFはブドウ糖に反応してPOMC遺伝子の発現を誘発する。POMCは視床下部が摂食と体重をコントロールする際に重要な役割を果たすことが知られていた遺伝子である。
研究チームはさらに、肥満をコントロールするために視床下部HIFを標的とする治療的な可能性を実証した。
遺伝子デリバリーを通じて視床下部のHIF活性を増強することによって、マウスは栄養過剰にもかかわらず肥満に対して抵抗する。
学術誌参照:
1.低酸素誘導因子HIFは、POMC遺伝子を指揮して視床下部のブドウ糖感知とエネルギーバランス調節を仲介させる。
PLoS生物学、2011;
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/07/110726190057.htm
<コメント>
前回の関連記事です。
視床下部ではグルコースがTCA回路/mTORC1を通じてHIFを活性化させ、POMCの転写を促進するという内容です。
HIFはレプチン(STAT3)よりもPOMCに近い箇所に結合するようです。
>the HIF-binding DNA element (5′-GCGTG-3′) is located immediately upstream of the transcriptional initiation site (TATA box) in the POMC promoter (Figure 1A).
>In contrast, the DNA elements for STAT3, the most established nuclear transcription factor for POMC gene in leptin signaling [37]–[39], are located further upstream.