結核薬のための新しいアプローチ
現在、年間140万人が結核で死亡している。
そして結核菌の多剤耐性株は現在の薬では治療できないので、特に危険である。
「過去50年で市場に現れた新しい結核薬は、たった1つだ。それは2012年だった」、ETHチューリッヒの生薬学(pharmaceutical biology)教授、カール‐ハインツ・アルトマンは言う。
アルトマンと彼の研究チームは今回、新しい結核薬の基礎を築いた。
それはピリドマイシンという抗生物質によってインスパイアされたものである。
ピリドマイシンはヒト型結核菌の成長を阻害する抗生物質だが、急速に分解されてしまうために効果が低い。
アルトマンと彼の研究グループはピリドマイシンの構造を用いて新たな分子を設計した。
新しい分子はより安定しており、合成するのが容易である。
1953年、日本の科学者はピリドマイシンがヒト型結核菌の成長を阻害することを発見した。
しかしその後、この化合物は何十年も研究されなかった。
「結核の問題は解決されたと誰もが思っていた」、アルトマンは言う。
文献を調査している間に彼はピリドマイシンを見つけ、EPFL微生物病因論教授のスチュワート・コールの研究チームとともに、それがどのように作用するか解読した。
ピリドマイシン(Pyridomycin)は、細胞の代謝の重要な成分であるエノイルACPレダクターゼ(enoyl-ACP reductase)を麻痺させる。それは結核病原体の細胞壁を構築するために必須である。
現在利用可能な薬のイソニアジドも同じタンパク質を目標とするが、それはまず最初に、結核菌の内側で代謝され、機能する阻害剤へと変化しなければならない。
それとは対照的に、ピリドマイシンは目標のタンパク質と直接結合する。したがってイソニアジドの抵抗性メカニズムを迂回する。
この新しいアプローチは、結核の新薬のために多種多様な構造を可能にする。
学術誌参考文献:
1.2,1'-ジヒドロピリドマイシンの合成と抗抗酸菌活性。
ACS Medicinal Chemistry Letters、2013;
2.ピリドマイシンはエノイルレダクターゼInhAの、NADHと基質の結合ポケットに架橋する。
Nature Chemical Biology、2013;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140702102433.htm
<コメント>
1953年に放線菌から発見されたピリドマイシンという抗生物質を元にして、結核菌の重要なタンパク質InhAを標的にする新しい分子が設計されたという記事です。
関連記事は、2012年にピリドマイシンが「再発見」された時のものです。
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120917123127.htm